あの日、前日
ん〜〜、そうだな。"あの日"を語るにはまず、その前日から話した方がいいかもな。
その日は、なんの変哲も無い日だった。
「お兄ちゃん、起きろ〜!」
いつものように翔太に布団を剥ぎ取られ起こされる。
「おはよう、翔太。」
いつものように翔太に挨拶をする。
「お兄ちゃん、早くリビングに来て。朝ご飯だよ。」
そう言われ、着替えてリビングに向かう。
リビングに入ると、いつもの朝メシの匂いがする。食欲がそそられる匂いだ。
親は共働きで、しかも朝が早い。もう既に親父もお袋も出勤したのか見当たらない。これもいつもの事だ。
「頂きます。」
オレは手を合わせてそう呟く。
そして、ご飯に手を伸ばす。ウチは基本的に朝は和食だ。親が忙しい月初めや、月末は簡単にパンで済ますこともあるが。
「ご馳走様でした。」
この時もしっかりと手を合わせる。よく覚えていないが、親によく「命には感謝しろ」と教えられいてた気がする。全くもってその通りだ。
ふと、時計を見る。8時に近い。そろそろ出ないと遅刻するので翔太に声を掛ける。
「翔太〜!そろそろ行くぞ!」
ドタ、ドタ、ドタ、と。
翔太は朝メシを食べてから制服に着替えているのか慌てて階段を駆け下りる音がする。
「用意出来ました!たいちょう!」
敬礼をしてこちらを向く。
オレもそのノリに乗ってやることにした。
「うむ。では行くとしようか。」
玄関の扉を開ける。
オレと翔太は誰もいない家に向かって言う。
「「行ってきます。」」
これも、ずっと前から習慣付いている。
挨拶を大事にする教訓でもあるのだろうか。
さて、まずは翔太の学校に向かうか。
「お兄ちゃん、そろそろお母さんとお父さんとも仲良くしないとダメだぞ!」
「そうなんだけどなぁ、お兄ちゃんの歳になってくると色々あるんだよ。」
「お兄ちゃんはいっつもそう言う。」
今から思えば、翔太の言うことは正しかったと素直に認められる。あの頃は変な意地を張っていたものだ。
信号に引っかかる。その信号待ちに翔太と話す。
「今日帰ったら、ゲーム買いに行こ!新発売のがあるんだ!しんはつばい!」
「へぇ、どんなゲームなんだ?」
「あのね、ゾンビ出てくるやつ!」
「まさか、翔太お前…バイオ◯ザードなんて、まだ早い。出直して来い。」
「え〜、なんでさ?友達み〜んなやってるよ?」
あれ?翔太まだ7歳だよね?って事は当然友達も7歳だよね?なんでバイオ◯ザードやってるの?
「ウチはウチ。他所は他所。」
「あ、お兄ちゃん怖いんだ?」
「こ、こ、こ、こ、怖くなんかねーし?余裕だし?目瞑ってても出来るし?むしろ目瞑ってやりたいし?」
「つまりそれって、怖いって事だよね?」
「と、とにかくダメなもんはダメだ。スマ◯ラにしとけ。それなら買ってやる。」
「分かったよ…ス◯ブラで我慢するよ。」
我慢ってなんだよ、我慢って。
可愛くない弟だな。
信号が青に変わる。
"あの日"の前日の記憶はここで途絶えた。
目が覚めたら、オレはオレの部屋のベッドで横になっていた。
それが"あの日"の始まりだった。
過去編です。
しばらく続く予定であります。
重い話になる予定であります。




