表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/394

81.猫の魂は9つというがキマイラの魂はいくつあるんだ? 〔※残酷描写有り〕

「!!」

シフトは背後からの炎をサイドステップで躱すとキマイラを見た。

何の痛痒もなく起き上がるとこちらを見ている。

切り折れた左前足も元に戻っている。

いや、切られた足がその場にあるので正確には自己修復で足が再生したと言うのが正しいだろう。

(・・・厄介だな。 なら次は二度と再生できないように今度はいくつもある首を全て切り落とすしかないな)

サンドワームの時みたいに砂漠で誰もいなければ【空間収納】内の鋼の斧を取り出してキマイラの首狩りと行きたいところだが、メーズサンたちが見ている以上、下手に自分のスキルを露見させてしまうと後々厄介だ。

シフトが考えているとキマイラが突進してくる。

躱そうと考えたがそこであることを閃く。

シフトは人のいない方角を素早く見つけて移動する。

キマイラも遠距離攻撃はせずに接近してシフトを吹き飛ばそうと更に突進する。

いつもなら【五感操作】で感覚を狂わせて躱すがここはあえて食らうことにした。

シフトはキマイラの攻撃を受ける直前に自ら後方へ飛び、キマイラの攻撃で思惑通りに遥か後方まで吹き飛んだ。

そのまま建物にぶつかると倒壊寸前だったのか瓦礫が崩れ落ちた。

「「「「「ご主人様!!」」」」」

「シフト様!!」

ルマたちやメーズサンがシフトの名を叫んでいた。


計画通りにメーズサンたちの視界から完全に外れたシフトは改めて【空間収納】を発動して鋼の斧を取り出す。

「うまくいったな。 さて、反撃と行きますか」

空間を閉じるとシフトは斧を担いで建物から出る。

キマイラを見たシフトは絶句した。

そこでは激怒したルマたちがキマイラに猛攻撃を仕掛けていたのだ。

ルマの【土魔法】で地面から槍のように尖ったものが何本もキマイラの腹を貫いていた。

ベル、ローザはこれでもかと武器で攻撃したあとに魔石に魔力を通して火で燃やす。

フェイは【武闘術】を使ってシフトと遜色ない格闘による連続攻撃を与え続ける。

そんな容赦ない攻撃を浴び続けたキマイラは吠えると首をだらりと下げて息絶えた。

シフトは鋼の斧を見て呟く。

「あぁ・・・これいらなかったかな?」

どうしようと考えているとキマイラが再度復活して動き出した。

「なに勝手に復活してるんですか!!」

「ご主人様の仇!!」

「くたばれ!!」

「雑魚の分際で調子に乗ってんじゃねぇぞ!!」

復活したキマイラに対してルマたちは罵詈雑言な言葉をぶつけてから再度猛攻撃を仕掛ける。

キマイラもすでに食らった攻撃を受けるほど甘くはない。

が、そんなのお構いなしにルマたちは攻撃を繰り出す。

受け続けているキマイラは攻撃に耐えきれず潰れていく。

ただで殺られる訳にはいかないと反撃を試みるがそもそもルマたちの気迫に負けて攻撃できていない。

そうこうしているうちにキマイラは何もできずにくたばった。

「なに勝手に死んでいるんですか!!」

「まだご主人様の恨みの100分の1も晴らしてない!!」

「くたばってないでさっさと復活しろ!!」

「立ち上がってかかってこいや!!」

ルマたちは先ほどとは真逆のことを言って死体蹴りをしていた。

「・・・」

それを見ていたシフトは呆れていた。

いやシフトだけでなくメーズサンたちもルマたちの変貌ぶりにドン引きしていた。

ルマたちの荒れっぷりを見たシフトは、

「ああ・・・これからは事前にちゃんと説明しておかないとな・・・」

今後は重要なことは事前に報連相(報告・連絡・相談)しようと自分を戒めるのだった。

しばらくするとキマイラがまた復活する。

ルマたちが文句を言いながらキマイラを攻撃する。

耐えられなくなったキマイラが死亡する。

ルマたちが死体蹴りしながらキマイラを罵倒する。

そしてキマイラがまた復活と同じことを何度も何度も繰り返し続いていた。

違う点はキマイラの頭や足や蛇みたいな尻尾や鳥の羽翼などが其処彼処に散乱して倒される度に増えていくのだ。

