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異世界で好きに生きていいと言われたので、3つの願いをした  作者: 猫丸ストレート
第1章 3つの願い編
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第18話 学園編

先週より1週間経ち、シオンとハルトの勝負の決着がつく日が来た。


始業時間前だが、校庭の中央にSクラスのクラスメートと心配そうに教員が集まっている。


授業を始めたいところだが、貴族の生徒の手前、中止にすることが出来なかった。学院長にも念のために出席して頂いている。


しばらくするとハルトが勝利を確信した顔で広場に現れた。


一緒にハルトにそっくりな男も現れた。おそらくあれが父親だろう。


親子揃ってニヤニヤしている。


「良く逃げなかったな。勝負はグレイトベアーをたくさん狩った方が勝ちだ」


そう宣言する。だが、それを聞いていたシオンのグループのリシアやアイラは、


「狩ってくることが条件で、たくさん狩った方が勝ちだなんて聞いていないわ」


「後付けでルールを付け加えるなんて最低ね。恥を知りなさい」


そう言って反論した。それに同調するようにクラスメートたちも、そうだそうだとリシア達を援護するように騒ぎ立てた。しかしそれを聞いたハルトは、


「お前らも俺に逆らうとただじゃ済まないぞ。パパはすごいんだからな!」


そう言って威圧する。そう出られてしまうと、平民の生徒たちには何も言えなくなってしまう。


シオンは異議を申したてて反論してくれたリシアや、他の生徒たちにお礼を言ってから、その勝負でいいと宣言した。


ハルトは私兵にグレイトベアーを広場に運び込ませる。1・・・2・・・3・・・。全部で5体のグレイトベアーを運び込んできた。それを見た生徒に悲鳴が混じる。


「俺は5体のグレイトベアーを狩ってきた。お前に勝ち目なんてあるわけないんだ!」


そう言って勝利を確信していた。が・・・甘かった。


では私の番ですねとシオンはグレイトベアーを収納魔法で出し始めた。


「1・・・2・・・3・・・」


ドシン、ドシンと、グレイトベアーの巨体が積み上げられていく。その数9頭。それを見たハルトは腰を抜かし、父親も青ざめている。生徒たちの中には逃げ惑う者や、あまりの事に茫然とする者、倒れる者も現れた。


公正を期すために、学園長にお互いのグレイトベアーを確認してもらう。学園長も唖然としていたが、正気を取り戻し、確認に入ってもらった。その結果・・・


「この勝負・・・5vs9でシオンの勝ちとします」


そう宣言されて、リシアやメイアは大喜び。アイラは一緒に喜びたいようだが恥ずかしいのか、手で小さくガッツポーズをする。レイルも近寄ってきたので、シオンはハイタッチをする。その光景を見ていたハルトが叫びだした。


「今何もないところから出しただろ!初めからグレイトベアーを隠していたんだな!この卑怯者が!こんな勝負は無効だ!」


そもそも空間魔法や物を隠蔽する魔法など、そうありはしない。


宮廷魔法使いでもいるかいないかのレベルである。判定が覆らないのに腹を立て、ついに父親に縋りついた。


「パパ!この勝負は無効だよね!?何とかしてよ!」


そう言われたハルトの父は、学園長のところに行って何やら話を始めた。


「学園長。基本的に学園は貴族、平民とも平等に扱う。ただ・・・このような観衆の中で貴族が負けるというのは、あってはいけないと思わないかね?この学園の運営にもかかわると思わないかね?」


