第84話 復興編 (警備隊勧誘編)
冒険者ギルドの中で待っていてもらったリシア達と合流する。やはり先程の話の衝撃が凄かったのか、周りからはソニアとカーミラに視線が集まる。
多少は仕方ないと思っていたので、このぐらいは許容範囲内だろう。一応ギルド職員に、先程の件を看板としてギルド前と、東西南北の衛兵詰め所の脇に設置するように指示する。
要件が終わったので、シオン達が冒険者ギルドを出て行こうとすると、人垣が割れて道が出来る。
外に待機させておいたシルバーフォックス達を、特殊職業持ちをリーダーになるように、3匹ずつ纏まるように指示する。
町の人に危害を加えないように指示し、衛兵の指示に従うようにも伝える。もしおかしいと感じた時は、シオンに念話で伝えるように指示し、東西南北それぞれの入り口に放った。
シルバーフォックス達が町の入り口に向かって疾走していくのを見ていた住人達は、やはり怖がっていたが、シオンの指示に従って動いて行くのを見て安心したようだ。
子供に至っては、大きなフサフサの狼と見た目が変わらないので、その後を追いかけていく一面も見られた。まぁ親に止められてはいたが。
シオンは思案する。これで一先ず町の防衛の最低ラインは守られたはずだ。石の外壁は3メートルはあるし、衛兵詰め所にはAランクに対応できるシルバーフォックスもいる。
東西南北に分かれているとはいえ、シルバーフォックスは早い。数分で一ヶ所に集まることも可能だ。問題は空であるが・・・こっちは自分で自動バリアを町に張ればいいか。
シオンは考えが纏まった為、シオン達は通り抜けられる自動バリアを、4ヶ所の入り口以外に張り巡らし、次の事に移る。グランを迎えに行くのである。その為、敢えてカーミラに町の中心でドラゴンに竜化してもらう。
また現れたブラックドラゴンに周りの住民から悲鳴が上がる。シオン達はお構いなしに、カーミラに騎乗してエウリーの町に向かって飛んで行ってしまう。残された町民達は・・・
「領主様・・・ドラゴンに乗って飛んで行っちまったぞ・・・」
「そもそもドラゴンを従魔にするなんて可能なのか!?俺は聞いたことが無い!」
「ハイシルバーフォックスもテイムしていたし、可能なんじゃないのか?」
「馬鹿言え!魔獣とドラゴンじゃ格が全く違うだろうが!」
「じゃあ何で指示を聞いているんだよ!」
「俺達に分かる訳がないだろ!」
そう言って町民同士で訳が分からないという議論が飛び交う。こうしてシオンは、住民達にドラゴンに乗る領主として認知されるようになった。
これで絶対隠蔽などを使いながらでもなくても、町に直接着陸できるようになった。
この措置は最終的には自分の為であるが、シオンがいなくても、仲間達がわざわざ遠くに降りる必要を無くす為である。
また、ドラゴンを連れた領主というインパクトを周りの町や村に轟かせる。今度のパレットの町は、滅ぼされたりしないぞというアピールの意味合いもあった。
翌日の昼過ぎにエウリーの町に到着したシオン達は、リシアの実家で一泊することにした。ラディスとエイナにはよく来たねと歓迎され、シオンはエイナに抱き着かれる。
そしてそれを見たリシアが、シオンに触らないでと引き離しにかかるいつもの光景である。
ラディスにカーミラの事を尋ねられたので、従魔にしたドラゴンですと紹介すると、目が虚ろになった。
エイナはドラゴンなんて見たことが無かったので、是非見てみたいわとお願いしてきた。シオンは庭でカーミラを竜化させる。すると・・・
「まぁ!立派なブラックドラゴンなのね!すごいわ!」
そう言ってかなりお気に召したようだ。対照的にラディスの目は・・・さっきと変わっていない。そして警備兵達は、いきなり現れたブラックドラゴンに悲鳴を上げている。
「今度はブラックドラゴンだ!伯爵様を守れぇぇぇ!」
「もうドラゴンがいきなり現れる職場は嫌だぁぁぁぁ!」
「おい!こら!逃げるなぁぁぁぁぁ!」
まさに阿鼻叫喚になっていた。シオンはカーミラに元に戻るように指示し、部屋に戻ってくるように伝える。
窓から見える警備兵の詰め所はえらいことになっているが・・・シオンは何も見なかったことにした。
エイナは戻って来たカーミラに色々質問をしたり、体を触ったりしていて、とても興味があるようだ。カーミラはその対応に四苦八苦している。
終いには、もういっその事全てを知りたいと思ったようで、強制的に女性陣を全員お風呂に連れて行った。
シオンとラディスがその場に残される。そして目が虚ろのラディスから一言・・・
「・・・また・・・ドラゴン・・・なのか・・・?」
シオンはそうなりますねと答え・・・女性陣がお風呂から上がるまで、その沈黙は続くのであった。
戻って来たエイナは満面の笑みを浮かべていた。娘の成長具合も確認できたし、カーミラやソニアのことも色々分かったようで、娘が沢山できたようで嬉しいわと喜んでいた。
対照的にソニアはそうでも無かったが、リシアとカーミラはげんなりしていた。よっぽど色々されたのだろう。何をされたのかは何となく想像がつく。
その後、ラディスの心もやっと戻って来たようで、夕食になった。ソニアとカーミラは、出てくる料理に目を輝かせ、脇目も振らず食べている。
シオンとリシアは、今まで領内であったことを伝え、町の再建具合についても報告する。それを聞いてラディスが唸る。
「さすがはシオンだ。町を復興させつつ、警備も強化。そして担当個所以外の町の不正も解決してくるとは・・・」
そう言ってかなりの高評価を頂いた。しかし、リシアの母エイナからはやんわりとお叱りを受ける。
「シオンさんも15歳です。もう少しリシアと色々と親密になって頂かないと・・・私達も心配です」
そう言って暗にもっとイチャイチャしなさいと圧が来る。シオンがリシアを見ると、その顔は真っ赤である。
これは・・・お風呂の時に何か吹き込まれたな。そうシオンが思案していると、リシアはシオンに一声かけてから、珍しく自分の部屋に戻って行った。
その後、シオンも案内された部屋で休息を取ることにし、ベットでこれからの事を考えていた。グランと冒険者をパレットの町に引き入れ、戦力を増強する。
そして、レグルスの森だけでなく、他の森からの魔物の襲撃等にも備えなければならないと。いつもなら少しするとソニアが布団に潜り込んでくるのだが、来る気配が無い。
索敵で探してみると、どうやらエイナさんとカーミラと一緒に3人でいるようだ。それを確認していた所、部屋をノックされる。シオンは起き上がり、どうぞと答えて扉を開けると、リシアが扉の前に立っていた。
どうかしたのかい?とシオンが声を掛けるが、リシアの反応が無い。どうしたのだろうと表情を確認しようとした所、勢いよく抱き着かれた。
そしてその勢いのまま、シオンはリシアにベットに押し倒される。いきなりの事でシオンは驚いたが、リシアを抱きしめ返す。
リシアから熱い息が漏れ、表情を伺うと、その眼は潤んでいる。ここまでされて、何をしに来たと聞くほどシオンも鈍感ではない。
シオンはいいかい?とリシアに尋ねると、リシアは目を瞑り頷く。シオンはリシアに軽く一度口づけをし、二度目で強く押し付ける。
そしてその日・・・シオンとリシアは最後の一線を越えるのであった。




