第三話 いわゆる能力発見?
ずいぶん間が空いてしまいました。待っていてくださった方すいません。
これは呪いではないかと本気で思った。
見知らぬ世界に一人トリップ。テンプレよろしく期待したスキルは役に立たない一方通行翻訳。
その上変態精霊に憑かれスキルアップしたこれまた難解なでたらめ翻訳。
俺は神様に嫌われてんのか?
俺は無情にも空を仰ぎたくなった
パチパチと火の粉が舞う音がする
あの変態が憑くという多大なるショックによって気を失ったようだ。
目を細めてゆっくり開くと木々の間から満点の星空と地球じゃあり得ない赤と青の二つの月がはっきり見えた。
辺りを見渡すとアシルが焚き火の傍で剣の手入れをしているようだ。近くにあの変態はいないことが何よりの僥倖だろう。っていうか居たらマジで殴り倒す
アシルはまだ俺が目を覚ましたことに気が付いていない様子だ。
(声をかけた方がいいのかな?)
声をかけたいがかけれないチキンな俺は緊張しすぎてあの呪いをすっかり忘れていた
「…何をしてるでござるか?」(何してるの?)
…あ…忘れてたー!!!
そうだ、セリフが短いと武士語になるんだった!
口に出した瞬間呪いを思い出して頭を抱え込みその様子に気がついたアシルは心配げに近寄ってきた
「カズキ大丈夫か?どこか痛いのか?あの後倒れて一向に目を覚まさない上、酷くうなされていたから心配したんだぞ」
目を覚まさなかったのは現実逃避でうなされてたのは100%あの変態のせいです。
「大丈夫だ」(大丈夫だよ。全部あの変態が悪いせいだけど、どこも痛くはないから)
…後半のセリフは全部消去~…
やっぱり呪いだ…
「あの変態はどうした?」
とりあえずあの変態の行方を聞く。見たところあいつの姿が見当たらないからな
「変態…あぁプーラか。カズキが倒れた後に≪じゃぁ終わったからバイバイ~♪≫といって消えてしまったぞ」
「…あの、変態が…」
迷惑行為をしたらそのまま放置に加えとんずらか。あの野郎…。今度会ったら絶対殴る!
「まぁ気にするな。これでようやく会話出来るんだよかったじゃないか」
半分くらい省略されるけどね。でもここはカッコよく返そう!
「そうでござるな」
台無しだ…
目を覚ましたところ悪いが聞いておきたいことがあるんだがいいか?」
俺は返事の代わりに頷く。
「なぜ『沈黙の森』になんかいたんだ?君は皇国の出身なのだろう?この森は大陸の南西の端だ北東にある皇国とは距離がある。なにか事情でもあるのか?」
「…記憶がない」
「ない?もしや記憶喪失か、何かか?」
本当は異世界から来たんですとは言えないので此処は王道の記憶喪失にしておこう。そうすれば基本情報を教えてくれるはず!
