草原の宿 一話 経営状況と懐具合
-- side you --
宿?
というより、城かな・・・
いや、中の一部が宿なのかも?
というか、こんな辺鄙な場所で宿とか・・・正気かな?
左右対称っぽい西洋風の城。でも塔の形とか見ると対称じゃないね。
入り口も、玄関と言うより、門と言ったほうが正確かな。あ、でも門の隣に小さなドアがある。
まぁ、なんにせよ宿には見えないよな。
なんか看板がある。木の板と丸太1本で作ったショボいやつ。が3つ。
文字は見たこと無いけど、なぜか読める。
『 ようこそ 世界樹の宿 へ 』
『 酒場もあります。お気軽に 』
『 入り口は こちら → 』
と、書いてる気がする。
何か切実な経営感が半端ない。
先に行ってたアーズが門の前で待っていた。
「よ、ようこそ『世界樹の宿』へ」
と畏まって慣れてない挨拶をしてくれた。あの看板を作ったのアーズだな・・・。
それから、ドワーフ達が、横のドアを開けて
「入り口はこっちじゃ」
と、入っていった。
俺達も中に入ってみよう。
って、マイが早足で入っていった・・・まぁ、罠は無いだろうし・・・マイが罠に嵌っても別にいいしね。
-- side my --
西洋風の城か。テンション上がるよね!
ドアから入った場所にはエントランスホールがあった・・・んだけど、それっぽくない物がある。
木でできたテーブルと椅子・・・しかもかなりショボい。
木でできた、というよりその全てが丸太かな。
大きい丸太を囲むように、小さな丸太が置かれている。
一応、表面は綺麗に磨かれてるから、トゲは刺さらないかな・・・たぶん。
それが9セット。
その1つ、1番奥のテーブルに1人の女性がいた。
「フェリーフがここに居るのは珍しいね。」
「あら、お久しぶり・・・のお客様ね。」
フェリーフと呼ばれた女性は、アタシ達を見てちょっと驚いてた。そんなに客が珍しいのかな?
フェリーフは濃い褐色の肌に、垂れ気味の長い耳、真っ白く長い髪の毛を後ろで束ねている。大人のすごい美人さんだ。
白い服とズボン、そして髪の毛が濃い褐色の肌を余計に引き立ててる。
長い耳には金色の鎖でできたネックレスみたいな物を飾ってる。他の装飾品はしてないから余計に目立つかも。
でも、服と耳飾りがミスマッチのような・・・。
「彼女はフェリーフ。エルフ族だ。一応この宿の従業員なんだけど、あんまり当てにしないで」
「ふふ、失礼な坊やね。まぁワタシは基本的に何もしないけどね。」
と、手に持ったコップの中を飲む。
彼女の座ってるテーブルには瓶とコップが置かれている。まぁお酒かな。
そして彼女の座ってる席の後ろには、カウンターがあって、棚には酒瓶らしき物がボチボチ置かれてる。
大きな棚に少ししかない酒瓶が、何かを感じさせずには居られないけど、お酒は飲まないから関係ないよね。
「おいフェリーフ、ワシ達の酒は残ってるんだろうな!」
本気の声でドワーフ達がフェリーフに苦情を言ってる。
「さぁ、アンタ達の部屋にまだあったような気がするけど、どうかしら?」
「なん・・・じゃと・・・」
膝を付くドワーフ達。
お酒如きで大げさな。
後ろのカウンターに酒瓶があるのに・・・ま、まさかカウンターの少ししかない酒瓶でさえも飾りなの!?
アーズがこちらに振返る。
「部屋に案内する前に、一応確認なんだけど・・・」
アタシ達を見て真面目な顔で言ってきた。
「部屋はどうする?」
「どうする、とは??」
「いや、1人1部屋か、3人で一部屋か、2人と1人に別れるのか・・・こちらとしては、部屋は用意できるから」
なるほど、使う部屋で料金が変わると。やっぱり切実なんだね。でも、なんか顔が赤い。繁盛してないのが恥ずかしいのかな?
「兄弟なんで一部屋でもいいんですけど・・・別にいいよね?」
ウイ兄が聞いてきた。
「まぁ、アタシは別にいいけど」
今は男に覚醒したしね。特に問題を感じないかな。
「俺もいいぜ」
も、もしかして、ユウはまだモゲた事に気が付いてないのかも?女の子としての自覚が足りてないわね。
「宿的には、どうなんです?1人部屋の方が都合が良いとか?」
「いや、宿も部屋も問題ない。ただ・・・さっきマイがユウにあんな事してたから、アレかなと思っただけだから・・・気にしないでくれ。」
余計気になるわ!
「あ!」
アタシとユウの顔をみるウイ兄。
「ボク達、無一文なんですが・・・」
うん、そうだよね。
「・・・え?」