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とある薬師の受難  作者: 散歩道
18/43

目的の泉をミツケタゾ。

「坊主、起きてるか?

こないだ話してた泉がそろそろ見えてきたぞ~。」


あれから三日特に問題も無く王都へ向かう道中。

おっさんの声で目が覚める。

水を作るのが俺の仕事で見張り等は免除されている為気楽な旅だったのだが、

一応の目的地である人の立ち寄らない建物があると言う泉に到着したようだ。


「おやっさん、今日はここで野営ですか?」


「あぁ、ここならお前さんに出して貰った水も節約できる上についでに水浴びも出来るからなぁ。」


「道中は精精体を拭くだけでしたからねぇ。」


みんなで急いで野営の準備をして、泉から流れる川の部分で水浴びを始める。


「今夜はぐっすり眠れそうだなぁ。」


「俺は交代要員だから飯食ってさっさと寝るかなぁ」


護衛の面々は交代で見張りをしているから大変だなぁ。

ここまで順調に来すぎて何か起こらなければ良いんだけど・・・・。


イカンイカン、自分でフラグを立ててしまった・・・。


「自分は少し魚でも採ってきますよ。」


「そう言えば、坊主にボアの礼を言うの忘れてたな。

おい、みんなこないだのボアは坊主がしとめたんだ。

みんなちゃんと礼を言ってかないと魚にありつけないぞ?」


「人数分取れるか保障なんて無いですよ?