「…」
「本当に何も覚えていのか?」
「あぁ」
「なにか覚えていることは?」
「名前以外何も。此処がどこかも分からない」
「…マギルのことも分かっていなのだろう?ということは基本常識もあやふやなのか」
基本常識どころかこの世界についてのことは全部知りません。言えないけど…
「……仕方ない私に教えられる範囲なら教えよう。これも何かの縁だ」
「かたじけない」
其処は普通に「ありがとう」が良かった…これもそれもあの変態の(略)…
森の中を歩きながら基本情報(常識)をアシルから教えてもらっている。記憶力はそれほど良くないが常識らしいので必死に頭のメモ帳に書き込んでゆく。
「まずは現在地だ。ここはさっき言ったように大陸の南西にある『沈黙の森』だ。四つの国の国境ほぼ中央に位置している。この森は強い魔素だまりで魔物が多い。特別な用がない限りは誰も立ち入らないんだ。」
「で、私たちがこれから向かうのがこの森を北に抜けた先にあるシードと呼ばれる街だ」
「シード?」
「古代語で“旅人”と言う意味を持つ。この街の近くに古代都市の遺跡群が立ち並んでいてかつてはその古代都市に集まる冒険者や考古学者たちなんかでにぎわっていたらしいからその名残だろう。もっとも今ではある事故が起きて以来遺跡に訪れる者も皆無だ。そんなわけでシードに訪れる者も少なくなっていった」
「つまり?」
「だから君のその“容姿”でも十分隠せられるんだ」
「…?」
容姿?何のこっちゃ??俺の容姿なんてどこにでもいる黒目黒髪の平均的な日本人だぜ?フツメンだけど黙っていたら基本はいいなんて昔から言われてるけど…ってこの情報今関係ない。
「はぁ…それも忘れてしまったのか?」
「まぁいい。つまりはね君の黒髪は迫害の対象なのさ」
「!」
はい!?黒髪だけで迫害!!なにそれコワイ
「人の中に稀に生まれる黒い髪を持つ者は『魔人』、マギルと呼ばれていて人よりも魔力が極端に高い。だから人より亜人に近い」
「亜人に近いのがなぜ悪い?」
「昔から分かっていることさ。人間は自分たちとは違うもの対して嫌悪感を抱く。人間と亜人は昔から敵同士なのさ」
アシルは苦虫を噛んだような顔をして話す。もしかしたらこの話題を話すのは嫌なのかもしれない。はっきり言って俺も迫害とか差別の話を進んで聞こうとは思わないからな、この場合は仕方ないが
「君は?」
「私は人間だよ。でも冒険者だからさまざまな場所に行くその過程で亜人に出会うことも少なくない。何より私は皇国に近い国の出身だからね。昔から亜人に対して偏見は持っていなかった」
「皇国?」
さっきからよく聞くし『皇国』ってなんだ?もしかして黒髪や亜人と関係あるのか?
「皇国は東北のスヴェア半島にある国さ。名前は『スヴェア皇国』亜人と神の国」
「神?」
「人間側は邪神と呼んでいるけどね。皇国の統治者は王ではなく神だ。亜人たちを生みだした亜人の神…」
壮大だなぁ。日本の皇室も元をたどれば神の末裔だけど此処では本当の神様なんだ。ん?亜人のってことは人間の方の神様とは別なのか?
「人間は違うのか?」
「人間側は創造神であるサムセヴァ神を信仰している。だからそれ以外の神は皆邪神。その最たるものが亜人を生みだしたスヴェア神なんだ」
まるで一神教と多神教の対立みたいで妙に嫌な雰囲気になった。その話題を最後にアシルと俺は無言で暫く森の中を突き進むことになる。
無言のまま森を歩いてふとアシルが振り返り俺に聞いてきた
「それはそうとカズキ。君は武器は持ってないのか?」
「…」
身振り手振りで何も持ってない表示を示すとアシルは呆れたようにため息を吐いた。
「…はぁ、持ってないんだな。こんな魔物が闊歩する森で良く生きていられたな」
うん。出逢った当初にすでに襲われてるけどね。君が倒したおかげで生きてます!ありがとう!!
