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四天王のひとりがやられて焦ったのだろう。
高田と戸敷の体を支配していた奴らものこのこやってきて、樫田の時の事を見ていた二人はアッサリ肉体奪還に成功。
四天王の二人もさっき同様、俺が手を差し伸べ成仏させてやる。
良いことしたなぁ、俺。
『レイジ殿。ヴァン王子直属の近衛兵らが、王子を差し出しに来まして……』
そう言って、元帝国騎士の分隊長クラスの男がやってきた。
とうとう直属の部下にも見捨てられたのか……可哀そうという気持ちはなく、なんでこうなることを予見できなかったのかと。
いう事を聞かない部下は殺し、死霊使いの術で使役なんかしても、いつか生きている部下に暗殺されるだろうとか、思わないのかな。
ご対面したヴァン王子は、案の定自分の置かれた状況も理解していないようで――。
「この私を誰だと思っているのだ! 貴様ら、生きて余生を送れると思うなっ」
「間もなく冥府の女神が復活する! そうなれば貴様らなど!!」
と喚き散らしている。
「女神の復活は阻止しなきゃならないよね? ヴァン王子の事は後にして――あ、いや」
背後でどろどろと渦巻く怨念。
彼らは無念を晴らしたくて俺の下に集まってくれた。
なら彼らに応えてやらなきゃいけないだろう。
「ヴァ、ヴァン王子のことはどうか好きにしてください。ですから我々の事はどうかお見逃しを――」
「な、なにを言っている!? 貴様ら近衛兵が率先して、民を――私の部下を見せしめに殺したのではないか!!」
「だ、黙れっ。わ、我々だって王子に命令されてやったことだ! それを言うなら貴様らだって同じであろうっ」
「そうだ! 同じ帝国兵。我ら近衛だけが罪に問われるなど、おかしいではないか!!」
「分かっている。分かっているからこそ、この戦争が終われば――レイジ殿、せめて部下だけは生かしてやってください。代わりに私が全責任を取りましょう」
帝国兵にもまともな人がいるもんだ。まぁ万の人が居て、全員が悪人なんて救いようのない世界もあり得ないよな。
怨霊化しないよう、なんとか必死に耐えている町の住民たちを見て、俺は決断する。
「ヴェルタの人々よ。全てはあなた方に一任する。罪を償う機会を与えるのか、今すぐ煉獄へと送るのか……あなた方の無念を今ここで晴らすがいいっ」
大勢に聞こえるよう、あらん限りの声を上げた。
一瞬の静寂――そして。
『おおぉぉぉーっ!』
猛々しい死霊たちは雪崩のようにヴァン王子へと迫る。
「よ、寄せ! やめろ!! "下賤なる死霊ども。我に従え" 従え――従わぬか!! したが、あ、ああぁあぁぁっ――」
「な、何故我々まぐぼあべしっ」
「ぎやあぁっ」
住民たちの怒りは、ヴァン王子ひとりでは収まらなかったようだ。
近衛兵たちまでも飲み込んでいった住人たちだが、一部を除いた一般の帝国兵たちは飲み込まず生かしたままだった。
飲み込まれたのはよっぽど酷い奴らだったのだろう。
『ミタマ君。そろそろ迷宮に向かわないと』
「そうだな。エスクェード騎士の方々、道案内を頼みます」
『お任せください』
地上の事は帝国兵分団長に任せてある。
と言っても、他に生きている第三者でもいればそっちに任せられたんだろうけど……ソディアを置いて行こうにも彼女が断固拒否。アブソディラスも可愛いひ孫を置いて行くのは嫌じゃと騒ぐし。
樫田たちは相田を殴り飛ばさなきゃ気が済まないと言うし、それはそれで仕方ないかとも思う訳で。
仕方なしの人選だった。
まぁ彼が万が一裏切るようなことでもあれば、町の住民が許さないだろう。
こうして俺たちは地下迷宮へとやって来た。
ここから地下50階までの道のりが遠い。
そう思っていたんだけども……。
『はい、こんにちは。そろそろ私の出番かなーと思いまして』
そう言って、迷宮に下りたその場所魔導王国建国王の弟にして、ドーラム王城の地下迷宮の主、ロジャーが居た。
ただし階段下に何故かある鏡から顔だけ覗かせて。
「ロジャー。どうしてここに?」
『えぇ。最下層へ行きたいのでしょう?』
「そりゃー」
『でも普通に歩いたのでは、数日掛かります。その頃には冥府の女神は復活しているでしょうね。こちらの地下に封印されている、女神の眷属がそわそわし始めましたから』
そうか。ロジャーの住む迷宮の地下には、冥府の女神の眷属がひとり、封印されているんだったな。
なるほど。それで眷属は三体までしか復活できていなかったって訳だ。
たぶん、復活出来ていれば相田に憑依していたんだろう。
そういえば相田の奴、見かけないがどこに行ったんだ?
樫田たちの話だと、奴だけヴァン王子側についたってことだけどさ。
『エスクェード騎士団で最下層まで行かれた方々に協力していただきます。彼らの記憶を私と共有させ、その場所へと転送ゲートを開きますので』
「おぉ!」
『ただし一度こちらに来てもらう必要がありますので、もたもたしているとあっという間に時間が進んでしまいますからね』
そうだ。彼の住居と外とでは、時間の流れが違うんだった。
まずは最下層到達組みがロジャーの下へと向かう。
30分ほどしてロジャーが鏡から出てきて手招きをした。
『目の前に鏡を置いていますので、すぐにそこへ駆け込んでください』
「分かりました。ありがとうございます」
『いえ。それではご武運を』
ロジャーの顔が引っ込められるとする、俺たちは鏡へと突入した。
視界が揺れ景色が一変すると、またしても目の前に姿見の鏡が置かれてあった。
『レイジ殿、こちらに』
エスクェード騎士の霊が声を掛けてくる。
再び鏡へと突入し次なる目的地へと出ると――。
「神殿……なのか?」
「凄い……地下にこんな物があるなんて」
天井の高さはアブソディラスの住処のそれよりはるかに高く、むしろ暗くてそこまで見えないほどだ。
東京ドーム何個分なんだと言う程広い空間に神殿はあった。
その神殿――なぁんか禍々しいオーラが出ているんですけど?