ルマたちのヒートアップした行動に対してキマイラはこれ以上殺されたくないのか、とうとう逃げだそうとするが4人に捕まり袋叩きにあっていた。

「・・・なんだろうな・・・ちょっと可哀想になってきたな・・・」

シフトはもういいよと止めるべきか、ルマたちの鬱憤が晴れるまでキマイラにはサンドバックになってもらうか、深刻に悩んでいる。

そんなことを考えていると遠方からユールの声が聞こえてくる。

「あ、ご主人様!!」

その言葉を聞いたルマたちがシフトが吹っ飛んでいった建物のほうを見た。

とりあえず無傷アピールをしておくか・・・

「みんな心配かけたな、僕は大丈夫だよ。 それじゃ、さっさとあれを倒そうか」

本当はもう戦う気力がないキマイラを相手にしても仕方ないのだが、この都市の安全を維持・・・はすでに無理そうだから現在の生存者たちのために犠牲になってもらおう。

シフトは斧を担ぐとキマイラに突進する。

キマイラはもう嫌だと逃げ出そうとするが、ルマが【氷魔法】で右前足を凍らせて動けなくした。

「逃げるな!!」

「ご主人様からの鉄槌です! 有難く受けなさい!!」

逃亡が不可能になったキマイラは悲しい顔で鳴き声をあげていた。

「・・・はぁ、ルマとフェイは【風魔法】を使って胴体の切断を試みて」

「「畏まりました、ご主人様」」

ルマとフェイはありえない速度で【風魔法】を連発してキマイラの胴体を切り刻む。

何度も攻撃していくうちについにキマイラの上半身と下半身の分断に成功した。

シフトは下半身を人がいないほうに蹴り飛ばして上半身から遠ざけた。

「ベルとローザは下半身を見張っておいてくれ」

「「畏まりました、ご主人様」」

改めてキマイラの上半身のほうを向く。

「またせたな。 今楽にしてやるよ」

シフトは跳躍するとキマイラの首の1つに斧を振り落とした。

英雄たちを超越する力で斬首する。

地面に着地するとすぐに次の首を斬りに跳躍した。

シフトがそれを繰り返すたびに地面にはキマイラの首が増えていく。

最後の首を斬り落とすとシフトは首のなくなった上半身を見た。

(さて、どうなる?)

復活するかしないか、運命の分かれ道。

面倒なのでできればこれ以上復活してほしくないと思っている。

復活したらルマたちからのヘイトが集まりそうだし・・・

しばらく待っていたが復活する気配はなかった。

どうやら無事倒すことができたらしい。

ふいにベルがキマイラの首のところまで来ると頭にナイフを刺して燃やし始める。

「ベル?」

「ご主人様、復活の理由がわかった。 この首1つ1つに外部からの魔力干渉を受けている。 1つでも残っていると胴体の魔石に流れてそこから復活する」

どうやらベルはキマイラを鑑定して頭と魔石が無限復活の原因だと突き止めた。

ベルの話をまとめると外部からの魔力を(アンテナ)が受け取り魔石(動力炉)に注いでいたのだろう。

1つでも頭と魔石の流れが繋がっていればそこからいくらでも復活する仕組みだ。

倒す方法は今みたいに首をすべて切り落とすか、【次元遮断】で外界から隔離してしまうか、あるいは外部にいる相手の魔力が尽きるのを待つしかない。

それを聞いたルマとフェイは近くに転がっている首に次々と火を放っていく。

「ベル、お手柄だぞ」

シフトはベルに近づくと頭を撫でた。

「~♪」

ベルは上機嫌な顔でなすがままにされている。

「ベルちゃんだけずーるーいー。 ぼくだって頑張ったんだから」

「そうですよ。 私だってご主人様を心配したんですからね」

ルマとフェイが不機嫌にシフトに言い寄る。

「わかったわかった。 あとでみんな褒めてあげるから。 それよりベル、あれの魔石はどこだ?」

「あそこ」

ベルはキマイラの上半身の分かれ目ぎりぎりのところを指した。

シフトは凍っている右前足を蹴ると氷が砕け、キマイラの上半身がぐらぐらと揺れてそのまま地面に倒れる。

ズウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーン!!!!!!!

