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異世界転移(最強を目指す者語り)  作者: 出戻りわたあめ
二章 ダンジョン都市アスタール編
26/30

明かされた事実

お久です。

はじめに自分はロリコンとかではありません。


 「形見を取り返すため。この町にあるということか」

 「いえ、それは分からないです」

 「分からない?」

 「そうなのです。ここには情報を求めてきたのです。ダンジョン都市には人がたくさん集まりますですから」

 確かにダンジョン都市には色々な人間が集まる。

 冒険者は勿論だが、商人やそれこそ裏の人物達もこの都市には存在している。


 「結果的に俺達は君の目的地に連れてきたということなのか」

 「そうです。だから、私は本当に感謝しているのです。だから、何かお礼をしないと気がすまないです」

 「わかったよ。そのお礼を期待して待ってるよ」

 お礼を要らないと本音から言っても少女からしては譲れない所なのだろう。なら、此方が折れた方がスムーズに事が進む。


 「......かたみ、なに?」

 俺が敢えて訊ねなかった質問をエルは少女に問いかける。

 

 「おい、エル」

 踏み込みすぎたエルを諌めようとするも少女の口が開きそれを遮る。


 「私のかあさまは集落の長だったんです。でも、ある日、他の集落の者にかあさまが殺されたです。それだけでなく奴等は形見を命と同等に大切なそれを奪いやがったのです」

 「......たいせつ?」

 「はいです。代々ご先祖様から受け継いできた。大事な大事な儀式を行うのにどうしても必要な物なんです。絶対に奪われてはいけなかったのに......」

 少女は歯を砕かんとばかりに食いしばっている。


 「それで、形見を取り戻すために村を出て、そして、途中でいき倒れたです」

 ことの顛末を語り終えた少女は涙を浮かべて悲しそうな表情へと変わる。


 

 少女の話を聞きながら俺はずっと一つの危機感を抱いていた。

 幼く可憐な少女が自分の身の上話を人に語るとどうなるか、同情するのだろうか、共感するのだろうか。


 「......ジン、てつだお」

 はたまた、エルのようにやる気をだしてしまうのか。

 

 杞憂でいてほしかったが予想が当たってしまった。

 キヤケ村でも見られたようにエルが少女の事情をしればどう反応するかなんて想像に難くない。


 分かっていたからこそ俺からは敢えて少女の事情に踏み込まなかったのだが既に時遅しだ。


 エルは事情を知ってしまったし、やる気をだしてしまった。 

 

 「ほ、本当ですか」

 少女もまた、浮かべさせた涙をポロポロと溢して歓喜している。

 とても、断れる状況じゃない。



 「はぁーー。わかったよ。手伝うよ」

 「......ジン!」

 嬉しそうにエルが腰に抱きついてくる。


 「本当ですか......」

 「ああ、ちょうど用もあったから一緒に情報を集める位ならわけないさ。だから、そんなに泣かなくていい」

 雰囲気に流された訳ではなく俺にも用事があったから、ついでに引き受けたに過ぎない。

 それなのに、止めどなく涙を流されると此方がいたたまれない気持ちになってくる。


 「わ、私、三年間探してきたけど、もう見つからないんじゃないかと不安になっていて、私が亜人だから他の人も手助けなんてしてくれなくて......だから、私本当に嬉しいです」


 「三年間も」

 どう見積もっても、まだ十五にも達していないであろう少女が過ごすには長すぎる期間だ。


 それに、亜人だからか。

 マロンさんの説明から想像はしていたが亜人はこの世界では低い立場にいるのかもしれない。


 「お礼は必ずします。一度助けてもらったのに図々しいのも承知しています。それでも、改めてお願いします。私を手伝ってください」


 少女は低い体勢のまま頭を下げる。

 一秒、十秒と経っても少女は面を上げない。


 「......ん、とうぜん」

 エルが胸に手を当て、意気込んで引き受ける。

 

