第32話 卒業試験編 (帰郷編)
取り合えず、討伐部位の提出は終わったので、シオンはリシアと共に、ギルドの雑談スペースで、おしゃべりをしながら時間を潰した。
素材の鑑定が終わったのか、サニーがやってきた。
「いたいた。探したよ。1時間ほど前に、ギルドマスターが買取り場に来て、手を貸して欲しいと頼み込んできたんだけど・・・シオン何かしたのかい?」
シオンは事情をサニーに説明した。
「・・・・・・私は鑑定に専念していてよかったよ。グリーンワームの触覚を1000本以上!?勘弁してくれ」
どうやら芋虫のようなものは、あまり得意ではないようだ。想像をしてしまったのか、青くなっている。要件はそれですか?と確認すると、
「ああ違うんだ。すまない。素材の鑑定が終わったんで、ついて来て欲しい」
そう言うと、サニーはシオン達に買取り場についてくるように促す。それに従って、買取り場の中に入る。
「まずグレイトベアーが7体。これは状態がいい。さっきのお詫びも兼ねて、1頭あたり金貨6枚で買い取らせて欲しい」
「次は・・・キラーマンチェスが11体だけど、これは討伐部位の腕のみが対象になる。腕の部分がほぼ無傷なのがいい。これは1頭あたり金貨4枚だ」
「後は・・・3体のシルバースネークだけど、上手く暴れないように討伐していて、皮の状態がすごく良い。こいつは1頭あたり金貨8枚だ」
「最後に13体のマダラスパイダーだが、血液から絹の大瓶が7本取れた。これは1本あたり金貨4枚だ」
「グレイトベアーで金貨42枚。キラーマンチェスで金貨44枚。シルバースネークで金貨24枚。最後にマダラスパイダーで金貨28枚だ。エウリーの町の買取り価格に比べてしまうと、少し物足りないかもしれないが、どうだろうか?」
シオンは思案する。グレイトベアーは確かにやや高めである。シルバースネークに関しては、シオンは情報を持っていない。キラーマンチェスとマダラスパイダーは、若干安めではある。
ただ、サニーがシオンに対して、不当な値段にしているとは、到底思えない。この辺りが相場なのだろう。シオンはそれでいいと答え、サニーは売却代金を持ってきた。
「全部で金貨が138枚だ。確認してくれ。それと・・・グリーンワームの集計がさっき終わったと連絡が来た。ギルド本館のカウンターに1度寄って行ってくれ」
シオンはサニーにお礼を言ってから、ギルド本館の方へ戻っていく。
その途中で、シオンはリシアにその売却代金の半分を渡す。今回はすんなりと受け取ってくれた。
どうやらお金のやり取りでは、シオンが引かないのが分かったらしい。ありがとうと言って袋をしまう。
サニーに言われた通りにギルドのカウンターへ行くと、お姉さんの顔色が優れなかった。おそらくはあの山を見てしまったのだろう。お気の毒にと思いながら、シオンは話しかける。
「すいません。グリーンワームの討伐認定証が出来ていると聞いて来たのですが・・・」
そう言うと、ちょっと待ってね・・・と力なさげに調べてくれる。確認が取れたようで、認定証を持ってきてくれた。
渡された討伐認定証には811/1000体と記載されていた。今回は特殊な貢献クエストの為、報酬は出ない。
受付のお姉さんにお礼を言い、リシアと共に冒険者ギルドを後にした。
無事に素材を売却できたので、実家に戻っても構わないかとリシアに相談すると、
「すぐ行こう!シオンの家を見てみたい!」
と物凄い乗り気である。それじゃあ行こうかと言うと、手を繋いできた。
しばらく歩いて行くと、我が家が見えてきた。
丁度母のリディアが洗濯物を取り込んでいる所だった。母さんただいまと声を掛けると、リディアはシオンに気が付いた。
「ちょっとどうしたのシオン!学園じゃなかったの!?」
いきなり心配される。今は卒業課題の最中だよと伝えると、頭を押さえて考え出してしまった。思考が追い付かないようだ。
うんうん考えている最中に、シオンの隣にいるリシアに目が留まった。
「シオン。そちらのお嬢さんはお友達?」
そうシオンに問いかけると、シオンではなくリシアが答えた。
「リシア=ヴァン=ストレイルと申しますお母様。シオンの婚約者をさせて頂いておりますわ」
リディアの動きが完全に止まった。危うく倒れかけるのをシオンが支える。どうやら完全に理解の範疇を超えてしまったようだ。
リディアを座らせ、リシアに見ていてもらう。その間に家の中に入り、索敵で父アルスを探す。
丁度書斎にいたので、父さん手伝って欲しいとシオンがいきなり現れると、初めはびっくりしたようだが、話を聞くとすぐに来てくれた。
リディアもアルスに連れられて室内の椅子に座る。シオンとリディアも椅子に座る。最後にアルスが席に着き、話が出来る体制が整った。
「取り合えず・・・父さんただいま。学園から今戻ったよ」
そう伝えると、いきなり帰ってきたので、
「学園で何かあったのか?まだ向こうに行ってから3か月ぐらいだろう?」
当然と言えば当然の質問が返ってきた。それに対して、
「学園では自分に教えることが出来ないと言われ、卒業するための課題を出されました。約2年以内に達成することで承認されるものです。その途中に戻ってきました」
シオンは簡潔に答える。アルスは今色々考えているようだ。
学園で教えられない?
