~第八十三話~元勇者、お仕事を始める~
はい、作者です。
久しぶりに続き書きます。
次は別視点の話しかも?って感じです。
娘のリアネと買い物に行った次の日。
今日からお仕事があるので、朝早くに起きて、朝食の準備をする。
さて……何を作ろうかと悩んで、とりあえず簡単な朝食を作る事にした。
朝食を作っていると、何か視線を感じたので後ろを見てみると、我が家の飼い猫のクロが私の事をじ~っと覗いていた。うん、一体何なんだろう? この猫。いや……確かナイトメアキャットとか呼ばれている種族だっけ? 何でこの猫は私の事をじ~っと見ているのだろうか? これはあれか? お腹がすいたから私の事を見ているのか? ならこれならどうだ。
私はクロに飲み物をお皿に入れて、クロの前に置く。
クロは私のじっと見た後、フっと息を吐いて、飲み物を飲み始めた。
見ている感じに美味しそうに飲んでいる様子ではなく、これは出されたからとりあえず飲んでやってるのだって言う感じに見える。こやつ、猫っぽくないんだが…いや、気にしないことにするか。
朝食が出来たので、娘のリアネを起こす事にした。
寝ぼけ眼に頭になんかアホ毛が立ってるんだけど、これって寝癖なのか?
なんか凄い可愛い。やっぱり私の娘は天使だなって感じがするな。
「お母さん、今日はお仕事あるの?」
そう聞いてきたので
「ええ、今日からお仕事よ?リアネ、家で待っててね?仕事が終わったら早めに帰る事にするわ」
「うん、解った」
リアネと一緒に朝食を食べたあと、私は出かける準備をする。
この国では私の銀色の髪は目立ってしまうのでそれを隠す為に、フードを被り隠す事にした。
今の時期は夏に近い状態なのでこの姿だと出歩くのキツくなるかもしれないな?
とりあえず何か考えておかないと……
出かける準備が出来たので娘のリアネの頬に口付けしてから家の外に出る。
私達の住んでるバイトール王国は結構賑わっている国でもあるので、もしかしたら私を探している勇者君がまだこの国にいるのかもしれないけど……気づかれる前に逃走ルートを確保も考えないといけないのかも知れないな?
国の中を歩いて数十分後、働いている現場に辿り着く。
建物の中に入ると、既に私の上司のバルバさんち同僚のタマコがいたので挨拶する事にした。
「おはようございます」
「あ、ナナさんおはようです」
「お、ナナ、おはよう。取り敢えず本日の仕事内容を言うから心して聞くように。今日は馬車一台分しかないが、ちょっと珍しい食材らしいので、それをタマコとナナ、二人で仕分け作業に入ってくれ」
「珍しい食材ですか?それは一体何ですか?」
「見たあとに説明する事にしよう。とにかく着いてきてくれ」
バルバさんにそう言われたので、タマコと一緒に仕事場に向かうことにした。
仕事場に辿り着くと、既に一台の馬車あり、その中に案内される。
馬車内部は冷却されているのか、結構肌寒かった。これ魔法とかで馬車内部を冷やされているのかも知れないな?
「うわー何か寒いですね、この馬車の中」
「確かにそうね? バルバさん、この馬車の中にあるのって一体何ですか?」
「この中にあるのは冷凍された肉だな。初めて聞いたんだが竜と呼ばれる魔物の肉らしい。最近別の国で知られるようになった食材らしいみたいだな。取れる量が少ないから価値的には結構高級品みたいな感じだぞ。この品を小分けするのが二人の仕事になる。内容は手短に話すから覚えて欲しい」
バルバさんが私達に作業内容を教えてくる。それにしても竜ね……
この世界に竜っていたんだな……って思ったけど、私が男だった時、魔王退治の途中で竜と遭遇したことあったな確か。真っ赤な色をした竜だった事は覚えているけど、あれから結構時間たってるし、もうどんな竜だったか朧気で覚えてないなあ。竜って高級品だったのか……この肉を焼いてドラゴンステーキとかにするんだろうか? まあ考えても仕方がないので仕事をする事にした。
数時間後、量が多くなかったけど、持ち運びに苦労しながら作業を終える事にした。
仕事が終わったので上司のバルバさんに報告に行く。
「バルバさん、仕事終了しました」
「結構美味しそうだったけど我慢しました~」
「ああ、二人ともお疲れ様。これで本日の仕事は終了になるが……タマコ」
「はい、何ですか?」
「ワトリがお前に用事があるそうだ。その用事が長引きそうなら明日は仕事を休んでも構わんぞ」
「お父さんが私に用事ですか……うーん何だろう? まあお父さんに聞けば分かりますよね、じゃあ私はこれで失礼しますね~」
タマコがそう言うとその場からいなくなる。残された私はバルバさんに
「あの? 私も帰ってもいいですかね?」
「ああ、大丈夫だ。ところでナナ?」
「はい、何ですか」
「その姿のまま帰宅するのだろう? 結構きついんじゃないか?」
まあ……バルバさんの言いたい事も解る気がする。今の私の格好。見るからに暑そうなスタイルだしなあ……
この国では、ほとんど私みたいな髪の色、見かける事ないし。銀色ってエルフぐらいしか見かけないらしいしね? この姿なのも髪の色を隠す為にしている訳だし。
「この姿じゃないと狙われる可能性あるのでしょうがないですね」
「そうか……まあ何か困ったら言ってくれ。出来るだけ力になるからな」
「解りました。では、失礼しますね」
バルバさんに別れを告げて、私はフード姿のまま家路へと戻る事にしたのでした。
リアネ……大丈夫かな?まあ、今はクロもいるし寂しくはないと思うけど……