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にごあい!~ただの高校生の俺だけど、2.5次元舞台愛好部を立ち上げました!~  作者: 千早 朔
第八章 そして時は刻々と迫る

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そして時は刻々と迫る①

 事件が起きたのは、このめ達が最後の舞台稽古を終え、ノートパソコンで出来映えを確認している時だった。

 感極まった武舘が「スゴく、よかった……! 先生は! 感動した……っ!」とハンカチを濡らす中、呼び出しの校内放送がかかったのだ。

 あんな顔で行って大丈夫だろうか。このめ達の心配も他所に駆け出して行った武舘は、このめ達がちょうど見終わる頃に戻ってきた。


「あ、シゲちゃん先生おかえりなさ……っ」


 このめが思わず言葉を呑み込んだのは、扉を開けた武舘の顔が真っ青だったからだ。足元も覚束ない。片手で抑えているのは胃の辺りだろうか。


「どうしたんですか一体!」

「た、大変な事になった……」

「なんか暗殺者に撃たれたみたいっすね」

「確かに、映画で見たことある」

「あ、暗殺者だと!? 安心してください凛詠サンは俺が」

「み、皆さん冗談言ってる場合じゃないですよ! 大丈夫ですか、先生」


 フラフラと向かってくる武舘に、このめと睦子が駆け寄る。「すまないな……」と肩をかりて歩いてきた武舘に、部員の視線が集まった。


「皆、落ち着いて聞いてほしい」


 どうやら余程の事態らしい。まさか、部活の停止でも言い渡されたのだろうか。

 緊張の走る中、武舘が重々しく口を開く。


「文化祭、土曜日だろ? だから実行委員が当日のプログラムを、学校のホームページで公開したんだ。それに加えて、『注目イベント』をSNSでいくつか紹介したらしい。これも毎年の事だ。今年だけが特別だった訳じゃない。今日から土曜日まで何個かピックアップするらしいんだがな、今日の紹介の中に、ウチの部も含まれていた」


 部活名もさることながら、各学年の『姫』と『騎士』が集まるこの部は、校内では既に注目の的だ。実行委員会も、これを紹介しない手はないと考えたのだろう。特別驚くような事ではない。

 だが武舘はここからが本題だと、鬼気迫る顔を上げた。


「その、SNSがとんでもなく拡散されて、問い合わせが殺到しているらしい」

「え……?」


 拡散? 問い合わせ?

 全く予想外の言葉に、このめは凍りつく。


「それって、『ふざけんな』的なやつっすか?」


 冷静に問う吹夜に、武舘は深い溜息をついた。


「いや、残念ながらそれもゼロとは言えないが、殆どが友好的なものらしい。『絶対見に行く』なら可愛いもんで、『整理券は配布されるのか』とか『撮影は許可されてるのか』とか、『当日本人達と話せるのか』とかとにかく想定外のモノが多くてな。実行委員も先生達も初めての事で、対応に追われている。それで、事態を知った理事長直々から電話が来てな……」

「まさか、中止とかですか?」

「いや、『私も楽しみにしています』って……。先生、理事長と直接話すなんて着任時以来だよ……」


 どうやら当日は理事長も観に来るらしい。それに加え、他の先生の話しでは立ち見もあり得るとの事だ。


「ど、どうしよう……! 理事長って、立ち見って……俺、座席が埋まればいいなぐらいにしか思ってなかったのに……!」

「落ち着けよ。放っておいたって、どうせ興味本位の校内連中が集まってたんだ。ちょっと増えただけだろ」

「だね。まあ理事長が来るのはビックリだけど、やることは変わんないし」

「さっすが凛詠サン! かっけえっす!」

「アタシは俄然やる気が出たワ。眼が多い方が、燃えるもの」

「僕は、舞台に立つ訳ではないですが、皆で作ったこの舞台を、沢山の方に観て頂きたいです……!」

「そうそう。舞台は観てもらってナンボでしょ」

『観客が何人だろうと望むトコロー』

「そういう事だ。……成映はどうせ、大方予想通りなのだろう」


 濃染に疑惑の眼を向けられた杪谷は、「うん、大体はね」と穏やかに笑む。


「演目が演目だったから。ウチの生徒が呟いたのを誰かが見つけて、そこから更に広まって、っていうのは考えられたかな。さすがに理事長が来るとは、思わなかったけど。あと考えられるのは、このまま行くと、実際に『あやばみ』を演った人達に伝わるんじゃないかなって」


 このめは目を剥いた。


「そんな、本人達に……! ど、どうしたら!」

「伝わっちゃったら、伝わっちゃっただね。怒られはしないと思うよ」


(そ、そういう問題なのかな!)


 慌てふためいているのはこのめだけで、他の部員は実に堂々たるものだ。

 なんだか自分も胃が痛くなってきた。武舘と共にお腹を抱えたこのめは、


「部長なんだからシャキッとしろ」

「しっかりしなよ」


 と、吹夜と紅咲に背を叩かれた。


***

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