授業はどうなった?
2年がかりの課題?
色々なことが頭を巡る。そしてリディア同様に、隣の少女に目が行く。
「シオン。そちらのお嬢さんは?」
本日2回目である。リシアがお澄ましして、シオンの代わりに答える。
「リシア=ヴァン=ストレイルと申しますお父様。シオンの婚約者をさせて頂いておりますわ」
この返答には父アルスも思考が止まった。
おかしい・・・シオンは学園に才能を伸ばすために送り出したはずだ。そしたらなぜか嫁候補を連れてきた。意味が分からない。
アルスが思考停止していると、リディアの意識が戻ってきた。
「シオン・・・その・・・リシアさんだったかしら?仲良くしてあげてるの?」
少し論点がずれてきているようだ。一応その質問には、大事にしているよと返答する。それを聞いたリシアが嬉しそうな顔をする。
アルスは色々考えた結果、シオンにこう言う。
「お前のやりたいように進みなさい。何か困ったことがあれば相談に乗ろう。それは母さんもそうだ。あとそちらのお嬢さんのことも、お前が守ってやりなさい」
どうやら色々ぶん投げられた感は否めないが、シオンの事を認めてくれたらしい。リシアのことも認めてくれたようで、ありがとうございますお父様と言われると、アルスも満更ではない様子だった。
打ち解けたのか、リディアはリシアとシオンの事について、色々と花を咲かせている。どうやら婚約者云々は置いておいても、リシアのことを気に入ったらしい。
そんな感じで雑談をしていると、妹のリースと弟のレインが帰ってきた。
シオンがいるのを見ると「兄様だ!」といって背中に抱き着いて来た。レインの方はリースから解放されて、自分の部屋に入っていった。
また、シオンが連れてきたリシアのことを知ると、
「兄様は渡さないんだから!」
と言ってリシアからシオンを守ろうとする。
アルスは「お?女の戦いか?」と冷やかし、リディアは「シオンはモテモテね」と微笑んでいた。
リシアがシオンを独り占めしないのが分かったのか、2人で仲良く遊んでいた。
その後、夕食用に何か良いものをアルスが食べようと提案するも、今日は狩りに行っていなかった為、どうするかという話になった。
シオンがレッドボアの肉ならあるけど?という話をしたら、それにしようという話になり、シオンは収納からレッドボアを1頭丸々出した。
それに驚いたリースが泣き出し、リシアがそれを宥めるという一幕もあった。
レッドボアはアルスが部位ごとに切断し、一部をリディアが料理に使う。半分以上はアルスが近所の人と物々交換をしに行ってくれた。
そのおかげもあって、かなり豪華な夕食となった。リシアも家族のように扱ってもらい、嬉しそうだ。
意外だったのは、人見知りのレインが、リシアに懐いたことだ。リースのように、強引に何かをさせない性格が功を奏したようだ。
夕食が終わり、風呂に入り、いざ寝ることになったのだが、リシアはシオンと寝ることを希望。それを聞いたリースまでもが自分も!と言い出した。
娘と未来の娘候補を取られて、アルスは寂しそうだったが、リディアに私がいるでしょ?と言われると、満更でもない様子で寝室に入っていった。4人目でもできるのだろうか・・・
シオンも寝るために自分の部屋に行く。リシアとリースもついて来て、3人で横になる。
リースは安心したのか、すぐに寝息を立て始めた。
リシアは中々寝付けずにいたようなので、シオンが頭を撫でてあげる。するとリラックスできたのか、すーすーと寝息を立て始めた。
高ランクの冒険者章を受け取るまであと一息である。
シオンは明日からの事を思案しつつ、眠りに落ちていくのだった。




