プロローグ
視界に広がるのは、淡いブルーに染まった見知らぬ雪世界。
「ここは……?」
凍える風の中で、ふいにあたたかい記憶が蘇る。
「ごめんなヒカリ、また今度な」
居間でパソコンに向かう父・修平の背中。優しいけれど、いつも忙しくて話を聞いてはくれない。
そして、音楽教室に響くピアノの音。
奏多先輩の、優しい横顔。
「がんばってるね」
すれ違いざまのその一言と笑顔が、ヒカリにとって何より大切な日常だった。
(帰れないの……? もう、お母さんにも……先輩に会えないの?)
指先から体温が奪われ、絶望が胸を覆い尽そうとしたその時——
サクッ。
新雪を踏んで現れたのは、蝶ネクタイを締めた一匹の白猫だった。
猫は小さな銀の指揮棒を取り出し、優雅に一礼する。
「ようこそ、ノエル王国へ。私はあなたを導く者、アルコです」
「ね、猫が……喋った?」
ヒカリは震える声を絞り出した。
「お願い……わたし、帰らなきゃ……!」
雪原に響くその声は、消えゆく希望にすがるような悲痛な叫びだった。
バイオリンレッスンで挫折し、もう一度、入門教本「鈴木メソード1巻」からレッスンを始めることになったHaminです。
目標は、クリスマス会で一曲演奏すること。
優しい先生に支えていただきながら、果たして本番までに弾けるようになるのか――。
そんな日々のレッスンでの気付きを、ファンタジー小説として綴っていきます。
これから新しい楽器にチャレンジしてみたい方にも、楽しんでいただける物語を目指しています。
「キー」「音階」「脱力」など、楽器演奏の初歩的な知識も、物語を楽しみながら自然に学べる構成にしています。
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