 「まぁ、取り敢えず詳細を知りたい。場所を変えよう」

 「はいです!」

 「......ジン、どこいく?」

 「そうだな。ご飯食べながら話したいし、どこ行きたい?」

 「......にく」 

 「即決だな。君はそれでもいいか?」

  少女の意見を尋ねようと顔を差し向けると少女は涎を垂らさんとばかりに目を輝かせていた。


 「____いいみたいだな」

 正に目は口ほどに物を言うということか。

 

 「まぁ、決まったなら早速行くか」

 「......ん」

 「はいです!」

 診療所の者に声をかけてから少女達を引き連れて診療所をでる。


 「......ジン、どこいく」

 「やっぱ焼肉......」

 何だ? 今、一瞬何かを感じたような____。


 「どうしたです?」

 気を逸らしていると少女が声をかけてくる。

 

「いや、何でもない。やっぱ焼肉かな」

 「......ん、さいこー」

 エルも喜んでいるし正しいチョイスみたいだ。

 場所も決まり、お店へと向かう。

 それから、気配を感じる事はなかった。



 

   

 

 

 

 





 

 「まじかよ......」

 エルの要望によって肉を食べに来た俺は目の前の光景に唖然とするしかなかった。


 まず、エルの前に肉の山が積まれている。更に隣には同じく肉の山が少女の前に置かれている。    



 二人は厚さ五センチはある数十枚の肉の山を臆することなく余裕綽々の態度をとっている。



 「すいません。本当にいいんです?」

 「......へいき」

 「いや、エルは平気だけど、大丈夫か?」

 少女の肉はエルが自分と同じ分量を勝手に頼んだものだ。普通の者ではまず食べきれないそれを申し訳なさそうに見ていた少女はしかし、首を縦に振る。


 「はいです。この程度なら問題ないです。でも、お値段が......」

 「それこそ気にしなくていいけど、そうか、この程度か」

 エルといい、少女といい、この世界の子供は食欲が旺盛なのだろうか。 

 

