腹ごしらえ。
「‥‥‥‥」
もう日が沈もうとしている。
そんな中、僕は右手に新しい携帯を握りしめていた。
前に使っていた僕の愛しい携帯ちゃんはもう駄目らしい。‥まぁ、聞かなくても分かるが。
データも飛んで使えものにならない。幸いSDカードは無事なようで、定員も「良かったですね」と安堵の笑顔を向けてくれた。
「‥はぁ。遅い」
ちんたらちんたらと。
ここの信号機は何故こんなにも長いのだ? 抗議してやりたいぐらいだ。
待ってる間に新しい携帯を弄ろうとしたのだが、何せ新しい携帯なのでまだ慣れていない。変なことして一人でテンパるのは恥ずかしい。絶対に避けたい。なので、家に帰ってからじっくり弄ろうと思ったのだ。
僕が携帯を見つめていると、信号が青になったのか目の前の車が止まった。僕は携帯から目線を外し歩みを進める。
「‥腹、減ったな」
僕は横断歩道を渡りきってそんなことを呟き、周りをキョロキョロする。
確かこの辺りにファミレスやら何やらあったはずだ。
「ん、あった‥」
僕はお目当てのものを見つけ、そこに足を進める。
ちょこんと何気なく建っている、ピンク色に包まれた可愛らしいファミレス。
ちょっと行くのに気が引けたが、何せ僕はお腹が減っている。空腹に勝てない僕はそのまま迷いなく店の扉を開けた。
カランカラン。
扉に備え付けられていた鈴が鳴り、客が来たことが定員に知らされる。
「いらっしゃいませ~」
定員の声が店内に響く。
僕は適当に隅の方に座り、定員が来るのを待っていた。
直ぐ様定員は来てくれ「ご注文はお決まりですか?」と素敵な笑顔つきで訊ねてくれた。僕はそれに笑顔で対応し「ハンバーグ1つください」と言った。
定員は即座にメモリいくつか僕に質問して「かしこまりました。では少々お待ちください」と礼儀ただしく一礼し去っていった。
質問と言うのは、「~~はおつけいたしますか?」とか「セットもございます」とかだ。
それを僕は丁寧に断った。金を喰われるからだ。
数分して注文の品が届く。
定員は「ごゆっくり」とまた礼儀正しく一礼して去っていった。
僕は手と手を合わせ「いただきます」と言ってからフォークとナイフをそれぞれ右手左手に持った。
「‥わ、旨そ」
ハンバーグにナイフを入れればそこから肉汁がこれでもかと言うほどに出てきた。
まずそれに涎を垂らした。
次は香り。
もうこの香りだけでご飯何杯でもいけるんじゃないかと言うほどに香ばしい香りを漂わせていた。
これで口の中は涎の大洪水が出来上がる。
一口サイズに切ったハンバーグをフォークに刺し、口の中へと運ぶ。
「っ!!?」
僕はびっくりした。
口の中に入れ、歯をハンバーグに入れた瞬間、まるで溶けるようにハンバーグが崩れていった。しかも肉汁を口の中に溢しながら。
もう僕の口の中は涎と肉汁で訳が分からなくなっていた。
「‥‥こりゃ旨すぎだろ」
そう呟いてまたハンバーグを一口サイズに切る。
そしてそれを口の中に運ぶ。
その行為を僕は無心に、ひたすらに繰り返した。
気が付けばお皿の中にはハンバーグは無かった。
「うぷ。‥うまかったぁ」
僕はお水をゆっくり飲みながら時間を確認するともう6時を回ろうとしていた。
「やっべ、夕飯作んねーとっ!」
とは言ってもコンビニとかで適当に弁当を買うだけだが。
もちろん兄貴の分の夕飯だ。
僕は残っていた水を一気に全部飲み、荷物をもって背中をたつ。
そしてレジの前についておかいけいを済ませて店を出た。
そして徐に後ろを振り返り、ファミレスを眺めた。
「ふむ。‥“カトレア”か。次友を誘って行こう♪」
そうして、僕は歩みを進めた。




