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とある薬師の受難  作者: 散歩道
16/43

楽しい精算の時間です。

「さて、おっさんに言われた通り教会へ行ってきたぞ。」


と言っても半日もかかっていないがな。

おっさんは驚愕を隠せず青白い顔をしている。


「な、なんじゃと・・・。早すぎるにもほどがあるわい!!」


「あれ?まさか情報を集めれてないとか言わないよな?」


おっさんは苦虫をかみつぶした顔で言い訳を始める。


「半日もかからず情報が集めれる訳ないじゃろう!!」


「ふむ。任せておけと言っておいてそれは無いんじゃないか?

こちらば、要求通りにしたと言うのに・・・。

教会へ行かされた分も含めて慰謝料を請求させて頂くとするか。


額面は合わせて金貨10万の枚で許してやるよ。」


「じゅ、じゅうまn・・・。」


あ気を失いやがった。

この世界の奴らは都合が悪くなるとすぐに気絶しやがる。

これが魔物との戦いだったら腕を失おうと気を失う訳にはいかない。

気を失えば魔物の餌食になるだけだ。


ドガッ!!




「おい、誰が気絶して良いと言った!さっさと起きろ!

おっさん、本当に元冒険者か?

あれしきの事で気を失うなんて鈍ってるにも程があるぞ?」


未だに目の焦点が合ってない。誠に面倒くさい。


「一度しか言わないからよく聞けよ?

期限は1年、1年後此処に回収に来るから用意しておけよ?

ギルド総出で稼ぐんだな。

もし足りなければ、冒険者ギルドが来年の今日で終わるだけだ。」


「うぐぐぐ・・・。分かったわい・・・。」


「あぁ、言い忘れたけどお前にはすでに呪いを仕込ませてもらったからな?

逃げても居場所はすぐにわかるぞ?