沢山取れれば晩飯に出せると思いますが期待しないようにしてくださいね。」


そう言うも、みんな保存食にはさすがに飽きてきている。

旅といっても短期間の旅ばかり、何ヶ月、一年と言った様な長期間の旅には慣れていないので

当然食事に変わり映えが無ければ飽きもするのが当然だろう。


泉に到着すると、対岸の方にうっすらと建物のような影が見える。

しかし、皆がいる前で堂々と向かうわけにも行かず、夜中こっそりと行って見るつもりだ。


「見える範囲だけでも、結構な量の魚が居るな。」


イメージで魔法の範囲を広げ魔力を調整して威力を抑える。

殺す為の魔法ではなく少しの時間で良いので気絶させるようなイメージで魔法を放つ。


「纏うは稲妻、地を這う電撃『雷撃ショック』!!!」


這うのは地面ではなく水面だが、水面から水中へと電撃の雨が降り注ぐのが見える。

俺の居る位置から5メートル程の扇状の範囲へと魔法が広がる。


電撃を受けた魚は大小様々。

鑑定のスキルを使いつつ食べれるものと食べられないもの、大きすぎず小さすぎず。

食べ頃のサイズの魚を20匹程見繕い他はそのままにしておく。


魚の内臓を抜き、バックにしまうと水面に浮かんでいた魚達は気絶状態から回復し

それぞれ水底へと戻っていくところであった。


「よし、今回は旨く調整できたな。」


やりすぎては魚の幼魚まで殺してしまえば魚が増えなくなるし

大きいものばかりでも大味で旨くない。


焚き火の所へ戻ると晩御飯まで時間がある為みな思い思いの時間を過ごしているらしく

焚き火には商隊の親方が居るのみだった。


「なんだ、坊主さすがに魚は難しかったか?」


「いえ?特にそんな事は・・・。」


「そう言えば、坊主はアイテムバック持ちだったな。」


「えぇ、亡くなった両親が冒険者でその遺品の一つですよ。」


そう、アイテムバックはけして安いものでは無いのだ。

2~30kgの物が入るだけの代物ですら金貨数百枚は必要だ。

相場を知らずに街で相場を見た瞬間に愕きすぎて大声を出しそうになった。


なので、基本的にはアイテムバックとアイテムボックスは使い分けるようにしている。


取り出すのも入れるのも基本はアイテムバック経由でアイテムボックスの存在がばれたら

一生奴隷にされるのが目に見えているからだ。


アイテムバック自体は高価ではあるが、数が無いわけではない。

駆け出しの冒険者には不可能ではあるが、それなりに経験を積んだベテランであれば

その大小に違いはあれどホトンドの冒険者が持っているのである。


アイテムボックスに関しては、神の恩恵や空間魔法の亜種などと言われているものの詳細は不明。


所持していれば、荷馬車を引く必要が無く中の物が劣化しにくい為大量に物資の輸送が出来る。

つまり、元でが少なく済み尚且つ利益率が跳ね上がるというわけだ。


国からすれば物資を馬車で運ぶ所を早馬を使えば戦場の維持が簡単に出来ると言う


商人連中だけでなく国家間でも需要が高いのだ。


何年かに一度持ち主が見つかったりもするのだが、例外なく国に抑えられてしまう。


後発的に使えるようになる場合もあり、タダの奴隷だった者が大商人に成り上がったという逸話すらある位らしい。


「アイテムバックを持つ様な冒険者って事は、坊主の両親は有名な冒険者だったのかい?」


「いえ、パーティーが解散する時の分け前として金銭では無くアイテムバックを

選んだと聞いているだけで詳しい話はなにも聞いてないんですよ。」


「なかなか賢いご両親だったんだな。

金は稼げるがアイテムバックは時価になるもんじゃ。

安い時は良いが戦争時なぞは高騰してても出せないからのぉ。」


「取ってきた魚が傷む前に準備しておきますね。」


「毎度毎度悪いのぉ。ウチは男連中ばかりで料理はからっきしじゃ」


ガハガハと大口で笑うおっさんを横目に魚を調理しはじめる。

まぁ、調理と言っても内臓を取って串に刺し塩をまぶして焼くだけだ。


ある程度数が揃うと大きめの物から順番に焚き火のそばに刺し適度にひっくり返す。


魚の焼ける美味そうな匂いに誘われ護衛含めてみんなが集まってくる。

それぞれ魚やキノコ類など食べられそうなものを集めてきたようだ。


「相変わらず坊主の飯は美味そうだなー。」


「今回の旅はアタリだったかもな。」


「坊主、ウチに嫁に来いよ!」


なんか一人変なのがいるが無視だ無視。

今晩は焼いた魚に、魚と干し肉の汁物。

満腹になると万が一の際に動けなくなるため6分目程で箸をおく。


「護衛の人は食べたら残りの人に声をかけて、交代してくださいね。」


見張りは一斉にて食事を摂るわけにはいかないた為交代で食事になる。

頃合いを見て残りの護衛の分の魚を焼き始めたその時だ。


少し離れた所で斬撃の音と共に残った二人の護衛の内一人が叫びながら走って来る。


「みんな急いで逃げろ!!魔物の群れだ!

ゴブリンにコボルトオマケにオークまでいやがる!

数は30以上原因は不明!急いで逃げるぞ!」


残った護衛は後から合流する手はずになっている。

食事の片ずけなどは時間のない為無視して馬を急いで準備する。

護衛も、命が危なくなれば敵を無視して明後日の方向に逃げ出す為、時間勝負だ。


だが、それも束の間。

耐えていた護衛がやられたか逃げた為敵が押し寄せてきた。


「親方敵が!!」


「分かっとるわい!坊主早く乗れ!行くぞ!!」


そう言う親方の手を掴みかけた時にふと思い立ちその手をとめる。


「どうした坊主!時間がない!置いて行くぞ!」


「えぇ、そうして下さい。俺が少しでも時間を稼ぎます。

親方たちは合流地点へ逃げて下さい。

俺は、少し時間を稼いだらすぐに向かいます。」


「子供のくせに何を言うんじゃ!早く乗れ!!」


そういう親方の話を無視して馬の尻に火の付いた薪を投げる。


「ゴメンよ。死なせたくないから全力で走ってくれ!」


驚いた馬は全力で駈け出す。


「坊主!何て事しやがる!お前死ぬ気か!?」


「こう見えても冒険者の端くれです。運よく生き残れたら、王都で会いましょう。」


そう言って魔物の群れに向き合う。

おっさんが何か叫んでいる様だが距離が離れた為聞き取れない。


何故か分からないが口に笑みがこぼれる。い


さぁ、蹂躙の始まりだ。




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