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僕は脇役がいいっ!  作者: 至木三芭
第一話"脇役の受難"
8/8

エピローグ

これにて一話目は終わりになります。

書いてておもったけど、ヒロインがホントに重いです(笑)

でもこういう子は(二次元なら)とても可愛いなぁなんて思います。

……では、始まります。

「相席大丈夫?」



「大丈夫だよ」



あの対決から三日後。僕の周りは平穏を取り戻していた。岩田には犯人には竹本の協力付きでお引き取り願ったことにして、杏奈さんにも同じことを言っておいた。



「あれ、奏多くんお弁当なの?」



「そ。気が向くと母さんが作ってくれるんだよ」



おそらく、誰もが僕が今こうしてその犯人とご飯を食べてるとは考えもしないだろう。

僕自身あんな結末を迎えるとは思わなかったし。



「今度私が作ってこよっか? 私お弁当たまに自作するし。ちなみにこれ」



「え、いいの?」



「むしろそんなノータイムで返しちゃっていいの? 私これでも結構ドキドキしながら言ったんだけど」



「だってその分昼代浮くし」



「そんなことだろうと思ったよ……はぁ、前途は多難だなぁ」



「マイナススタートだって言ったでしょ。……まぁ、冗談だよ。竹本に悪いし」



「ダメー。私のお弁当のついでくらいでちょっとおかず持ってくるから食べてね。

お弁当全部はちょっと重いからさすがにね」



いや、もうすでにキミの好意は充分重いよね。あれの翌日からもうお昼ずっと一緒に食べてるし。

所々こういう妙な攻めを見せてくるのは苦笑いを浮かべずにはいられない。引き際を心得てるのかしっかり引くときは引くので迷惑でもないから厄介だ。

更に言えば前より感情的だったり無表情だったりと忙しい。竹本曰く、どれが本当に素だかわからないからその時その時で出したい感情を出してるらしい。



「ねぇ竹本」



「だから凪って呼んでって言ってるのに」



「呼ばせてみせるように頑張って。じゃなくて、友達のとこは行かなくていいの?」



「いいの。……奏多くんは迷惑?」



「いや、別に大丈夫だよ。まぁ、凄いとは思うけど」



「私の本気度をきっちりわかってもらわないとだからね。それに、自分の素の感情を人にぶつけるのって初めてだから楽しいの」



「……キミも相当に面倒な人だよね」



「奏多くんに言われたくはないよっ!」



「失敬な。僕は普通だよ」



「私だってそうだから!」



恋愛ごとは面倒だし、竹本のこれも一過性の物だと思ってる。

けどまぁ、演技派の彼女が素で話すなんていうある種の更正に付き合ってると思えば多少はいいかとも思う。



「ま、僕が負けるイメージはないけどね」



それでも自分が誰かと恋愛してるイメージはない。

竹本もやはり友人で、それ以上にはなってない。ここからどうなるかは、自分でもわからない。

できれば面倒は嫌だけど、勝負は勝負として楽しむようにだけしておこう。



―――――



「私、お手洗い寄ってくから先に行ってて」



「ん、じゃあまた後で」



教室へ歩いて行く奏多くんを見送って、私はひとまず息を吐いた。

とりあえず、奏多くんは私をまだ友人として見てくれてる。そのことに心からホッとした。自分がどれだけ非常識なことをしたかわかってるつもりだし、避けられても仕方ないと思ってた。だから奏多くんが私の勝負に乗ってくれて、泣いちゃったんだと思う。



「奏多くん」



また彼に見つけられて、カミングアウトしてから想いは更に募る一方で自分でもびっくりする。

でももう焦っちゃいけない。ゆっくり確実に、奏多くんに私って存在を覚えていってもらう。卒業式までまだまだたくさん時間があるから、頑張らないと。



「あら、えっと……竹本凪さん?」



「え?」



不意に前から声がかかってそっちに顔を向けると優奈ちゃんのお姉さん……三浦先輩がいた。

ぺこりとお辞儀をしていつも通り、後輩らしい仮面を装着する。



「こんにちは、三浦先輩」



「こんにちは。聞いたわよ、奏多のストーカー事件、解決に手伝ってくれたんだってね。ありがとう」



「いえ……」



三浦先輩は、雰囲気が苦手だ。初めて会ったときもそうだけどどこか近寄りがたい。活発的な美人の優奈ちゃんと違って高嶺の花な雰囲気があるせいかもしれない。あと、なんか見下されてる感じが嫌なのと、奏多くんとの距離が私の知る中で筒井くんよりも近く見えることもかな。



「けど意外な終わりを迎えたわね。あの奏多が犯人と今でも仲良くしてるなんて。あの子はやっぱり普通の子っていうか、詰めが甘いと言うか」



「っ! どういう、ことですか?」



「言っていいの? あの手紙の犯人、あなたでしょ?

