葛城は憂鬱
「如月っちさ、大月マネとつながったでしょ。」
「へ?!」
ああ、大月マネ。大月くんのことか。そういえばすっかりこの声の主のペースに乗せられていたけれど、大月くんに告白をされたばかりだった。
さっきまであんなにパニックに陥っていたのに、葛城将平が登場してから約1時間、頭の片隅にさえ浮かんでこなかった。
「もともと、中学の同級生だったから。繋がるもなにも、、。」
「へーえ。塩対応だな。こんなん最近の大月マネが聞いたらガッカリしちゃうよ?まあ、話してやらねーけど。」
「は、はは。」
乾いた笑いしか出てこない。葛城の声はとても悲しそうで。だけれど、相手のことを突き放すような冷たさも持ち合わせていて。
思わず彼の頭を撫でてしまった。
「悪い女だなあ。如月っち。」
「な、なにがよ。」
「2人の男の恋心を弄ばないでよ。」
身体が私から離れ、じっと見つめられる。弄んでなんかいないし、なにを言っているのだろう。それに2人の男?恋心??身に覚えがない。
いや、この場合1人は大月くんのことを指すのだろうか。じゃあ、もう1人は?
「もうさ、絶対わかってないでしょ。ほんとそういうとこ冷酷だよな。
俺、如月っちが好きなんだよ。わかる?」
私の心の疑問を解消するように、彼の口は開いた。
けれど、その内容は理解に及ばない。私の恋愛キャパシティはもう一度さっきオーバーしたところだったのに。
何故私が一晩に2人もの男に告白をされているんだろうか。
「だからと言って今の俺の状態だと、付き合ってなんて軽々しく言えないけど、信じてほしい。隣にいてほしい。
如月っちが誰か違う人を思ってるなんて、耐えられない。そんな気持ち、俺が奪い取ってやる。」
真っ直ぐに二つの瞳はわたしのことを捉えていて。この理解しがたい状況が現実であることをなんとなく諭してくる。
?
葛城将平がわたしを好き?
「いやいやいや待って。なんか、なんかおかしい。」
キャパオーバーの頭で考えるけど、わたしはしがない公務員独女で、先ほど何年かぶりに人に「好き」と言われた。
そして帰宅するやいなや、この人気実力派若手俳優に「好き」と言わらているこの状況。
一体全体どんな壮大なドッキリなんだ。
「なんか、色々つっこみたいんだけれど、、そういえば、週刊誌?みたいのは??」
「え?ああ、俺の予想だけどさ。
如月っち、週刊誌見てないでしょ?」
「うん。」
むしろ、あなたのスキャンダルはわりと最近うわさで聞いた程度ですよ。それで恐ろしくお酒のピッチが早くなって同級生に迷惑をかけましたよ、なんてことは言わない。
「【一般人にデレデレ。葛城将平、送り狼?】っていう見出しなんですけど。自分が週刊誌に載ってるのご存知ですか?」
ニヤッと笑うこの男は何を言っているんだろう。脳が言葉を理解することを拒絶はしてる、気がする。




