先輩は雪と共に
今日は日曜日。朝起きて窓を開けてみたら雪が降っていて雪合戦が出来るくらいには積もっていた。
こんなに寒い日はこたつに入ってテレビを見たり、本を読んだりしていたい。
リビングに行き、急いで暖房とこたつのスイッチを入れてから身支度を整える。そうしていたら鏡夜と桜花が起きてきてこたつに入ってきた。
「雲雀が1番に起きるなんて珍しい事もあるんだな」
「そうよね。何ヶ月ぶりかしら?」
「ちょっとー!二人とも失礼よ!」
頬を膨らましながら怒ると桜花がご褒美に御子柴先輩から貰った茶葉で美味しい紅茶を入れてくれると言った。私は単純なのでそれだけのことで機嫌をなおしてしまう。
鏡夜は鏡夜で昨日鳳先輩から貰ったケーキを三人分冷蔵庫から出してきて、朝からちょっとしたティーパーティーだ。
準備が整い食べようとした時に家のチャイムがなった。こんな朝早くからくるのは彰君だろうか?彰君は暇な休日は早乙女家に朝早く来て朝ご飯も昼ご飯も夜ご飯も私達と一緒に食べ、少し遊んだら帰って行く。
彰君にケーキあげないといけないのかなあ…。ケーキは鳳先輩がホールごとくれたので喧嘩しないようにと少し大きいがお姉ちゃんが六等分に切っていた。
しかたない。私の分のケーキをあげようか。
「はいはい。彰君、朝ご飯なら今日はケーキだけど…って!?なんで御子柴先輩!?」
「おはよう雲雀」
「お…おはようございます先輩」
そこにいたのは彰君ではなく御子柴先輩だった。こんな朝早くに彰君以外の人がくるなんて想定外だ。私が混乱していると御子柴先輩が理由を話してくれた。
ワケを聞いたところ、先輩は朝起きてぽけーっとしていたらお父さんに、御子柴家の跡取りとしての自覚が足りない!と言われ、着替えたり歯をみがいたり顔を洗うなど身支度は出来たものの、コートもなしに家を追い出され携帯も持っていない、朝ご飯も食べていない。せめて寒さだけでもしのげたらと、御子柴家から1番近い早乙女家に来たというワケだ。
「とりあえず中に入ってください!風邪ひきますよ!?」
「もう遅いかも」
そう言って、先輩は盛大にくしゃみをした。
*
「へ〜。御子柴先輩も大変なんですね」
御子柴先輩がうちへ来た事から我が家では急きょ味噌汁とご飯を作る事になった。しかも、先輩は風邪気味ということでいつもより暖房の温度の設定を高くしたり温かいお茶を作ったりと大忙し。私は料理はお姉ちゃんや鏡夜ほど出来ないので御子柴先輩の世話係兼話し相手になっている。いつもは自分の事をあまり語らない先輩が家のことを愚痴っているので正直驚きだ。
「俺より出来のいい弟がいるのに俺は長男だから長男だからって…」
「先輩弟いるんですね〜」
「うん。雲雀の片割れと同じ学校で君たちと同級生だと思うよ」
「同い年なんですね」
ゲームをしていたので御子柴先輩に弟がいることは知っているがあえて知らないふりをする。だって先輩って言葉数少ないから会話がなくなったら困るじゃないですか!?あなたの弟なら嫌と言うほど知ってますよ。攻略対象ではないのに主人公を好きになっちゃって御子柴先輩と御子柴弟と主人公で三角関係になったりして本当あのシーンはすごく萌えました。
「あっ。先輩、朝ご飯が出来たみたいです!」
お姉ちゃんと鏡夜がご飯などを机に運んでくる。皆のところに朝ご飯が行き渡ったところで、いただきますといい食べ始めた。
「そういえば鏡夜!御子柴先輩の弟くんが桜丘で私達と同級生なんだって!知ってる?」
「知ってるもなにも俺の隣の席で結構仲いいぞ。うちにもだいぶ遊びに来てるし」
「うそっ!?知らなかった!なんで教えてくれないの!?」
はい。本当は知ってますよ。御子柴弟なら月に一、二回くらいうちで見ます。御子柴弟がうちに来ていたら鉢合わせにならないように注意しています。
「椿なら『雲雀さん紹介してよ』って会うたび毎回言ってくるぞ。会わせようとすると雲雀いないし、椿が帰ったすぐ後に帰ってくるし…」
こっちもぐだくだと愚痴を言い始めましたよ。御子柴弟の椿君が私を紹介してって言ってるのは知ってたし、タイミング見計らって椿君がうちに来たときは近所のコンビニに行ったりをしていて避けていた。
「そうよ!今度弟さんも連れて来て皆でご飯を食べましょ!」
「いいね。そうしよ」
お姉ちゃんも御子柴先輩もそんな面倒臭いこと勝手に決めないでよっ…!
先輩の弟さんの椿くんの話で盛り上がっていると、ご飯も食べ終わって後片付けなどした後、また四人で話していたらいつの間にか11時を過ぎていた。
お姉ちゃんが昼ご飯も食べていきなよと言うが、そこまで世話にはなれないと言って、もう昼前だし帰ったら親も許してくれるだろうということで先輩は帰ることになって玄関の外まで送ることになった。
玄関を開けるとそこには今インターフォンを鳴らそうとしている男の子の姿があった。
「椿、なんでいる?」
「兄貴のこと迎えに来たんだよ。父さんも母さんも心配してるぞ。あの人達兄貴には甘いよなぁ…」
そういう俺も兄貴には甘いけどなという呟きを私は聞き逃さなかった。
インターフォンを鳴らそうとしている男の子は椿君だった。御子柴先輩と同じ白髪に深い青の目。間違えなく御子柴椿だ。
「えっと…。御子柴先輩の弟さんの椿さんですか?」
「え?あっ!雲雀さん!?そうです!椿です!」
飛び跳ねるようにこちらに近よって来て、私の手をとり、握手をした。
「こんにちは。いつも弟がお世話になっています」
「こちらこそ兄が…」
後ろから鏡夜があいつ猫かぶってるな。いつも以上に気持ち悪いぜといったことは聞き漏らさなかった。悪口はよく聞こえますので。
「なんで俺がここにいるってわかったんだ?」
「だってさー最近兄貴、雲雀さんの話をよくするじゃん?だから早乙女家かなーって?」
ん?今、最近御子柴先輩が私の話をよくするっていいました?心臓に悪い冗談はやめてくださいよ!?
椿君は兄に持ってきたコートを羽織らせ、連れて帰った。
御子柴先輩が帰り際に今度お礼をさせてほしい。何をすればいい?と聞いて来たので、春の花が沢山咲く季節になったら私に花をくださいと言った。私がそういったら彼は嬉しそうに頷いた。
さあ、先輩たちも見送ったし家の中に入ろう。私は、女の子らしかぬ大きな声でくしゃみをしてしまった。
受験が終わったので久しぶりの投稿です!
新キャラ登場です!