もちろん、奏多からは聞いてないわよ」



――仮面が一瞬で崩れた。にこにこと笑顔のまま、三浦先輩は私を見つめた。敵意とかは感じられない。けど、何故かとても怖い。



「直感と言うかね、同族の雰囲気と言うか。初対面の時に感じたのよ。

この子、私と同じで、私の障害になるって」



あなたも思わなかった? なんて言われて、私は何も返せなかった。正直、その通りだった。奏多くんに近い先輩に、私はとても嫉妬した。

でも、それじゃあつまり――



「先輩も、奏多くんが好きなんですね」



「そんな二文字じゃ足りないわよ。私がこの人生において一番最後に手に入れるべきものよ。奏多は」



「彼はものなんかじゃありませんよ」



「当たり前でしょう。でも抱く感情は同じよね。あなたも私も、同じ相手に同じような気持ちを持っている。

びっくりしたわ、私以外に奏多の本質に近づける人間がいたなんて。なんであなたは筒井に行かないの?」



「私と筒井くんはそこまで接点ありませんし、私のことは、奏多くんじゃないと見つけられませんでしたから」



明確になった。三浦先輩は、私と同じで、つまりそれは私の敵。奏多くんと結ばれる為にはこの壁を越えなきゃいけない。とても、とても大きな壁。



「ふぅん。まぁ、あんな寒々しい手紙書けるくらいだし、よっぽど本気なのはわかるけど、果たしてどうかしらね」



「どう、とは?」



「あなたの感情が一過性の物だと思ってるのよ。奏多にも言われなかった?」



――ああ、そのことか。なるほど、この人はやっぱり奏多くんに今一番近い人なんだ。



「ふふっ、言われましたよ。でも知ってます? 期待してなかったものに期待していた以上のものがもらえるととても嬉しいんです。奏多くんだってそれはきっと同じはず」



私が、まさか奏多くんに自分の仮面を見破られるなんて思わなくて、しかもその私をちゃんと友人として扱ってくれたことは、ずっと忘れない。こんな気持ち悪いことをして、それでも私と話してくれることも。

それに――



「――先輩もそんなこと言ってるのなら、知らぬ間に私と奏多くんがとっても仲良くなってても怒らないでくださいね。私だって彼がコロッケパンが好きなの知ってるんですから」



これは宣戦布告だ。三浦先輩は学校で一番凄い人だけど、そんなの関係ない。

私は奏多くんのことをたくさん知って、最後はその隣を陣取る。そして、その場所は筒井くんにも先輩にも渡さない!



「……はは、あははははっ! 凄いねあなた。今私に喧嘩を売ったってことでしょ?

いやぁ、奏多絡みは本当に面白いことが多いわね。まさか年下の子に真正面から喧嘩を売られるなんて思ってもみなかった。いいわ、気に入ったわ竹本さん。あなたのことを少しは認めます。なるほど、ストーカーとか似合いそうね確かに」



結構な大声で笑って、わざとらしく涙を拭うような仕草で私を見つめる三浦先輩。見下されてる感じがいつの間にかなくなってて、でもその笑顔はどこか不敵に見えた。



「それは先輩もじゃないんですか?」



「私のあの子のストーカー歴はあなたの何倍あると思ってるの?

言ったでしょ、私と同じだって」



「なら、手紙を書けた分だけ私がリードですね」



「甘いわね。彼のお見合い結婚の相手になってしまうために外堀を埋め始めてるわよ、私は」



……なんだって? ずるい! そんなの幼なじみじゃないと無理な方法じゃない!



「その悔しそうな顔が見たかったのよ。いいわね、張り合う相手がいないつまらない学校生活だったけど面白いのが出てきてくれたわ。あなたは私の敵よ。真正面から潰してあげるから」



「私だって負けません。余裕ぶってて私に奏多くんの隣を奪われても知りませんからね」



にこりと。作ったような笑顔をお互いに浮かべて対面する。

負けない。この人には絶対負けたくない。私が奏多くんと添い遂げるんだからっ!



――――続く。

エピローグおしまい。次から二話目になります。

最後にもう一人のヒロインを明かして終了となりました。杏奈さん、凪に負けず劣らずの重ヒロイン予定です。

ただ先に宣言しますがこの作品はあくまでラブコメですので、これからの展開で誰かが病んだり刃物持ち出したり流血沙汰になったりなどの展開はありません。彼女らはあくまで重くストーカー気質なだけで病んではいませんので。


二話目以降から空気と化してた修や優奈達の修ラバーズも本筋に絡ませて行こうと思いますのでよろしくお願いします。

ではでは、ありがとうございました。

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