悪魔との遭遇
(なんか‥‥ふわふわするな)
意図せず異界の門に放り込まれたブウド。そこは1寸先も見えない暗黒空間のはずなのに自分の身体はまるでこことは切り離されているかのようにはっきりと見えていた。又ここには地面が無く、かと言って落下している様子もなくプカプカと浮遊している感覚があった。
(何時までここにいるんだろ‥‥)
為す術もない状態、ブウドはただ身を任せて様子を見ることにした。声も出せず浮かんでいると何が接近してくることが理解出来た。
「あれ、何であんたみたいなのがここにいるわけ?」
そう言って現れたのは頭部には2本の小さな角があり臀部(尾骨辺り)から黒い尻尾が見えた。全身を観察すると露出度の高い格好をした少女?の姿が現れた。
「どうもはじめまして!あたし悪魔、よろしくね!」
にっこりと笑顔を見せブウドに近づく悪魔の少女。
(これは親切に。自分の名前はブウドと申します、種族はオークです。以後お見知りおきを、て言葉が出ないから伝わりませんか‥‥)相手に伝達できているか気になっていると
「大丈夫、あたしは思考を読み取る事ができるから」
言葉が出ないブウドに対し問題なく話せることを伝えた。
(そうですか、それは良かったです。何も伝わらず無礼になってしまうかもと思ってましたが‥‥)
「あんた変わったやつね。殆どのやつらなら悪魔って聞いたら怯えるかあたしの容姿を見て欲望に忠実になるかの2択なのにさ」頬を膨らませ顰めっ面を見せる悪魔。
(流石に少女に欲情するほど困ってませんよ。それに貴方は自分に挨拶をされたじゃないですか、ならこちらも返すのが礼儀だと思いまして)
「あたしの容姿は見るやつによって色々変わるのよ。それにしても‥‥あんた見かけによらずしっかりしてんのね。面白いじゃない!」先程まで顰めっ面をしていた悪魔だったが笑顔に戻った。
「それじゃあここの説明をするね!ここはあんた達で言うところの異界の門て場所。ここでは現世の生活には飽きた奴や絶望した奴、まぁ端的に言えば負の感情の爆発によって確率で現れて別世界に転移するものなの。他にも出現方法はあるけどあまりお勧めしないわ」
(成程、理解出来ました‥‥。ですがこの門を出す程自分は絶望していたんですか‥‥)
「そこなのよ、あたしが疑問に思ったのは。あんたの頭の中を覗いたんだけどそこまで絶望してないのよね。今迄あんだけのことをされてたってのに」
あんなこととは恐らく兵士達による私刑の事なのかな、とブウドは思い至った。
「まぁ話を戻すわね!この門に入れたことはあんたにとってチャンスなのよ!ここであたしと契約して好きな姿、好きな時代、好きな能力、その他何でも1つ持って言って第二の人生を歩むことが出来ま〜す!」
何処からともなくファンファーレと拍手する音が聞こえた。
「し、か、も!受け取った力は総てあなたの自由に!悪魔と契約したからって守らなきゃ行けない事はなんにもない!言うなればタダで最強最高の力が自由に使い放題!」
そう言ってブウドの前で右手をブウドに差し出した。
「さぁ!あんたはどんな物が欲しい?」
問いてきた悪魔に対しブウドは少し悩んだあと解答した。
(‥‥特に無いですかね)
「‥‥は?」
先程まで上機嫌で話していた悪魔の顔に影を落としブウドを睨みつけた。
「あんた、何言ってんの?」
黒々しいオーラを身に纏いブウドに詰め寄る。
(確かに自分は万能ではないですしガタイも格好良いものとはかけ離れています、時代だって戦争の日々正直嫌になってしまいますよ)
自虐的な発言をするブウド。
「な、ならそれを変えようって思わないの!?新しい自分に生まれ変わってしたいこととかないの!?」
今迄作っていた様な笑顔はなく困惑した顔でブウドの願望を聞き出す悪魔。
(ですがそれをしてしまうと、自分が自分ではなくなってしまうような気がして。別にそれらを否定するつもりはまったくないんですが‥‥それが自分の生き方なんですかね)ハハッと困ったように笑うブウド
「呆れた‥‥、随分頑固なのね。今迄の奴らなら直ぐに喰い付いてちゃちゃっと契約出来たのに。でもそうなると此処からは出れないわよ?良いの?」
挑発するようにブウドに問いただした。
(それならそれでも良いのかなと、自分の決めた結果なのでそれに‥‥)
「それに、何よ?」
(それに、貴女と入れば飽きないかなと。恐らく色んな方とお会いしていると思うのでそういった話も聞きたいですし)
「フフッ何よそれ。初めてよそんなことを言われたのは」キョトンとした後本当の笑みがこぼれた。
「あたしもあんたといると飽きないけどこの空間に長居するとあんたの存在が消滅しちゃうから駄目よ。‥‥しょうがないわね、今回はランダム機能で場所を選択するわ。そうすれば契約も無く進められる」
(何から何まですみません、我儘を言ってしまい‥)
ブウドの謝罪に対し呆れ顔で返答する悪魔。
「悪魔に謝るなんてあんたやっぱ可笑しいわね。でも嫌いじゃないわ」指をパチンと弾くと暗闇だった空間に亀裂が走った。
「此処からはあんた1人で行くのよ、気を付けていきなさいね?後今度来るときは契約しなさいよ?」
そう言うとブウドの身体はゆっくりと亀裂の先に進んでいった。
「今度なんて無いほうがいいのにね‥‥」
ボソッと漏れた悪魔の言葉はブウドには届いていなかった。
(本当に有難うございます。それでは‥‥)
悪魔は後ろを向き手を降って別れようとした。
「気を付けて‥‥か。あたしらしくないな‥‥」
自分の言った言葉を信じられずにいる悪魔。
(行ってきます!)
行ってきます‥‥その言葉を耳にした悪魔は振り返ったがそこにはブウドの姿はなく暗黒空間が広がっていた。
「‥‥ホント、あたしらしくないな‥‥」
行ってらっしゃい‥‥。その言葉を残して悪魔は暗闇の中に消えていった。




