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コーヒー砂糖ミルクあり  作者: 長谷川真美
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【翼と満月】

遠い日の記憶を辿る。

いつも君がいた。

君との夏は何度めだろうか。

これからもずっと一緒にいたい。

 修士1年の夏休みがやってきた。大森君は修士課程を修了後は民間企業の技術職を希望しているのでインターンシップと就職活動、研究で大忙しだ。私はもっと研究を続けたいので両親の反対を押し切って麻生(あそう)教授夫妻の勧めはもちろんだが何よりも私の意志で博士課程に進学をすることに決めた。昨年も悠人(ゆうと)と一緒に見に行った花火大会で花火を見ながらゆっくりとその事を告げる。1年間、アメリカに留学をすることも初めて教授以外の人に言った。博士課程修了後は海外ポスドクも考えている。それを悠人に告げる。悠人は静かに聞いていた。悠人は一言一句間違えないように慎重に言葉を選んでいく。「知世さんは研究を愛しているし、研究に愛されている。俺は研究に身を投じるだけの力はないから、直接助けてあげることはできない。だけど留学や海外ポスドクもそれが知世(ともよ)さんの望むことなら全力で応援する。知世さんの翼を取り上げたくない。」花火大会の最後を告げる尺玉が散っても私たちは身動きをしなかった。悠人は私の伸ばし始めた髪をそっと撫でる。いつの間にか泣いていた頬を悠人がそっと手で優しく拭く。そして、永遠とも感じられるような長いキスをする。悠人は私の翼を取り上げない。私も悠人の公務員として技術を用いて地元の人に寄り添って生活を支えたいという夢を奪わない。悠人は誰よりも先に私のもとに飛んでいく。私も風に乗ってあなたのために祈る。今の私達に許されていることは最大限に行おう。永遠に寄り添って私たちは生きていく。夜更けの暗さは永遠には続かない。朝を迎えに行こう。闇は黄昏と共に沈めば良い。明日になったら会える。光が待っているのだから。


 いくつもの季節が過ぎていった。朝を迎えるたびに恋人のことを思う。左手の薬指の指輪に触れる。辛い時、頑張りたい時の癖になっている。指輪にあなたへの思いを託す。私は一人ではない。悠人がいる。遠距離恋愛は年齢を重ねる毎に糸が織りなすように信頼感が強くなり乗り越えることができた。距離を開けることで冷静になれたこともある。日本に帰国する度に空港には必ず悠人がいた。優しさが待っていた。「おかえり」その一言で涙が出てくる。涙は嬉しいときにも流れる。その事を悠人が教えてくれた。満月が二人を照らす。優しい光に包まれる。涙で視界がぼやける。ぼやけた視界の中でも飛行機の翼の白と満月の色彩が織りなすコントラストが美しかった。 成田空港のラウンジでしばらく飛行機と夜空を見ていた。言葉はいらなかった。ただ隣りに座っている人がいるだけで十分だった。無眼とも思える時間を過ごしていく。満月の光の下、永遠を感じていった。夢のような時間。夢幻(ゆめまぼろし)は無眼だった。あなたの影は私の影と混じっていった。二人共、迷いはなかった。どちらかが始めたかわからないキスで現実に戻っていった。成田空港から悠人が運転する地元に向かう車内でエリック・クラプトンのChange the Worldが流れた。流れ流れていくこの曲から私たちは始まった。そして始まりは永遠を誓っていった。FIN.



「コーヒー砂糖ミルクあり」完結です。

もっと書いていたかったですが終わりにすることに決めました。

お気に入りキャラがたくさんできた作品でした。

またスピンオフで書いていきたいです。

沢山の方々に読んでいただいて幸せな作品でした。

またお会い出来ることを楽しみにしたいです。


BGM:ポルノグラフィティ ベスト盤

2017年7月11日

長谷川真美

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