騒動の後の昼下がり・・・。
騒動から数日後の昼下がり、ギルドの酒場にて・・・。
「おいおい、みんなだらけ過ぎなんじゃないのか?」
周りを見ると、机で腕を枕に高いびきを書いている中年冒険者や昼間から飲んだくれて床で
モザイクのかかった水溜りにか大半分突っ込んでいる冒険者達。
「ジンタさん!あなた自分のした事をもう忘れたんですか!!」
怒鳴る声は受付嬢その1だ。
「藪から棒になんだよ。いきなり大声出さなくていいんじゃねぇのか?」
「どこの金持ち貴族様か知りませんが参加した冒険者一人頭金貨100枚なんて出し過ぎなんじゃないかと思うんです!
本来ならパーティー単位ですら金貨50枚でも多いものをそんな大金ぽんと払うなんて・・・。
ほんとうに、うらやま・・・。じゃなくて常識はずれな事をするからみんな当分働く気なんてなくして豪遊するんじゃないですか!!」
おい、今本音が出たぞ?たしか受付やらギルドの職員共にも臨時ボーナスが出たと聞いたはずなんだが?
「そうは言ってもなぁ・・・。お前ら職員にも王家から報奨金が振舞われたって聞いたぞ?」
「うっ!どこでそれを・・・・?えぇ、確かに頂きましたとも!
あれだけの騒動の後始末にどれだけ苦労したか・・・。
金貨10枚では到底報われない仕事でしたよ!」
そうか、金貨10枚も貰いやがったのか。
確かに冒険者共は金貨100枚でその10分の1じゃ文句も出るとは思うが、
命を張って食い止めたんだ。
その位旨味がなければ誰も冒険者なんてやりたいとも思わないだろうな。
などと考えていると、勢い良くギルドハウスの扉が開く。
「責任者!責任者はおらぬか!」
入るや否や大きな声で怒鳴り散らす小太りのおっさんが居た。
「あら?ギルドマスターなら私用?とかで出かけていますが何か御用ですか?」
「何か御用ですか?じゃないだろうが!街に飛来したドラゴンを討伐したまでは褒めてやろう。
しかしだ!討伐したはずのドラゴンの素材が一切我等商業ギルドに回ってこないではないか!
街の商人だけではなく、近隣の商業ギルドからも苦情が山のように来ておるんだ!
隠すと貯めにならんぞ!今すぐに差し出すが良い!」
ふむ。商業ギルドのギルドマスターと言った所か。
しかし、強欲な奴だな。商人は相手の顔色を伺いつつ如何に利益を叩き出し相手を納得させられるかが腕の見せ所なのに長い間権力に胡坐をかいていた性で交渉術も完全に錆び切っているじゃないだろうか・・・?
「と、突然そう言われましても・・・・。ドラゴンの素材なんてとっくにありませんよ?
そもそも、冒険者ギルドにも鱗の一枚すら入ってきておりませんが?」
「なんだと!?あれだけ居たドラゴンの鱗一枚すら手に入らないんなんてある訳がないだろうが!
嘘つくにも、もう少しまともな嘘があるだろうに本当に使えない小娘だ!!」
おっさんに怒鳴られつつ何故か視線を俺に向ける受付嬢。
なんだ、助けろって目線はやめて欲しいものだ。
なんて考えていると、おっさんが受付嬢の視線に気が付き俺と目があう。
「何だ小僧!ワシに文句でもあるのか?」
「文句と言うか、おっさんいい歳して五月蝿いんだよ。
俺が商人だったらそんな上からの物言いで押し付けがましく言ってくる奴になんて小麦の粒一つですら売らねぇぞ?」
「言わせておけば、この糞ガキが!商人ギルドのギルドマスターであるこのゼニスキー・ゴールド様に対してその物の言い様はどうゆう教育を受けてきたんだ!
よし、お前の顔は覚えたから商人ギルドはキサマには小麦一粒すら売る事は無いだろう。」
売り言葉に買い言葉。おっさんの怒りはピークの様だ。
そこに馬鹿な受付嬢によりトドメが入る・・・。
「ゴールド様、誠に申し訳ありませんが・・。」
「なんだ!この腹立たしい怒りをキサマにぶつけても良いんだぞ!」
おいおい、それって完全に八つ当たりしますって自分で言ってるよ・・・。
「いえ、そう言う訳ではなくてですね?
