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27 家族と相棒が増えた話。(2章終わり)

「と、まぁ。ここまでが。お前が魔王と戦ってから今までの顛末になります」


 夜。四人でしばらく歩き続けて、今日はもう休もうか? なんて野宿して今に至る。

 カゲとカーヤは抱き合って眠っている。

 出会ってからまだほんのわずかであるが、カーヤの懐に入る能力と、いったん味方と理解してからのカゲの人懐こさはなんつーか危ういものがあるが、まぁこの際それはいいか。

 俺と弟は火の番をしていた。今までは3人だったが子供であるカゲに火の番をさせるわけにはいかなかなくて実質2人だったが、これからは1人増えて、睡眠時間が増えるのは素直に喜ばしい。

 危惧しているのは、女性に火の番をさせるわけにはいかないよ。とかクソみたいな正論を弟が吐いて結局2人でローテーション火の番はヤだなぁという所であるが、今の所そういう事にはなっていないからまだそれについては弟と論争するつもりはない。

 ぱちりぱちりと薪が爆ぜる。


「なんと言うか、大変だったね兄ちゃん。お疲れ様でした、いやマジでホント、がんばりました」


 普段はダメダメお兄ちゃんが覚悟を決めてあまりにも強大な壁に立ち向かうという、俺の英雄譚は弟には対して響かなかったようで、感想がそれだけですっごい雑である。


「いや、大変だったねなんて言葉だけで片付けてはいけない位に大変だったんだぞ、もう何回泣いたかわかんねーし、心折ったかわからんよ。挙句に体になんか寄生されるに至ったお兄ちゃんの心境たるや涙なしで語れないよ」


 実際二回記憶喪失になる経験などそうそうないはずである。

 なんだったらそんなん俺だけであると声高らかに言えるほどだ。


「ははは…それはホントにご愁傷様。でもその寄生? 共存? しているマオさん、だっけ? その人のお陰でこうしてなんとかなったんでしょ?」


 それを言われると弱い。

 確かにマオの活躍なくして今回の勝利はあり得なかった。マオがいなかったらみんな記憶喪失にされて本当の自分を思い出せないまま寿命までカーヤのおままごとに付き合わされるところだった。今思い出しても寒気が走る。


(そうだな。お互いの生存の為という大義名分はあっても、オニイチャン個人の謝礼があってもいいと私は思うがどうか? お互いの尊重は長く関係を続けていく上で必須だと思うがね)


 頭の中で同居人であるマオの声が響く。

 コイツは別に増長しているわけではない。俯瞰から判断し、俺はおろか自分自身すら盤上の駒として考え得る最善手を打ち続けたにすぎない。

 大体俺に威張り散らしてもなんの得もない。コイツは明らかに俺より格上だ。こんな誰か他人の身体を利用してなんとか生きていけるような脆弱な存在となってもまだ、なんというかその在り方というか、存在は色褪せない。

 大変なヤツを体に宿してしまったなぁ。


「ねぇ、マオさんなんて言ってるの?」


 俺が変な所でフリーズしているのを見て、頭の中で会話しているのを悟ったのだろう。弟が会話の中身を聞いてくる。

 それにしても、かつて戦った弟とマオであるが、両者間に渦巻く感情のようなものは特になく、お互いに戦わざるを得ない状況だったから全力で戦っただけでそこに私情は特にない、というのはどちらも一緒で案外気が合うのかもしれない。

 また、俺にマオが寄生しているという事を、弟くらいには伝えてもいいかとマオに尋ねた時も。


(まぁ、あの弟なら悪いようにはしないから別にいいだろう。それになにかあった時に事情がわからないと困るだろうしな)


 と、弟にだけなら自分の存在を告げてもいいと、本人許可はもらっている。

 このマオの弟に対する信用はなんなんだ。人外じみた強さを持つ者ふたり通じるものがあるのかもしれない。


「ああ、今回は俺の活躍もあったからお礼くらい言え。だってさ」


 別に隠すようなことでもないので、弟に会話をかいつまんで説明する。この世界の言葉を理解できない弟の通訳をする場面は何回もあったが、さらに通訳する先が増えてしまった。


「ええっ。まだ言ってなかったの兄ちゃん。兄ちゃんは自分から遠い人ほどポンポンお礼を投げ売りするけど、近しい人にはなかなかお礼を言わないからなぁ。早くお礼を言っといたほうが良いんじゃない。兄ちゃんの性格上、先延ばしにすればするほどやりづらくなるよ、それで何回も後悔してきたじゃないの?」


「うぐっ、痛いところをついてきやがる」


 コイツ。意外と俺の事をよくみていやがる。

 お礼も謝罪も遅れれば遅れるほど言いづらくなってしまう。弟が言うように俺は何回もそれで後悔してきた。

 別にお礼なんて一円も失わないただの言葉だ。すぐに投げかけて終わりにしてしまうのがベターなのだろう。でもなかなかそれに踏み切れない。

 近ければ近しい人ほどその傾向があるのは確かにそうだ。

 だけども、今思った通りお礼なんて一円も失わないのだ。別にそれに価値なんてないのだ。だったらさっさとやってしまおう。


「ありがとな」


 頭の中の同居人にぶっきらぼうに告げた。あぁ、なんでお礼言うだけでこんなに恥ずかしいのだろうか?


(よく出来ましたオニイチャンとやら。お礼というものは言う側が失うものはないものだがね、言われた方は得るものがある不思議なものなのだよ。だから、使わない手はない。貴様ももっと素直に近いヒトにお礼を言えるようになれ)


 ホントにコイツは…。

 その在り方は高潔で、契約とかいう縛りを順守して、その中で最善手を指してくる。決して諦めないいつかの時代、どこかを統治していただろう魔の王。

 俺と言う矮小な器からすでにはみ出ている計り知れない器をこの身に内包してしばらくは生きていかなければならない。


「ああ、わかったよ。それと、これからもよろしくな、マオ」


 なんとかそれだけを告げる。ああやっぱくっそ恥ずかしい。


(こちらこそよろしくオニイチャンとやら。いつまで、どこまで一緒かはわからないが、何かが二人を分かつまで仲良くやっていこうではないか)


 俺の恥ずかしさを察してくれたのか、気付かないフリをして、また俺の身体のどこかで眠りにつくマオなのだった。


「うんうん、良きかな、良きかな」


 あと、その様子を縁側のじいさんよろしく見ていた弟がうざかった。テメエなにキャラだよ?


ここで2章は終わりになります。続きは今書いてます。

書き終わったら続きをあげたいと思います。


とりあえず、ここまで読んでくれてありがとうございます。

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