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第七話 拾われた思い出に浸る下僕

地面にすわって畑の花たちを眺めながら、風の感覚を、土の感覚を、日差しや音を感じ取り自然の感覚をまんきつしていた。

そうしていると小鳥たちや小さな生き物たちがあつまってきて暖かい気分になる。


何も考えないでいたら動物たちがいなくなってしまって、なんでだろう?と寂しくなったら、そこにプッケはあらわれた。

二人で暑いからと水遊びをしていたら、いつのまにか畑の土とまぜたりして泥遊びになっていた。

プッケが服が汚れるからとはだかになったから僕もはだかになった。これなら執事服を汚す心配がない!

「ゲボクはどこでシュジンと出会ったの?」

 突然プッケは思い出したように聞いてきた。

その可愛いめが聞きたい、聞きたい、といっているようだ。動物たちとおなじくらいに可愛い。

 んふふ、思いだしただけで嬉しくなる。大事な大事な出来事だからすごく大事なことだからよくおぼえている。

「別に聞きたくないけど、母ちゃんと父ちゃんのナレソメを思い出したから聞いてみただけだ」

ちょっと後ろにさがって嫌そうにプッケは言ったけど、何かいやなことでも思い出したのかな?

僕はきっと今顔いっぱいの笑顔をだしているんだと思う。それくらいに幸せな出来事だから。

「主人とはじめてあったのは、この世界におりてきたときなんだよ。僕たちは誰にもしられないようにおりてくるんだけど、主人は感じた、といっていた。僕がおりてくるところに待っていたんだ」

神の世界からあらゆる種族が住む世界におりて人間たちの手助けをするために僕たちは作られた。

作られた僕たちは適当に世界におとされる。

そして人の病や怪我を治して祈りをあつめるのだ。

それが力となって僕たちを成長させてるものとなる。

「僕はこの世界におりてきて初めてみたのが主人だったの。すっごく綺麗でまるでまわりがきらきらひかっているみたいで、もうね、主人しか目に入らなかった」

なんかプッケが目を細めてため息ついてる。

「そういえばゲボクは頭がかわいそうなひとだったな」

「うん、僕はきっとそこで頭がおかしくなったのかもしれにない。本当に主人しかみえなかったんだもの」

美しい、ということばだけではセーリア様をあらわすことなんかできない。でも僕は「美しい人」だとかきこまれた。

僕のすべてに主人をかきこまれた。ただセーリア様のそばに。

あの夜にむかえてくれた主人は今と変わらずうつくしくて静かに、そこにいるだけでいきものを従えるものがある。

そっと触られた頭とかおもいだせる。

胸も触られた、滑るように羽をあてたみたいに柔らかくだけど、そこがこのごろいたむ。

「そういえば、あのときも僕、はだかだったんだよ。それでね、主人が執事服をたくさん作ってくれたの」

いたむ胸をなでてはだかだったことを思い出した。

泥で遊んでいたから、手も胸もつちいろになってプッケはもっといっぱいどろだらけになっている。

「・・・ふ~ん」

僕の話をきいていないみたいだ、プッケは一生懸命になってどろで何かをつくっている。

聞いてきたのはプッケなのに。

「何つくってるの?」

その小さな手で泥を集めて形をととのえているけど、なにをつくっているのか僕にはわからない。

「これはな、伝説の杖だ」

「でんせつのつえ?」

それってなに?その棒みたいなのでなにができるの?

驚いたように振り向いたプッケだけど、一人でうんうん、うなずいてる。

「ゲボクは知らないんだな、とくべつにおしえてやる。母ちゃんから聞いたお話で伝説なんだ」

にこにこ笑ってお話をしてくれるみたいだ。

「これは神様と魔王に勝った勇者の武器なんだ!これは杖にみえるけど下が剣になってて、杖としても剣としても使えるすげぇー武器なんだ!!勇者は剣も魔法も使える凄い人間だったんだって、おれも強くなって勇者みたいになる」

「おとくな武器なんだっ、でもプッケ危ないとしないでね。怪我したら痛いよ」

ころんだときみたいな小さなけがじゃなくて大きな怪我をしたら人間の力じゃ完全になおすことはできないんだから。

なおらないと死ぬことだってある。人間は僕たち天使と違って繊細な体をしているのだから。

「へんっわかってる!」

落ちていた木の枝をひろって、たたかいのまねごとをするプッケをみながら僕は主人に頂いた生まれてからの時間をゆっくりとおもいだした。


世界におとされたその瞬間に主人に出会い、そのまま連れられて屋敷に来た。

服を作ってくれ時間を図るための懐中時計をいただき、主人とともにいる時間にお世話をすることに幸福を感じる。

自然を感じるよりも動物たちと戯れるよりも薄暗い屋敷の中で主人の食事を見守ることのほうが幸せなのだ。

美しい美しい主人、セーリア様、僕の全てを奪ってほしい。

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