ドラゴンの素材はそこの冒険者様がすべて買い取られたのですよ?」
ピシッと時間の凍りつく音が聞こえた気がする。
ギギギギギと音がしそうな動きでおっさんの顔だけがこちらに向く。
「おい、小僧。今の話は本当なのか?」
「あぁ?おっさん交渉相手に小僧はないんじゃねぇのか?」
「見たままの事言ったまでだ。今小娘の言った事は事実なのか?」
「うるせぇおっさんだなぁ。答える義務は無い。」
おっさんは顔を真っ赤にしながら机を割れんばかりに叩く。
「こんな小僧にドラゴンの素材を買い取れるわけが無いだろうが!」
「俺が買い取ったのは全部で8体だが問題でもあるのか?」
「だから、キサマの様な小僧に8体分もの素材が素材が・・・?
馬鹿な!ドラゴンの数は20を超えていたはず!残りの素材は何処に消えていったんだ!」
「だから、最初から言ってんだろ!買い取ったのが8体分だって。
おっさん本当に馬鹿なんじゃないのか?残りは買い取ったんじゃ無くて俺と俺の執事で討伐したんだ。
自分で倒した物を買い取る馬鹿が何処に居る?」
「ふん!馬鹿な事を言う糞ガキだ!キサマにドラゴンが倒せるものならワシなんて魔王すら倒せるわい!」
「ほう、おっさん今言った事は嘘偽りじゃ許されねぇぞ?」
「ふん!何だ今更!小僧こそ今更謝っても許してはやらんぞ?」
「ゴールド様・・・。誠に残念ながらそこの糞ガ・・・冒険者様の仰る事は事実でございます。」
今、受付嬢の奴糞ガキって言いかけてなかったか?
後で地獄の補習授業を受けさせよう。うんコレは決定事項だ。
「おい、セバス。今すぐ48代目をここに連れて来い。
どうせウチでデザートでも食い漁ってんでだろ?」
「御意!」
いうが早いか、セバスの姿が一瞬にして消え、そして次の瞬間プリンを手にした魔王がセバスと共に現れる。
「うまそうなプリンじゃねぇか!イタダキ!」
そう言いつつ、皿に乗ったプリンを一口で平らげる。
「わ、妾のぷりんがーーーーーー!!!!!」
次の瞬間冒険者ギルドに魔力の暴風が吹き荒れる。
「ひぃぃぃ!!」
「きゃーーーーー!!」
「あばばばばば!!!!」
「助けて!おかーちゃーん!!!!」
約一名どんな強い嫁さんなのか疑問の残る声もするが放置でいい気がする。
「おい、ゴールドのおっさん。お望みどおり魔王を連れて来てやったから討伐してくれよ?
ほぼ毎日ウチの食料を食い漁る蝗の様な存在だし、討伐してくれるのなら鱗の一枚位くれてやるぞ?」
「ひぃぃぃぃ!!!!たすけてくれ!!!金か?金なら払うぞ!?」
振り向くとおっさんは受付嬢の後ろで股間を濡らしながらガタガタ震えている。
「おいおい、さっきまでの威勢はどうした?魔王位倒せるんじゃないのか?」
「ジ~ン~タ~!妾のぷりんを今すぐ返すのじゃ!さもなくばこの街を廃墟に変えることもはばからぬぞよ!」
「あー、セバス。めんどくさいから城に送り返してプリンアラモードでも食わせとけ。」
「な?ぷりんあらも~ど?じゃと?まだ妾の知らぬ『すいーつ』があったのか!
ジンタの城なら、自分で飛べるわい!」
「さて、この後始末はどうやってつけてやろうか・・・。」
「ジンタ様?またお顔が悪そうな笑いを浮かべておりますよ?」
む?セバスの奴余計な事を・・・。
今夜はいい夢が見られそうだ・・・。
再び更新までお待たせして申し訳ありませんでした。
次回も仕上がり次第更新しますのでよろしくお願いします。