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 エスクェード騎士団が馬を駆ければ、すれ違う帝国騎士は次々に落馬、もしくは武器を捨て、白い布を掲げた。

 そんな彼らには構わず、俺たちは迷宮へと進む。

 だが、迷宮へと向かう途中、遂に敵本体と遭遇した。


「ミタマレイジ。よくもこの私の邪魔をしてくれたな!」

「邪魔というか、勝手に人を召喚しておいて何を言っているんだ」

『まったく、馬鹿じゃのぉ』

『欲に目が眩んだ人間なんて、こんなものなんだよ』


 と、人間じゃない方々が仰ってます。

 そんなアブソディラスと魔王の皮肉は、どうやら王子様には届いてないようだ。


「なら召喚してやった恩を返すがいい! 私に跪け!」

「ぜんっぜん意味分からないし」

『おう魅霊よ。サクっとやっちまえ。お前がやらないなら、俺がやるぞ?』

『あぁんシゲキったらぁ、強気ねぇ』

「ねぇ高田。シゲキって、樫田の事だよな?」

『あぁん? 当たりめーだろ』


 コベリアは樫田にべったりだ。

 からかい甲斐があるようなこと言ってたけど、コベリアって樫田みたいなのが好みだったのか。

 そして樫田も年上好き……だったようだ。

 なんだろう。幽霊のくせに、リア充って。


「くっ。私を無視しおって! 死ね!!」

「あれ? 樫田たちは見えるのか」


 振り下ろされた剣を躱し、右手に魔力を込めて力を放出した。


「ぐあっ!」


 特に俺は王子に触れてはいない。

 触れてはいないけれど、吹き飛ばしてやった。

 それが出来る気がして。


『魔力は上手く練れたようだね』

「あー、うん。なんか思うように行く気がして。魔王が手伝ってる?」

『少しね。君の魔力は大きすぎるから、暴発でもしたら恐ろしいことになるからねぇ』


 そう言って魔王ははにかむようにして笑う。


『なんせ儂の魔力じゃからの!』


 アブソディラスはドヤ顔だ。

 吹っ飛んだ王子に冥府の女神復活の事を尋ねたが、彼の返事は無かった。

 あれ? まさか死んでしまったのか?


 そう思ったが、突然王子が笑い始めた。


「くくく。くはーっはっはっは。もう遅いわ! 既に深津の儀式は始まっている。もう止められぬのだ。私が……私こそが神にな――るっ――」

「なっ!?」


 天高く両手を突き出した王子の首は、次の瞬間、血しぶきを上げ宙を舞う。

 背後に浮かぶ月を染め上げるかのように、彼の血は辺りを濡らしていく。

 その後ろには、巨大な鎌を握る男――樫田の姿があった。


『てんめー……よくも俺様の体を乗っ取りやがったな!』

「……下賤な人間よ。我に使われることを、幸せと思え」

『だれが幸せかよ! 返しやがれ、俺の体!!』


 樫田が飛びかかる。

 だが相手も黙ってそれを待っている訳ではない。

 ヒョイっと躱すと、巨大鎌を構え振り上げる。


『ミタマ君。君の死霊術で彼をサポートするんだ。彼は今、霊だからね。君のサポートで、いくらでも強くなれる』

『逆にじゃ。主のサポート無しでは、女神の眷属に勝てはせぬぞ』


 俺のサポート……。だけど樫田たちとは契約をしていない。

 三人は生霊だ。完全な幽霊ではない。


 でも……霊だ。

 影響力はある?


 俺は死霊術を使う要領で、樫田へと力を流し込むことにしてみた。

 コベリアをゾンビからレイスに進化させたときのように。

 自分の中の力の一部を――彼に注ぎ込む。


 俺の体からぼわぁっとした白い湯気が立ち上り、それが樫田に向かって流れて行く。

 その湯気を吸収した樫田が――。


『な、なんだ? この腹の底からみなぎるような力は』

「くっ。余計な真似を!」


 死神の鎌が俺に向かって飛んでくる。

 だがそれを、甲冑を纏ったエスクェード騎士たちが難なく阻止した。


『ざんねんだったな。魅霊にゃあ護衛が五万と居るんだぜ』


 五万は多すぎ……いや、いるかも?


『さぁ、観念しな!』


 威勢たっぷり樫田が吠える――が、そこから先、進もうとしない。


『えーっと、どうやってこいつを追い出せばいいんだ?』


 おいおい、今更!

 と言っても、俺も良く分からないんだよな。


「魔王、あなたなら知っていると女神は言っていたけど」

『うん、知っているよ。でも君だって知っていると思うよ。アブソディラスに憑依されたこと、あるんじゃないかな?』

「憑依……はっ、もしや!」


 俺とアブソディラスが入れ替わった時の事か!

 中身が入れ替わった時、俺はアブソディラスを追い出すために――。


「樫田、突き飛ばすんだ! 肉体の中に入っている、四天王を付き飛ばせ!!」

『はぁ? よ、よくわからねーが、突き飛ばすんだな!』


 樫田の霊は一度上空へと舞い上がり、勢いをつけ急降下してきた。

 そして彼は、右腕の袖をまくり上げ、そのまま――。


『うおらあぁぁーっ!』


 何故か自身の顔を殴るようにして拳を繰り出した。


「ぐおおおぉぉぉっ』


 樫田の全力パンチを喰らった四天王の中の人は、その肉体から離れ、飛び出していった。


「レイジ君、反魂の玉!」

「そ、そうだっ」


 懐に入れた反魂の玉を取り出すと、玉がまばゆい光を発した。

 樫田の体を支配していた四天王は苦しみ藻掻く。


 すかさず樫田が中に入る。

 カッと光った樫田の肉体。そしてすかさずガッツポーズ。


「よっしゃー! 取り戻したぜっ」

『ミタマ君、今です! 四天王を――』

「分かった!」


 光が収まり、恨めしそうに奴がこちらを睨みつける。

 奴に向かって、俺は手を差し伸べこう言った。


「さぁ、成仏するんだ」

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