経済制裁その一
「あーあ、折角の憩いの場がめちゃくちゃじゃねぇか・・・。」
魔王が怒りで魔力を駄々漏れにしたため酒場は見るも無残な惨状と化していた。
「い、一体誰のせいだとおもってんだ!」
「そうだ!そうだ!」
「てめぇのせいじゃねぇか!」
輩どもが好き放題騒ぐも相手をしている暇は無い。
「俺の勘違いで無ければ、破壊したのは魔王だったはずだが?
文句を言うなら本人に直接言って来いよな?
場所なら湖の側の城に間違いなく居るから今すぐ行って来ると良いぞ?」
そういって周りを見渡すと全員が下を向くか首を左右に千切れそうになる位の勢いで振っている。
「文句はない様だな?では、話は戻るがセバス居るよな?」
魔王を連れて来た後から姿の見えないセバスに声をかけると背後で声がする。
そして、髭にはクリームとその声には甘い匂いが混じる。
「ずっとここに居ますが、何か?」
「セバス、俺の分はどうした?」
「なんの事やら???」
こいつ、自分だけ食いに帰りやがったな・・・。
「まぁ、良い。ウチがこの街から毎月買い付けている物のと下ろす予定の品物の目録はあるか?」
「商業ギルドからの分だけでよろしいですか?」
「あぁ、一応コイツの関係者すべての分が欲しいな。」
「湖・・・?城・・・?ま、まさか!?」
「おい、まだ俺の話は途中だぞ?勝手に割り込むんじゃねぇ!」
「おい、糞ガ・・・。いやジンタとか言ったな。貴様何者だ・・・。
それに、そこに居る執事の名前がセバスと言ったな?
セバスとは湖の向こうの領主の名前ではないのか?」
笑ったままの膝でなんとか立っている状態でもなぜか上から目線の発言をやめないとは
本当に見上げた屑だな。
「おやおや?私はいつから領主になったのでしょうかねぇ?
面倒事は全てメイドに任せていましたので、私は直接買い付けに来た記憶が無い物で
何の事かさっぱりわかりませぬなぁ・・・?」
「本当に、貴様らが湖の向こうの領主なのか・・・。」
「おいおい、何度も言うがあれは自宅だ!領主だ領土だめんどくさい事を引き受けた記憶は無いぞ!」
「しかし、何代も前の国王から何度使者を送り出しても全く返答が無いと現在の国王になった時に
政治的関与はしないと御触れが出たはずだ!」
「ふむ・・・。
確かに数百年前からですが、数十年に一度軍が来て税を納めろだ城を明け渡せ打だと
バカみたいな事を言う連中は来てましたねぇ?」
「セバス・・・。それは一応使者だと思うぞ?」
「でも、湖の魚の餌になったら盗賊も使者も同じですよね?」
「「「「「同じじゃない!!!」」」」」
傍観していた冒険者やギルド職員たちまでが声を揃えて否定する。
「でも、襲われたら撃退しても文句を言われる筋合いは無いですよね?
ウチのメイド一人にすら勝てないようじゃ王国軍だなんて思えませんし・・・。」
「キ、貴様らの城にはどれだけの戦力があるんだ!この国を滅ぼす気なのか!」
「そんな面倒な事はしませんよねぇ?主殿?」
「更地にするのは簡単だが、する意味も無いしなぉあ・・・。」
「「「「「・・・・・・。」」」」」
「で、話は戻るがゴールドとか言ったな?」
「な、なんだ!?」
「あぁ、そう身構えるなよ。とって食おうって訳じゃねぇ。」
「ならば、なんだと言うんだ!」
「これが、お前のギルドとお前の関係者の関係の目録だ。確認してくれ。」
「ま、間違いない・・・。」
「ん。じゃ、それ全部キャンセルな。」
「え?は?きゃんせる?」
「あぁ、悪い。言い方が悪かったな。
その目録にある、購入予定と納品予定の品物全て取り消させてもらう。」
「な!!なんだと!?貴様に何の権限があってそんなことを・・・。」
「聞いてなかったのか?あの城は俺の自宅で俺は領主でもなんでも無い。
そして、セバスはウチの執事だ。
執事が取引を決めていようと、主である俺が駄目だと言ったらそんな物は無効だ。
セバス。お前に異論はあるか?」
「異論?そもそもこの街で買う理由なんてただ近いからですよね?
品物を売っている件も通りがかった商人達が懇願して来るのが面倒で適当に流しているだけで
売り上げとかも袋に入ったまま倉庫に放り込んでありますが持って来ましょうか?」
「基本、自給自足が成り立っているのに買う必要が何処にある?
欲しければ自分で採りに行くのがウチの基本スタイルだ。」
「そ、そんな馬鹿な事があってたまるか!」
「あーめんどくせぇなぁ、まぁいい。
今回の契約の分はキッチリ収めてやるが次はナシだ。」
「そんな事をされたら商業ギルドは・・・・。我々は生きてはゆけぬ・・・。」
「そんな物は俺の知った事ではないぞ?我々と言ってもお前の一族だけだろうに。
自分で蒔いた種だ。自分でどうにかしろよ?」
「ひでぇ。」
「悪魔だ・・・。」
「鬼畜が居る・・・。」
「おら、田舎に帰るだ・・・。」
商人として間違ったことをして信用を失う。
この世界ではそれだけで自分のみならず一族まで路頭に迷う可能性もある。
だから商人は利益追求も大事だが両者が納得できる取引をしなければならない。
俺と魔王との関係もそうだ。
アイツは美味い物が食べたい。そして俺は素材を集める手間が面倒だ。
ここには両者の利害が一致する。
俺が魔界に素材を集めに行こうとすれば当然戦闘にだってなる。
だが、そこで魔王が行くとなれば自分の領地で何を採ろうと文句を言われる筋合いは無い。
そして、素材を集めるには魔界中を回らなければいけない。
それこそ多種多様な種族達と会話をしたり、揉め事にも巻き込まれるであろう。
だが、魔王からすれば目的の為には避けて通れない事だ。
迅速に解決し、目的の物を手に入れる。
そして、その物自体が失われる事の無いようにそれらの種族に命令するだろう。
種族長達からすれば王自ら現れ問題を解決しさらには仕事を与えられる。
魔界の連中からすれば何よりの褒美となるだろう。
そうして集められた素材は俺の所に来る。
おれ自身はそれで様々な装備の強化や研究が出来る。
確かに、この世界で旨い物を作ろうとすればその労力は計り知れないだろうが
俺は一人ではない。
セバスや黒棺そしてにゃーが居て、メイド達も居る。
こいつ等に俺が出来る事とはたいしてないのかも知れないが、自分の周り位何とかしてやりたいと思う。
だから身内以外なんて正直知ったことじゃない。
愚痴っぽくなってすまないとは思うが、この世界に来て俺は痛感している。
力があってもそれだけでは世界は回らない。
その為に日々必死で生きていくんだと俺は思う。
「さぁ、セバスウチに帰るぞ。ガキ共だって待っているだろうしな。」
「あぁ、主殿。言い忘れていましたが、子供たちは五部一達の村に遊びに行っていますぞ?」
そういえば・・・。俺あいつ等に顔を出してなかった・・・。
やべぇ、拗ねて無ければ良いな・・・。
今回戦闘シーンは無しで申し訳ありません。
戦闘描写って難しいですね><
次話も頑張りますのでよろしくお願いします。