そう言って学園長を脅し始めた。親子揃ってとんでもないクズである。


学園長も貴族から資金を絶たれれば、学園を運営できなくなってしまう。


そうなってしまえば教員は皆解雇され、生徒たちは学園に通えなくなってしまう。とても悔しい表情で、勝負の結果は無効であると宣言しようとしたまさにその時である。


「学園長。何かお困り事かな?手をお貸ししましょうか?」


現れたのはリシアの父親のラディス=ヴァン=ストレイルであった。横やりを入れられたハルトの父(ヒルド=エン=オルバス)は勢いに任せて、失言をしてしまった。


「貴様・・・私がしている会話に横やりを入れるとは・・・ただで済むと思うなよ!?このクソが!」


やはり子は親に似るようだ。品性のかけらもなく、状況も分からない状態で、よく顔も見ないで発言してしまったのだから。それを聞いたラディスは、


「これはこれはオルバス卿。クソとは私のことを指しているのかな?」


そう言われて少し理性が戻ったのか、よく確認すると顔が青ざめた。


それもそのはずである。相手はストレイル家当主の伯爵なのであるから。


慌てて取り繕うとするが、それをラディスは許さない。そしてこう付け加えた・・・


「そういえば先日、私の娘が誘拐されかかったのですよ。攫おうとした賊は、尋問した後に鉱山奴隷にしましたが・・・」


話はさらに続き、


「それで首謀者を尋問したのですが・・・なんということだ!オルバス家から裏の仕事として依頼されたというじゃないですか!」


その話が出てオルバスは真っ白になった。オルバス家は貴族とはいえ所詮階級は男爵である。伯爵家にかなうはずがない。


その上・・・どこで足がついたのか・・・下っ端の賊には情報は渡さなかったはずなのに・・・


オルバスは土下座して許しを請うた。これでもかと地面に頭をこすりつけ命だけはと。それを見たラディスは・・・


「オルバス卿。やはりあなたが黒幕でしたか」


ラディスは、一連の事件に貴族が関わっているのは間違いないと読んでいた。しかしながら、確証はなかった。


また、騎士団を動かすにあたって、信用が出来る者に内部調査を行った。


その結果、貴族の中で怪しいものに目星をつけて、期を伺っていたのである。つまりオルバスはかまを掛けられたのである。


オルバスはラディスの発言から、自分がかまを掛けられたのが分かったが、土下座の上に命まではと命乞いまでしてしまっては、言い逃れはできない。


ラディスは呼び寄せておいた騎士団に、オルバスを連行するように指示。オルバスは縛られて、騎士団詰め所に連れていかれた。


その一連の流れを生徒たちは見ていたが、何がどうなったのかわからないようだ。


リシアやアイラは何となく分かったのか、今度はハイタッチをしていた。学園長はラディスにしきりに頭を下げ、お礼を言っていた。


そして当の男爵の息子はというと・・・


「パパが・・・連れていかれた・・・嘘だ・・・嘘だぁぁぁぁ!俺もパパも偉いはずなんだぁぁぁぁ!お前ら何とかしろ!パパを連れ戻してこい!」


男爵家の私兵は、息子から無茶な注文を受けたが、相手は伯爵である。


余計なことをしたら自分の首すら危ないと思い、示し合わせたように逃げて行った。


それを見てさらに叫び声を上げ、父親を連行するように指示を出したラディス目掛けて走り出し、殴りかかった。


シオンはハルトを追い抜き、ラディスの前に現れると、ハルトの顔面を手加減してぶん殴った。


ハルトは数メートル吹き飛び、ぴくぴくと痙攣し、動かなくなった。慌てて教員が駆け寄ると、どうやら気絶しているようだ。それを見ていたシオンに声が掛けられた。


「いや~さすがシオン君。君とんでもなく早いね。助かったよ」


そうラディスがお礼を言ってきた。所詮は8歳児が殴り掛かっただけなので、大したことはないのだが。あの馬鹿息子はどうでもいいが、どちらかというと、オルバス家で働いているものを救った形だ。


相手は伯爵である。怪我をしたしないに関わらず、問題になっただろう。そして頭をグリグリされ、


「シオン君・・・あのまま私が殴られたら、オルバス家潰すって分かっていたでしょ?」


そう言われたので、知らない顔をしたら、


「まぁ止められちゃったのは仕方ない。じゃあそうだねぇ・・・シオン君さ、リシアの婚約者にならないかい?」


いきなりとんでもないことをラディスは言ってきた。それを聞いていたリシアは真っ赤になって、父様ちょっとどういうことよ!とラディスに詰め寄った。


ラディスがリシアの件で、オルバス家に怒りの矛先を向けたが、シオンがそれを止めてしまった。


まさに怒りの鉄槌の不完全燃焼である。それを踏まえての先程の発言だろう。


これは・・・断ることは死を意味する。ラディスの笑顔が今心底怖かった。


まぁリシアは美少女であり、断ることなどありえないので、こう返答する。


「ストレイル卿・・・リシアとの婚約の件、宜しくお願い致します」


それを聞いてラディスはしてやったりと大笑いし、リシアは真っ赤になってシオンに駄々っ子パンチを繰り出す。


生徒たちもその場面は分かったのか、はやし立ててくる。先生方はあらあらお目出たいですねと微笑むのだった。



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