デザート
ハルさん視点です。
すでに夕飯を作ってくれていた圭君は、温め直して持ってきてくれました。
「今日は簡単に作れるポトフです。手抜きで申し訳ないですけど……」
「そんなことないですよ。とっても美味しいです」
「ありがとうございます」
いつも通り美味しいです。
この料理は前にも頂いたことがありますね。
大きめのキャベツが入っていて美味しいスープですね。
「今日はデザートもありますよ」
「デザート?」
私がもう少しで食べ終わるという時に、圭君はそう言ってキッチンの方へ戻って行きました。
なんと、今日はデザートまで用意してくれたそうです。
圭君ってほんとに、何でもできちゃいますね。
「どうぞ、プリンです」
「ありがとうございます。わぁ~このプリン、味が濃くて、すごく美味しいです!」
すごく美味しくて、思わず大きい声を出してしまいました。
本当に今まで食べたことのあるプリンとは別物でした。
圭君の料理はどれも美味しいですが、大体は私の知らないものが多いので、今まで食べたことのあるものと比べる事ができませんでしたが、プリンはあります。
なので私でも、ちゃんと違いが分かります。
「それはよかったです。卵黄を多く使って作ると、結構濃厚なのが作れるんですよ」
と、さらっと圭君は教えてくれましたが、卵黄を多くつかう?
それってもしかして……
私がフィナンシェ作るのに、卵白だけ使って卵黄を残していくからですよね?
卵黄が余って、困ったからですよね?
「圭君、ごめんなさい。私が卵白ばかり使うから、卵黄の使い道を考えてくれたんですね」
「えっ……」
「私、フィナンシェを作ることしか考えてなくて、余った材料とか全然気にしてませんでした」
本当に圭君にお世話になりっぱなしですね。
でもそういう事、言ってくれてもいいのに……
「ハルさん? あの、別に卵黄が残ってて困ってる、とかじゃないですからね。大丈夫ですよ」
「圭君は本当に変に気を遣いすぎです」
「え? そんなこともないですよ」
「そんなこともあります!」
まったく、圭君は変なところで気を遣って、自分のことは気にしないですからね。
もっと自分にも気遣いできるようにならなきゃダメです。
まぁ何より、気がつかない私が1番ダメな訳ですが……
「同じお菓子ばかり作ってたらダメですね。色々作らないと片寄ってしまうんですね」
「それはそうですね。色んなものが作れた方がいいと思いますし、明日は違うもの作ってみますか?」
「はい、是非お願いします!」
私もちゃんと1人で考えて、材料が余らないように作っていけるようになりたいですから。
でもそうなってくるとお菓子以外の料理も作れるようになりたいですね。
でもあまり時間もないですし……
せっかくなら好きなものが同時に食べれるような物が作りたいです。
「野菜が一緒に食べれるお菓子とかが、あればいいんですけどね」
「ありますよ」
「えっ、あるんですか?」
「ケークサレとか、パイ生地やタルト生地で作るキッシュとか、セイボリータルトとか……でもアレはお菓子とは呼ばないのかな?」
「ケークサレとか? キッシュですか?」
聞いたこともないのばかりですね。
まぁ、私が知ってるお菓子の名前なんてケーキ、クッキー、プリン、わらび餅くらいですけどね。
でも野菜と一緒に食べれるお菓子もあるみたいです。
「ハルさんってもしかして、料理名とかあまり知らないですか?」
「そうですね。食材名は知ってるんですが、料理はあまりしなかったので……料理名はあまり知りませんね」
特に食事をしませんでしたから。
料理名を知る必要がなかったんですよね。
「今まで僕が作った料理で、料理名が分からない時ありました?」
「ごめんなさい、結構ありました……有名なのは知ってるんですよ。カレーとかチャーハンとか……でも最近圭君が作ってくれた、ホイコーローとかマーボードーフとかは全然知らなかったです」
「麻婆豆腐って有名じゃ無いんですね……」
「あっ……有名なんですね。ごめんなさい……」
私が知らないだけで有名な料理みたいです。
今度、料理の本でも調べに行きましょう。
「全然謝ってもらう事ではないのですが……あっ、じゃあ今度から僕が言った料理名が、知らないものだったら言ってください。ちゃんと説明しますから」
「そんなっ、圭君に迷惑では?」
「そんなことないですよ、僕もちゃんとハルさんの好きな料理を覚えたいので、ハルさんには是非料理名も覚えて欲しいです」
圭君が料理名とか教えてくれるそうです。
それに、圭君は私の好きな料理を覚えたい……そうです。
えっと……なんでしょうか? なんか変な気分です。
なんというか……わ、私も圭君の好きな料理覚えたいですね。
お菓子しか作ったことないのに、何言ってるんですかね。
お菓子も最近やっと作れるようになったのに……
「今日のはポトフでしたけど、ポトフは分かりますか?」
「いえ……でも確か圭君、前にも作ってくれましたよね?」
「そうですね。これは好きですか?」
「はい。大きなキャベツが入っててとても美味しいです。ポトフはキャベツ料理なんですか?」
「ポトフはキャベツ料理というわけではないです。大きく目に切ったお肉や野菜を長時間煮込んだ、フランスの家庭料理ですね。だから特に決まってる材料はありませんよ」
てっきりキャベツ料理なんだと思ってました。
やっぱりちゃんと聞いて教えてもらうって大切ですね。
「じゃあ、キャベツが入ってない時もあるんですね」
「そうですね。でも僕が作ればキャベツは入れますよ」
「ありがとうございます」
「あ、でも本来のポトフはスープと具材を分けて装うみたいですけどね。だから僕が作るポトフは本来のポトフとは違いますね」
「圭君は本当に物知りですね」
圭君って、お店とか開けるレベルなんじゃないですかね。
作れるだけじゃなくて、その料理に対する知識も凄いですよね。
「これからは料理名覚えて、食べたい料理があったときはリクエストしてくださいね。明日とか何かリクエストあります?」
「それなら、さっき話してた野菜と一緒に食べれるお菓子、教えてもらってもいいですか?」
「もちろんです」
明日は、野菜と一緒に食べれるお菓子を教えてもらうことになりました。
楽しみですね。
ちゃんとお菓子の名前も覚えて、自力で作れるようになってみせます!
「すみません。結構話してしまって、遅くなってしまいましたね。お仕事の方大丈夫ですか?」
「私は大丈夫ですけど、でもそろそろお暇します」
「はい、今日もありがとうございました」
夕方からお邪魔していたとはいえ、結構外は暗くなってました。
今日はなんか色々ありすぎましたね。
圭君の家庭事情や、私の料理事情……
これから考える事が山積みです。
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




