5-4 コドモトカゲニンゲン。解体す。
「ううううううううぅぅぅぅぅ」
言い訳は尽きた。
捌く、肉を、わけわからんところに刃物を刺して血がぶしゅっと迸る。
不意にそんなビジョンが浮かんだ。
ダンッ―――。
可食部を探して刃物を肉に通して、結果として全部台無しにする。
そんなビジョンも浮かんだ。
ダンッ―――ダンッ―――。
成功するビジョンが一切浮かんでこない。
―――ダンッ。
「っつかダンダンうっさくね?」
ってかなんの音だ?
何かを激しく叩きつけるような音が聞こえる。
弟とそちらに視線を向けた。
そこでは、コドモトカゲニンゲンが、ドスで、仔牛ほどもある巨大なウサギを捌いていた。
この世界にきて、結構なグロ映像を見てきた。
けれど、この食肉加工はまたそれとも違う。
慣れた手つきで内臓を取り出し、なんやようわからん箇所に刃物を通して血抜きをして。
「これ、もって、つるしてきる」
言葉が通じる俺にウサギの脚を持てと言う。
なんというか、かつてないほどアクティブなコドモトカゲニンゲンにちょっと引いている。
それは弟も同じようで、今まで保護されるだけの弱い存在だと思っていたコドモトカゲニンゲンがまさか肉の加工ができるとは思っていなかったようで、ただただ驚いているようだった。
「はやく、もって」
その剣幕に圧されて仕方なくウサギを逆さづりにする。
「‥‥‥ん、たかい、もっとひくく」
片膝をついてコドモトカゲニンゲンの高さに合わせた。
そこから刃物を通し皮を引っ張ると毛皮がビビビッと剥がれはじめる。
血抜きはある程度できていたのだろうがそれでも血は出るものでわずかに血が顔に飛んでくるのを感じる。
生暖かい液体が頬にピチャリと当たるのがわかる。
「あっ、あっ!! あああ~~~」
キモい。叫びたい。つか叫んでる
けど刃物をもったコドモトカゲニンゲンの手元が狂ったら俺に刃物が刺さりかねない。
「おとっ、おとっ!! おとうとぉ~!!」
弟に助けを求めるもののなんか色彩を失った瞳孔でこちらをぼんやりと眺めている。
テメ―レイプされたのかってな具合だった。
30過ぎのおじさんはビチャリビチャリと血が飛んでくる中、発狂も出来ずに、食肉に加工されていくウサギを持つことしかできない。
「あっ、あっ。クソガ‥‥‥おじょうちゃん。もうちょい?」
ビビビッと下に皮が剥けていくのを感じながらコドモトカゲニンゲンに問う。
「んんっ。もうすこし!」
コドモトカゲニンゲンは皮を下に引っ張りながらどんな表情をしているのだろうか?
「ねえっ、クソガキ。もうちょい!?」
無言で皮を引っ張るコドモトカゲニンゲン。
「おいっ!! クソガキッ!」
こんな食肉加工はいつまで続くのでしょうか?
そんで無言のコドモトカゲニンゲンにひたすら語りかけるもののあらかた無視されながらも作業は続く。
レイプ目の弟はひたすら魂ここに在らずとぼんやりこっちを見てる。
ようやくずるずるっとキレイにとまではいかないがそれでもスムーズに毛皮が剥がれた。
「すっげ」
俺も弟もただただびっくりするしかできない。
そんな俺達の視線を受けてコドモトカゲニンゲンとしてはオレまたなにかやっちゃいました? と言わんばかりに困惑している。
なんか異世界に来て、俺達の知識である現代科学無双を逆に目の前でやられたような気分。
そうして、ある程度血に汚れながらも、地面を血で汚しつつも、一時間くらいでウサギが見慣れた食肉になったのだった。




