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5 肉を食べるはなし

「ねえ兄ちゃん、この前草ばっかりでもう飽きた。たまには肉が食べたい。とか言ってなかった?」


 弟がいつだったかのどんな流れだったかも覚えていないいつかの他愛のない会話のワンシーンを切り取って投げかけてきた。。


「ぐっ‥‥‥言ったような‥‥‥気がする。たぶん」


 どの場面で、とかではない。

 結構色々な食事の場面でぼやいていた気がする。

 なんつったったて異世界で俺達が訪れた場所というのはどうにも貧村が多く、食事というものにあまり味付けという概念が見当たらないような村も割と多かった。

 ぶっちゃけ、薄味ばっかりだった。

 もう胃もたれとかしてもいいから背油に溺れるような濃厚スープのラーメンとか食べたい。


「言ったよね。じゃあコレ、はい」


 言質を取ったとばかりに俺に刃物を渡してきた。

 どっかで悪徳領主からぶんどったそれなりの業物である。メイドインジャパン包丁のようにスパッと切れるというよりかは重さで押し切るといった刃物だ。

 切れ味も恐らくそれなりであろう。


「うぐ‥‥‥ぎぎぎ」


 受け取りたくねえ。受け取ったら、受け取ってしまったら目の前で絶命している巨大なウサギのようなものを捌かなくてはいけないのだ。

 巨大なウサギ、のようなもの。

 巨大と言ったが、大きさはおおよそ俺達が知ってるようなかわいいものではなく大型犬よりもうちょい大きいくらいと言ったところ。

 習性としては夜行性で群行動が基本。

 あとたぶん雑食性。そこらへんに自生している植物なんかも食むが、どうやら人肉も食むようだった。

 人肉を食むようだと思い至った理由としては、実体験として俺達が襲われたからだ。

 いつもは無益な殺生を好まない弟ではあったがコドモトカゲニンゲンが襲われそうになった瞬間、顔を鬼のようにこわばらせてつい殺めてしまったようである。

 別につえーんだし、その力にちょっとくらい溺れてしまってもいいと思うのだが、弟が求める強さというのはそういうものではないようでなんだかめんどくさそうだなと感じた。

 そんで、この殺めた巨大ウサギを見てふと、これ、食えるんじゃね?とか言ってしまったのが事の始まり。

 たぶん食える。俺はもちろん、弟もそう考えているに違いない。

 いつかの夜盗は金貰ってもイヤだった。

 人喰いはヒトがヒトである以上最後まで超えてはいけない一戦であるというのは俺と弟の共通認識だ。

 いつかのでけぇ犬は抵抗があった。

 羊頭狗肉という四文字熟語が示すように犬には失礼であるがどうにも肉としてのランクが底辺なイメージがあったのだ。

 なんか固そうだし。

 そしてウサギである。

 大きさはともかく姿形は俺達が知っているウサギに相違ない。

 なら食えるだろう。だがしかしここで問題がある。


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