まわりに砂埃が舞い、しばらくすると霧散された。

ベルが指さしたところの個所をさばいていくと大きな魔石が現れた。

「これか・・・」

シフトは魔石を取り出すと先ほどの建物の中に戻り、斧と魔石を空間にしまう。

ルマたちのところに戻り、問題ないことを確認する。

糠喜びにならないよう一応警戒はするが特に問題は発生しなかった。

「みんな、お疲れ。 とりあえずユールのところに戻ろうか」

「「「「はい、ご主人様」」」」

キマイラの亡骸を後にシフトたちはユールやメーズサンのところに戻るのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

幻世の作品一覧

【完結済】

スキル【ずらす】で無双する
全 394 エピソード  1 ~ 100 エピソード  101 ~ 200 エピソード  201 ~ 300 エピソード  301 ~ 394 エピソード
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕


【連載中】

追放された公爵子息の悠々自適な生活 ~スキル【現状維持】でまったりスローライフを送ります~
1 ~ 100 エピソード  101 ~ エピソード
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕


【短編】

怪獣が異世界転生!! ~敗北者をナメるなよ!! 勇者も魔王もドラゴンもみんな潰して異世界崩壊!!!~
ジャンル:パニック〔SF〕 ※異世界転生

「お前をパーティーから追放する」と言われたので了承したら、リーダーから人脈が芋蔓式に離れていくのだが・・・
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

潔癖症の私が死んで異世界転生したら ~無理です! こんな不衛生な場所で生きていくなんて私にはできません!!~
ジャンル:ヒューマンドラマ〔文芸〕 ※異世界転生

王太子殿下から婚約破棄された上に悪役令嬢扱いされた公爵令嬢はクーデターを起こすことにしました
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転生

敗北した女勇者は魔王に翻弄される ~くっ、殺せ! こんな辱めを受けるくらいなら死んだほうがマシだ!!~
ジャンル:異世界〔恋愛〕 ※異世界転生

目の前で王太子殿下が侯爵令嬢に婚約破棄を言い渡すイベントが発生しました ~婚約破棄の原因は聖女であるわたし?!~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転生

パーティーから追放された俺に待ち受けていたのは勧誘の嵐だった ~戻ってこいといわれてもギルドの規定で無理だ、あきらめろ~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

君が18歳になったら
ジャンル:現実世界〔恋愛〕

追放した者たちは依存症だった件
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

高給取りと言われた受付嬢たちは新任のギルドマスターによって解雇されました ~新しく導入した魔道具が不具合を起こして対応できなくなったので戻ってこいと言われましたがお断りします~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

ダンジョン奥深くで追放された荷物持ちは隠し持っていた脱出アイテムを使って外に出ます ~追放した者たちは外に出ようとするも、未だにダンジョン内を彷徨い続けていた~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

王立学園の卒業パーティーで王太子殿下から改めて婚約宣言される悪役令嬢 ~王太子殿下から婚約破棄されたい公爵令嬢VS王太子殿下と結婚したくない男爵令嬢~
ジャンル:異世界〔恋愛〕 ※異世界転生

婚約破棄された公爵令嬢は遠国の皇太子から求婚されたので受けることにしました
ジャンル:異世界〔恋愛〕

異世界にきて魔女としてエンジョイしたいのに王子殿下を助けたことで聖女に祭り上げられました
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転生

隣国の夜会で第一皇女は初対面の王太子殿下から婚約者と間違えられて婚約破棄を言い渡されました
ジャンル:異世界〔恋愛〕

追放された聖女は遠国でその国の聖女と間違えられてお帰りなさいと温かく歓迎された
ジャンル:異世界〔恋愛〕

聖女として召喚されたのは殺し屋でした
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転移

異世界から召喚された聖女?
ジャンル:異世界〔恋愛〕

この家にわたくしの居場所はないわ
ジャンル:異世界〔恋愛〕

闇の聖女は砂漠の国に売られました
ジャンル:異世界〔恋愛〕

「君を愛することはない」と言いますが、そもそも政略結婚に愛なんて不要ですわ
ジャンル:異世界〔恋愛〕

婚約破棄? それならとっくの昔に言い渡されておりますわよ
ジャンル:異世界〔恋愛〕

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