「このままでは身も護れないだろう。仕方ないから私のナイフをあげよう。もちろん扱い方は分かるな?」
「…いや、まったく」
「知らないのか…」
ふふふ…現代人をなめんなよ。平和を謳歌していたんだ身を守る武術なんて有ってないようなもんなのさ。ちなみに俺は運動が嫌いだったから基本体育の授業はさぼっていて柔道とか剣道とかの基本動作すらしらんのさ!自慢にならんけど…
「こうなったら短時間でナイフの扱いに慣れてもらう」
「そうしないと死ぬからな」
すごんだ顔で言いきったアシルの顔ははっきり言って…忘れられません。
「…才能がまったくないな」
「……」
あれから数十分後、ひたすらアシルに手とり足とりナイフで攻防をして、詳しくは語るに語れないことがありましてまぁ自滅に近い感じで只今地面とこんにちわしてます。
そんな俺を見下ろしてアシルが難しそうな顔で最悪の言葉を宣告する。…ごめん。
ため息を一通り吐いた後アシルは話題を変えてきた。
「時間をかければ何とか様になる程度だが時間はないし…しかたない魔力適性をしよう」
「魔力適性?」
聞きなれない単語を聞いてつい聞き返す。
「カズキはマギルだから魔力は問題ないだろう。属性も…どうやら君は『水』のようだ」
「なぜわかる?」
「瞳の色だよ。属性は瞳の色で別れる。6属性で『火』なら赤、『風』が緑『土』が橙『闇』が紫『光』が黄そして『水』が青だ。君の瞳は深い藍色だから『水』の上位『流』だ」
「上位もあるのか」
「まぁね。長くなるから詳しい話は後にしよう。で魔力適性と言うのはどの分野に適性を持っているというもの。どの属性にも攻撃、防御、探知、治癒、付加の5つの能力がある。もちろん属性によってどれかに特化しているのもある。たとえば火なら攻撃、土なら防御、風なら探知ってな具合にね。君の属性である水は光についで治癒能力に特化しているんだ。特化していると言ってもさっきいたように5つの能力は持っている。その中で何が自分に向いているかを今から調べるんだよ。それによって今後の戦闘の作戦なんかにも応用が利く」
なかなか興味深い話だ。俺はわくわくしながら話を促した。
「どうやるんだ?」
「両掌を上に向けて私の手の平に触れるか触れないかの距離を保ちながらイメージするんだ。イメージするのは自分の属性のイメージ。君なら『水』だ」
「…」
水、水ねぇ…。イメージだと滝から流れる流水みたいなもんかな?それか蛇口をひねって流れる水道水。前半はともかく後半はまったくファンタジーに似合わなさすぎる。此処は魔法のイメージだ、より自然らしいファンタジックなもんがいいだろう。
自己判断の上偏見をもってイメージを開始する。魔力適性かぁ、どうせなら派手なのがいいよな、水は治癒に特化してるって言ってたしどうせなら攻撃がいいな。
掌に魔力?みたいなもんを集める感じで『水』のイメージ…
「!、おぉ!!やはり魔力適性が高い。…君の適性は」
「(ごっく…)」
「付加だな」
「は?」
付加だと…言葉だけじゃよくわからない上に一番地味そうなやつが俺の適性…神は俺を見放したのかぁあああ!!!…まぁ、それはあの変態の時に知ってるけどネ。神は俺が嫌いなんだって!!!
「付加?」
「言葉だけじゃ伝わりづらかったかな。つまりは武器や防具何かに魔法を付加し防御力や攻撃力を上げるんだ。基本はそんなところだが一つだけ付加には特殊な方法があってな。これは付加に特化した者でなければ発生出来ないらしいのだが」
なるほど付加魔法って言葉通りの意味だったんだな。ゲームで言うエンチャントみたいなもんか。後半の特殊能力が気になってそのままアシルの言葉を待つ。
「精霊魔法とは別に『召喚魔法』が使えるんだ」
「召喚魔法?何かを呼びだすのか?」
「少し違う。便宜上召喚魔法と呼んでいるが実際には『意思を生みだす魔法』に近い」
「意思を生みだす…?」
「詳しくは分からないがたとえばこの辺の石や枝、葉等に意思を与えそれを服従する魔法らしい」
え?それってゴーレムみたいなもんかな。ちょっと期待大。
「上位の者になると程生物と言って過言ではないほど生命活動も出来るらしい下位の者でも十分な意思を生むことは可能らしい。その能力のおかげで攻撃や防御が特化のものと変色ないほど攻防の幅が広がるんだ。それに付加の特化者は五つの能力中最も数が少ないから貴重だ」
いわゆるチートみたいなもんかな。地味っていってごめん!!これでもかってぐらいチート能力ありがとう!
久しぶりに運が回ってきたかも。
そのあとアシルに聞けるだけの詠唱なんかも教えてもらいつつ森の中をひた歩く。
この後起こる出来事など想像すらすることもなく暢気に魔法を使える喜びに胸躍っていた。




