人懐っこい先輩
家に帰り玄関に入ったら、男物の靴がそこにはあった。お父さんが帰ってきたのだろうか?いいや、そんな予定はなかったはずだ。
靴を良く見たら朝日奈高校男子の指定の靴ではないか。ああ、きっと攻略対象が来ているのだろう。ばれないように自分の部屋に戻ろう。なるべく足音を立てないようにそっとそーっと廊下を進んでいって階段をのぼろうと一段上がったとき、
「あれ?君は…」
見つかってしまったか…。振り返りこんにちはと言う。そこにいたのは赤色の天然パーマの髪、暗い緑色の瞳をした桜花の同級生の有栖川結城だった。生徒会会計をつとめる彼は、犬のように人懐っこいその性格で、学校の中でもけっこうな人気。男子からも女子からも好かれている。その人気は中等部でも同様で、同じクラスの人でも告白している人までいた。
「ああ!おーちゃんの妹の雲雀ちゃんだね!初めまして!僕は有栖川結城だよ」
両手で私の手をつかんで上下にぶんぶん振ってきた。おーちゃんとは多分桜花のことであろう。
「初めまして。雲雀です。勉強しなければいけないので…」
「まってよひーちゃん!」
「ひーちゃん!?」
初対面の人間にあだ名で呼ぶとは…。しかも凄く恥ずかしいあだ名。
「ちょっとだけお話しよ?」
「一応私受験生ですので…」
「僕が勉強見てあげるから!」
有栖川先輩の瞳がうるうるしてきた。私この目には弱いんですけどっ!力ずくでも部屋に逃げようとするが、先輩の力に敵わず仕方なくリビングへと向かった。
リビングでは姉がソファで寝ていた。なんでも、今日はいろいろ忙しく、二人で話している途中で寝てしまったらしい。お客さんが居るときに寝てしまうなんて失礼だが、お姉ちゃんがこの一週間夜中の3時まで起きて何か作業をし睡眠時間が三時間しかないことを知っていた。まあ、今日だけは許してあげようと思う。
「コーヒーか紅茶どっちがいいですか?」
「んー…僕は紅茶かな」
キッチンに立ち紅茶を入れ始める。…先輩がさっきからずっとこちらを見てきている。なにかおかしなところがあるのだろうか。先輩を不審な目で見ると彼は「お姉ちゃんに負けずと可愛いね!」と。「そうですか?」と短く言い放って私はまた作業に戻った。
紅茶を持っていき席に着くと、彼はありがとうと言いへらへらと笑った。しかしまだ私を見つめてくる。
「先輩。さっきから何ですか?」
「いやー。桂馬がね…」
最近、鳳先輩は気持ち悪いほど私の話しかしないということだ。昨日こんなメールを貰った、こないだは雲雀ちゃんから電話をもらったなど。で、今日はその鳳先輩お気に入りの私がどんな子か気になって早乙女家に来たということらしい。はっきり言って鳳先輩怖すぎます。少し距離を置こうか。
「あ!ひーちゃん!勉強するんだったね!数学だけなら完璧に教えられるよ」
数学だけ。そう、数学だけ。彼は数学だけなら定期テストでいつも100点なのだ。しかしその他のテストは平均点かそれ以下。何故数学だけが完璧なのかそれは永遠の謎である。
「じゃあ、お願いします。入試レベルの問題を出していただけるとありがたいです」
「うんうん!じゃあちょっとまってね」
先輩は人に頼られることが好きなようだ。今だって私が渡したノートに試行錯誤で問題を考えてくれている。攻略対象の中で少しでも繋がりをもっていいと思ったのはこの人が初めてだろう。
「できたっ!さあさあ、解いてみて」
私は一応一度は中学生の勉強を終えた身。問題はらくらくと解けた。全部の問題を解き終わると先輩が拍手をして「全問正解だよ!」と言い、私の頭を撫でた。私が髪がぐちゃぐちゃになると言ったらごめんごめんとまったく悪びれる様子もなく言って私の頭をぽんぽんとたたいた。
この後先輩が私と無理やりツーショットを撮って、鳳先輩に『おーちゃんひーちゃんちなう』とその写真を付属して送った。10分もたたないうちに鳳先輩が家にのりこんで来て有栖川先輩を正座させ怒っていた。はやく二人に帰ってほしいと思ったがお姉ちゃんが夜ご飯を食べてきなよといい、その日の夜ご飯は皆でお鍋を食べました。
鳳先輩がよく出てきますが鳳先輩ルートじゃない…はずですw




