お出迎え 四
さらに別の日。
今電話をしている。え、誰と?
兄貴と。
僕は今日、一人でレンタルビデオ屋にお出掛けしていた。
友達はと言うと、彼氏と遊びに行くだの、家族と出掛けるだので結果的に僕は一人となってしまったのだ。まぁ一人は慣れてるし、良いのだが……何故電話は鳴るのだろうか。それが友達だったら良かったものの、残念ながらあの馬鹿兄貴だ。
「……兄貴。いつまでこうしてるつもりだ?」
だが今日は何か変だった。兄貴は一言も喋らないのだ。というか、これで兄貴から電話がかかってくるのが五回目だ。最初は嫌がらせかと思いすぐ切ったのだが、また数秒後にかかってきた。そんなことを繰り返して、今現在に至る。
「もう……電話料金高くなるぞぉ」
「…………」
なにやら微かにではあるが、カチャカチャと聞こえる。…電話の向こうで何が行われているんだ?
「あ、兄貴? なにやってんの?」
「…………」
「兄貴ってば!!」
「クスクス……」
電話の向こうでいったいぜんたい何をやらかしているのだろうか。電話片手にずっと無言が続いた故、急に笑われても困る。
「お前、知ってるか?」
口を開いたかと思えば、コレだ。なにも言わずただただ沈黙の中、急に笑いだし、さも普通に「知ってるか」などと問われても僕はなんと答えれば良いのか。
「…………」
「機械を解体するって事がどんなに楽しいか」
僕が黙っているから、それを"知らない"と思ったのか、黙っている僕をよそに兄貴が喋り始めた。
「最初は、解体したあと、また元通りに直せるかとか部品なくしたらどうしようとか色々と不安があるんだが、その"不安"が次第には"快楽"に変わるんだよ」
…………。
僕はどうしたらいいのか。黙秘権を実行してても兄貴はどうでもいいことを淡々と述べ続けるだけだ。
そして電話料金も高くなっていく一方。
「でな───」
結果、ブチリと電話を切った。
あんな話に付き合わされて多額の電話料金を払うなんて馬鹿馬鹿しい話だ。
また電話がかかってこないように兄貴の番号を、着信拒否に登録する。
僕は、何事もなかったかのようにレンタルビデオ屋でビデオを借り帰宅した。
ドアを開けると、兄貴が仁王立ちで腕を組みをしていた。
「お前っ、着信拒否に登録しただろっ!」
「まぁ。…着信拒否にしない方がおかしいよ」
「ひどっ! せっかく親切に部品の1つ1つについて説明しようと思ったのに……」
「いや、電話料金高くなるだけだし。つかそこに親切いらなっ!」
と、こんな会話を繰り広げながら、本当に説明するつもりだったのだろう。兄貴の手には解体された機械を握っていた。正確にはその機械の"部品"だが…。
僕はそれらを無視し部屋へと戻る。その戻る途中にも兄貴はうるさく、『酷いなぁ。面白いよ? ほら見て、このバネ。形といい色といい、素敵だと思わないかい?』と独りで喋っていた。