 「あっ......そういえば、名前知らないな」

 診療所では関わらないように聞かず、此処に来るまでも少女はエルとばかり会話していたため聞き逃していた。


 「すいませんです。恩人に名乗っていなかったなんて____ライカ。私は金狼一族のライカです」

 ライカは犬歯を出して満面の笑みで名乗る。


 「俺はジンだ。よろしく、ライカ」

 「はい、ジンさん。よろしくです!」

 「......よろしく」

 「よろしくって、名乗らなくていいのか?」

 「あ、エルちゃんとはさっき話したです」

 どうやら、此処に来る間に既に自己紹介を交わしていたらしい。

 出来ればその時に俺にも声をかけてもらいたかったのだが仕方ないか。


 ____あれは、何だったんだ。


 先程の気配がずっと気になりエル達の話を聞く余裕がなかった。

 気のせいならいいのだが今の自分の感覚が鋭くなっているのはある程度自覚している。


 どういう意図にしろ此方を窺っていた気配があったと想定していいだろう。


 問題は誰が此方を窺っていたのかだ。

 坂井との戦闘時に監視していた者とは恐らく別人だ。俺が察知出来たのがその証拠でもある。


 ___そもそも、目的は何だ。

 今まで視線なんて感じた事もなかったのに何故このタイミングで感じたのか......。


 「どうかしたです?」

 「いや、なんでもないよ。それより、聞いていいか。盗られた形見がどんなものなのかを」

 探すのを手伝うと決めた以上は、少しでも詳しい情報を得たい。


 「はいです。形見は儀式に使うこのくらいのサイズの金色の宝玉です」

 ライカは指同士をくっつけて野球ボール大の円を作る。


 「そうも小さいと厳しいかもな」

 「はいです」

 サイズが小さければ見つけるのは容易ではない。

 いや、実際にライカが三年も探しても見つからないんだ、簡単なはずがなかった。


 「でも、犯人は分かっているんだよな。何で三年もかかっているんだ?」

 「それは......実は一度は奪いかえしたんです。でも、私が弱っている所をまた違う人に奪われて」

 「そのまま三年経っていたって事か」

 「はいです。宝玉ですから売りに売られて行方が知れなくなったです」

 高価そうな宝玉をライカのような少女が所持していたらよからぬ事を考える者は確かに存在するだろう。

 しかし、だとしたら見つけるのは更に困難になる。

 手伝うとは云ったが想像以上に厳しそうだ。


「あの、お礼は必ずしますです。貯金の全てを渡すです、だからお願いします」

 難易度の高さを知って俺が考えを変えると思ったのかライカは切羽詰まった顔で懇願してくる。 


 「......ジン」

 エルも俺を見つめてくる。

 エルもまた、心変わりを心配しているのだろうか。


 「......おにく、くいたい」

 くぅ~。緊張感のない音が鳴り響く。


 「ははっ、そうだな......ライカも食おう、お礼なら甘い食べ物でも頼むわ」

 「____なん......で」

 心底驚いたような表情を浮かべるライカの頬を一筋の線が伝い落ちる。


 「ライカ?」

 「あっ、えへへ。ごめんなさい、何か嬉しくって泣いちゃったです」

 「お、おう。ほら、食おう」

 「はいです!」

 ライカは涙を浮かべながら肉の山に手を伸ばす。


 「......まけない」

 エルも負けじと肉の山に手を伸ばして____二人は五分と経たずに完食した。



 ......嘘だろ。





 「あの、本当にいいんです?」

 「......ん、かまわない」

 おずおずと遠慮がちに尋ねたライカにエルは胸を張って了承する。


 ......どうしてこうなったのだろうか。


 日も暮れた時刻、俺とエルが泊まる宿の一室。

 柔らかいとはいえないベッドにライカが小さくなって座っている。


 もう一度言おう。日も暮れた時刻の自室にライカはいる。 

 

 何の用で来ているのか、


 「......ここで、ねるといい」

 エルの言葉が全てだった。

 飯も食べ終わり、暫くの間談笑していると日が落ち始め、そんな時に話題に昇ったのがダンジョン都市に来たばかりのライカの寝泊まりする場所がないというものだった。



 当然の如く宿を取ろうと探そうとした俺にエルが提案したのがライカを自分達の宿に泊めればいいというものだった。

 勿論俺は難色を示したが少し落ち込んだ様子のライカとエルの子供を見る目付きと「......ジン、ねるのは、いっしょだから、へいき」と、まるで俺が二人きりになれないのが嫌だとでも言いたげな発言に押しきられる形で結局泊めることに決定してしまった。


 「でも、ベッド二つしかないです」

 自分が座るベッドと隣のベッドを見てライカが呟く。


 「......へいき、エル、いつもジンとねてる」

 「えっ、そうなんです! ジンさん」

 「まぁ、本当だけど、エルは子供だし問題ないだろ?」

 元々この部屋にはベッドは一つしかなかった。

 二つあるのもライカ用に足したものだ。

 ベッドに三人寝るのは無理だし、流石に幼女とは呼べないライカと同衾するのには抵抗がある。 


 「そういえば、ライカは何歳なんだ?」

 「12歳です」

 「へぇ、大人っぽいんだな」

 少し驚いた。野暮ったい外套を脱いだライカの手足は細長く引き締まっており、顔立ちも美人系だから1、2歳は上かと思ってた。

 

 「......エルのひとつした」

 ライカの年齢を聞いたエルが呟く。


 ......エルノヒトツシタ?


 今何か聞き捨てならない事をエルが言った気がする。


 「へぇ、エルちゃん小さいのにお姉さんですか」

 ライカが驚いている。聞き間違えの可能性も考慮したが一瞬で否定された。


 確かに君島さんという前列はあった。

 しかしだ。120cmあるかどうかのエルが中学一年か二年生だったというわけだ。

 驚きの度合いは遥かに大きい。


 そんな女の子と俺は毎日くっつくように一緒に寝て、タオルで体を拭いてあげたりしていたわけだ。



 ......嘘だろ。

 

ロリコンじゃないですよー

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