第58話 神界編
シオンが帰った後、神界ではルシフェルが鼻歌交じりに呟く。
「あの会社員からスキルを1つ回収出来て嬉しいなっと」
ただシオンが帰ったというのは、意識がここから無くなっただけであり、魂はまだここにある。
シオンがルシフェルにお願いしたちょっとしたお願いというのは・・・信頼のおける仲間へのレベル限界値の上昇依頼であった。
シオン達がいる世界では、魔物はともかく、人族や亜人族はステイタスのレベル限界値がLV99であった。
しかもそのリミッターがかかっているせいか、レベルが99に近づくにつれて、能力の上昇も少なくなっていく。
シオンの婚約者であるリシアのステイタスの伸びが、LV40に差し掛かる辺りで陰りが見えたのだ。
シオン本人や従魔にしているドラゴン娘のソニアには、そのようなステイタスの上昇減速の兆候は見られなかった。
シオンに近しい友人である、人間の剣士のレイル、魔法使いでエルフのアイラ、狐耳の亜人でスカウトのメイアの3人には、やはりその兆候が見られた。
各々の得意とする腕力、知力、俊敏などは、確かにステイタス上S近くまでは上昇した。しかしそこまでであった。
これはおそらくLV上限のリミッターのせいだろうとアタリを付けたシオンは、神ルシフェルに交換条件を付けたのである。
おそらく乗ってくるであろうと見越して。
視点はルシフェルに戻る。
「さて・・・さっきのシオン君のお願いも終わって、魂もさっき戻したことだし・・・お昼休みにでもいこうかなっと・・・」
ルシフェルは休憩に行こうと振り向くと・・・上司である神ゼウスが息を切らせて駆け込んできた。
「ぜぇぜぇ・・・ルシフェル・・・今・・・何をやった・・・?」
そう神ゼウスに尋ねられたので、ルシフェルは答える。
「聞いて下さいよゼウス様!先程あの会社員が連絡を取ってきまして、交換条件でスキルを1つ回収出来たんですよ!」
そう言ってルシフェルは得意げである。これはボーナスの支給もあるかな?と考えていると・・・
「ちなみにその交換条件とは・・・?私はすごーく嫌な予感がするんだが?」
上司であるゼウスに尋ねられたので、その内容を話す。
「彼のいる世界で、信頼できる仲間のLV限界値を上げさせて欲しいというものでした。いや~こんな簡単なことでスキルを回収できるなんてついてますよ!」
そこまで聞いて、ゼウスに嫌な汗が流れる。
「ルシフェル・・・お前・・・その信頼できる仲間というものに、人数制限はしたんだろうな・・・?それと、限界値の上昇を天井無しになんてしていないだろうな?」
ルシフェルはあははまっさか~と言いつつモニターを弄る。すると・・・
ルシフェルの顔が真っ青になった。先程までのルンルンした気分はどこかに行ってしまった。
最悪信頼できる仲間の範囲が仮に1000人いたとしても、天井無しでなければ、そこまでのことではない。
良いところA級、頑張ってS級並みの冒険者レベルである。寿命もあるだろうし、衰えもある。
しかし・・・それが際限なく強くなるとしたら・・・?
しかもあのシオンである。あの世界でやってくる災厄と言われている者である。
自分に近しい者は、パワーレベリングで徹底的にレベルを上げるだろう。完全に世界のパワーバランスが崩れる。
ルシフェルは悲鳴を上げる。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
それに連れて神ゼウスも驚きの声を上げる。ルシフェルのその声を聞いて、神ゼウスもモニターを見る。すると・・・
「お前はアホかぁぁぁぁぁぁ!!前回あの者を最初に送り出したときにも、LV上限を掛け忘れたのをもう忘れたのか!!しかも・・・近しい者に人数制限がない!?何をやってるんだお前はぁぁぁぁ!!」
神ゼウスはがっくりしてしまった。怒りを通り越して、もう怒る気力すら無くなっている。
前回ここにシオンが来た時に、絶対隠蔽の「神の目からも逃れることが出来る」という項目を回収したばかりである。
そして今回もまたルシフェルにやらかされたのである。神ゼウスの頭痛の種が、また一つ増えるのであった。
こうしてシオンの目論見は上手く行き、いい加減な神ルシフェルは、また懲罰行きとなったのである。




