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不良少年とハンカチ

『モモイロスクールライフ』は桜花が高校一年生の入学式から物語は始まる。

桜花が二年生になると後輩の攻略対象、篠崎(しのざき)(かなで)が桜花の通っている高校に入学してくるということは、今の彼は私と同級生。しかも運悪く同じクラスの隣の席ということで…。


私の『早乙女雲雀』としての人生が始まって一週間が経ちましたが、隣の席の人は今までずっとお休みしていたので、決して私が間抜けで隣の席に彼がいたのを気がついていなかったわけではない。


「おい。このハンカチお前の姉に返しておいてくれ」


彼、篠崎奏は頭が良くクラシック音楽を愛する不良だ。そう、不良。不良がクラシック?と思うだろう。だが、彼は心の底からクラシック音楽を愛しているのだ。もうそれはそれは余裕で一日中クラシックのことを語っていられるほどに。今日だって授業中にも関わらずヘッドフォンから音漏れするほど大音量でクラシックらしき音楽を聞いていた。一度は中学生の学習を終わらせたとはいえ、授業中に音楽とはとても迷惑だ。


「おい、早乙女。聞いてんのか?」

「んー?何と無く聞いてた。お姉ちゃんにハンカチ返せだっけ?そんなん自分が借りたんだから自分で返しなさい」

「借りたんじゃねえ!無理やり渡されたんだ!」


篠崎君の話を聞くと、高校の先輩達に呼ばれ態度がでかいからという理由でいろいろと文句を言われた。そして、面倒になった彼は1人の先輩を殴ってしまってそこから乱闘。三対一で負けていたが生徒会達が止めにきて丁度そこに居合わせたお姉ちゃんが手当をしたときに、ハンカチを水で濡らして冷やすようにと渡されたらしい。


「まあ、お姉ちゃん世話好きだからね。でも、いらなかったらその時にハンカチを押し返せばいい話だよね?」

「ぐっ…」


自分が借りたものは自分で返さないといけない。このこともあるが、はっきり言って面倒くさいから断っただけ。同じ家に住んでいるけどきっと家に帰ったらハンカチのことなど忘れている。


「放課後ならどうせお姉ちゃん生徒会室にいるだろうし、ついていってあげるわよ」

「は?生徒会室なんか行きたくねーし」


苦虫を噛み潰したような顔をした。どうやら彼には生徒会室は嫌な思い出しかないようだ。


「じゃあ、一生ハンカチ返すチャンスないかもね。お姉ちゃんの周りにはいつも沢山の男子がいて壁ができてるから生徒会室以外返すチャンスないけどいいのね」

「…行けばいいんだろ。行けば」


はあ、とため息をつき篠崎君は机にうつ伏せになって寝始めた。









最後の授業が終わり、放課後になった。はっきり言って私は物凄く生徒会室に行きたくない。私は気づいてしまったのだ。生徒会室に行ったら生徒会役員がいる=攻略対象がうじゃうじゃいる。絶対に何らかのフラグが立つ。篠崎君には悪いが仮病を使わせてもらおう。


「早乙女。行くぞ」

「いたたた…!急にお腹が痛くなってきた!これは帰らないと!」

「仮病はいいからさっさと行く」


篠崎君に腕を掴まれ引きずられるように高校の生徒会室へと連れてかれる。途中で廊下にいた生徒達が「あの子、早乙女桜花先輩の妹よね?」「何で篠崎に連れてかれてるの?」「篠崎君にぶつかって持っていたお茶を彼の服にこぼしちゃったとか!?」きゃー!こわーい!と女子が全然怖くなさそうに言う。勿論、私が篠崎君にお茶をこぼしたなんてことはないし、その証拠に彼の制服はまったくお茶で濡れてはいない。


「篠崎君。ちゃんと行くから離してください」

「ああ、悪い」


彼は手をパッと離した。そして、手を離したが2人並んで生徒会室へ進んで行く。









生徒会室の前に到着した。私は廊下で待っているかと言って、ついていくと行ったが篠崎君1人で無理やり行かせる。彼もここまでついて来てくれたからという感じで渋々という感じだが、1人で行ってくれた。

篠崎君が生徒会室へ入って行って少ししたらすぐに帰ってきた。


「どうだった?」

「誰もいなかった」

「あらそう。残念だったわね」


私は残念ではなく凄く嬉しかったが。これでフラグが立つ確率は減少した。でもまだ油断は出来ない。では、早く帰ろう。くるりと振り返り元来た廊下を少し進むと、見覚えがある人がそこにいた。


「雲雀ちゃん!どうしたのかな?こんなところで」

「げっ…鳳先輩…」


無意識に篠崎君の背中に隠れてしまった。先輩は篠崎君の前に立った。ニコリと篠崎君に微笑んで、男2人は見つめあっている。いや、少なくとも篠崎君は睨んでいると言った方が正しいだろう。私があのーと言った瞬間鳳先輩が「君は雲雀ちゃんとどういう関係なのかな?」と。あっけにとられる私と冷静に「同じクラスの隣の席なだけでただの知り合いだ」と、なんの動揺もなく返事をした。

何だろう。この空気。とにかく話の流れを変えないと。


「お…鳳先輩。お姉ちゃんっていつ頃ここに来ますか?」


鳳先輩の視線が私に向かう。すると篠崎君と見つめあっていたときよりもっと笑顔で私に言った。


「桜花なら熱が出て早退したと聞いたよ」


私達の今までは無駄だったということですね。

私が項垂れると先輩が「桜花になにか用だった?」と、


「いえ、用があったのは篠崎君で私は付き添いです。篠崎君。無駄足にしてしまってごめん。ハンカチは私が渡しておくよ」


わかったといって綺麗な兎の刺繍がしてあるハンカチを渡した。用が済んだので私は帰ろうとしたら鳳先輩が私の手を掴んで、待ってと言った。


「今日は生徒会の仕事はないから今からお茶でも行かない?」

「お断りします」



お断りしたはずだが、何故かわからないが誘導されて学校の近所の喫茶店に入ってしまった。勿論、篠崎君も一緒に。何故篠崎君もだって?私が篠崎君の手を掴んで離さなかったからだ。

喫茶店では鳳先輩がなんでメールや電話をしてこないのかと問い詰められた。やっぱり粘着質ですね。篠崎君に助けてという視線を投げかけたら目をそらされ、帰られてしまった。薄情なやつめ!せっかくハンカチを返してあげるというのに。




きっと鳳先輩との何らかのフラグが立ってしまっただろう。



今日は物凄く疲れた一日だった。


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