ちなみに、ステータス異常に扱われない物にしてあるから解除は俺以外には無理だからな?」


そう言うと、案の定逃げる気だったのだろう。

おっさんの顔が青ざめる。


「それじゃ、また来年の今日ここに来るとするよ。」


そう言い、執務室を後のする。


逃亡不可能・・・・?そんな魔法があるなら見てみたいな。

当然のハッタリだが恐怖で思考のマヒしている状態では見抜けないだろう。

まぁ、金貨10万枚位など大した額では無いだろう。


依頼料からピンハネするか自分はダンジョンに潜るか俺なら後者だが

あのおっさんはどうするか楽しみだ。


この街へはルーンで飛んだ筈だが現実世界からゲームの世界へと転移した際にルーンに異常が起きたのかそれともゲームの世界とは座標が異なるのかは解らない。


だが、俺のプレイヤーハウスは王都から歩いて一週間もかからない距離にあった筈だ。


そう考えると、王都へ向けて歩いて行けば見たことのある場所へ出るだろう???。


鉱山と王都どちらにも頻繁に通う為中間辺りにある泉の畔に俺は家を建てたはずである。

ゲームの中では疲労も戦闘中以外はほぼ無い為昼夜問わず移動が出来たのだが

現実世界となってしまった今は睡眠や食事もとなる。


まぁ、馬か馬車で行けば1週間もかからないだろう。


そう考えると、街から王都へ向けての馬車を探す。


丁度そこへ商隊らしき人々の荷造りの様子が目に入る。


「すいませーん。」


声をかけると体格の良いおっさんが振り返り返事をする。


「なんだ、坊主?物売りなら間に合ってるぞ?」


やはり、子ども扱いか・・・。

まぁ、ここは子供を装った方がうまくいきそうだな。


「おじさん達は王都に行くんですか?」


「おう!この街で鉱石をや宝石を仕入れて王都へ運ぶんだ。

王都からは食料なんかを積んで両方で商売をするのさ。」


「実は・・・。王都の学園に帰らなきゃいけないんですが・・・。

友達とはぐれてしまい、一人で馬車を借りるほどのお金が無くて・・・。」


今にも泣きそうな顔をしておっさんを見上げる。


「そうか、坊主災難だったなぁ。しかし、おじさん達も商売でなぁ。」


そりゃそうだ、人間一人を王都まで運ぶなら金貨3枚は取られる。

その上、食料やら水も余分にかかる。

金は払っても良いのだが子供だとなめられてしまったら金だけ取られて捨てられる可能性もある。


「お、おじさんボク魔法で水を出す事が出来ます!」


「ほう、その年で凄いなぁ・・・。」


そう、生活魔法でも水は出せるのだが普通の人間では精精手を洗ったりする程度の少量出すのが精一杯なので馬や魔法の使えない者の分はどうしても水を積まなければいけない。


「しかし、ウチの商隊は護衛が3人に俺たちが5人居るぞ?」


なんなら溺れさせてやろうかと言いたい所だが面倒な為適当に誤魔化す。


「一日に樽一つ分ならなんとかなります。」


「ほう、それは凄いな。よし、タダには出来ないが特別に金貨1枚で良いぞ?」


おいおい、一日樽一つ分の水がタダで手に入るなら逆に金を払っても良い筈の条件だ。

この狸爺さすがは商人だな。


「ほ、本当ですか!?」


オーバーリアクションで喜ぶフリをする。


「食料は自分で用意するんだぞ?王都までは馬車で10日ほどかかる予定だ。」


まぁ、商隊で10日なら早いほうか・・・。


「乗せていって頂くんですから当然です!」


まぁ、アイテムバックもあるし食料には困らないからな。


「おい、おめぇら準備が出来次第出発するぞ!

さっさとしねぇと、真夜中の森を抜ける羽目になるから!!」


「ボクも急いで準備してきます。」


「後半刻ほどで出発だから、急ぐんだぞ?」


「はい!」


そう言いながら、露店街へと走る。


露店で肉や野菜、酒等を買い揃え次々にバックに放り込む。

酒場でも普通に酒が飲めたのでこの世界では特に子供だからと飲酒が規制されていないようだ。

生水は腐りやすい為、旅と言えば酒を水代わりにするのであろう。


準備を終え商隊のところへ戻ると準備の終わる直前だった。


「はぁ、はぁ、はぁ、まにあった・・・。」


息を切らせたフリをしながら馬車へと駆け寄る。


「ギリギリだったな坊主!

じゃぁ、日暮れまでそんなに時間もないからさっさといくぞ!」


「「「おおーーーーー!!」」」


おっさん共の雄叫びと共に馬車が走り出す。

俺は鉱石の満載された馬車の隅っこにバックから出した毛布に座りながら一眠りする事にした。


それからどの位の時間がたっただろうか。


「おい、坊主起きてるか?」


「あ、旦那様なんでしょう?」


「おいおい、旦那様はないだろ?店を構えて居る訳じゃねぇし

こんな野朗共と年中走り回ってるだけだしなぁ。」


むずがゆそうな顔をしながら顔を掻くおっさん。

うん可愛くない。


「坊主、連れて行く条件にあった水なんだが・・・。」


「あぁ、もうそこの樽に入れてありますよ。」


「おぉ、すまなかったな。

コレだけの量を出すのはさすがに疲れただろう。」


「えぇ、先程出し終えて少しうっつらうっつらしてました。」


「そうか、簡単な食事だが多めに作ったから食うと良い。」


そう言われ、焚き火の前へと案内される。

大き目の鍋に雑穀と干し肉に干し野菜を混ぜた雑炊のようだ。


さすがは商隊と言う所だろう。街を出てすぐの食事すら旅用の食事だ。

だが、コレには理由がある。

街を一歩出れば、満足な食事にありつける保障は無い。

粗末な保存食で食事を済ませるのは長旅になって良い様に

そして、街に着くと旨い飯が食えるという、ある意味御褒美の様な物だな。


「ありがたく頂戴します。」


味は言うまでもなく干し肉の塩味のみだな。

食えないわけでは無いが好んで食べたいとは思わない。


「ご馳走様でした。」


「坊主も早めに休めよ?明日も朝は早いんだからな?」


「はい、腹ごなしに少し散歩したらすぐに寝ます。」


そう良い、近くの森の方へと足を向ける。


気配を探ると近くに小型の動物の気配が二つとそれより少し大きめの気配が一つ。


大き目の気配のする方へと行くと、レイジングボアを見つける。


「よし、しめたぞ。土産ついでに持ってくか。」


ヒュッ!


トスン!


ナイフを投げると良い具合に眉間に刺さる。

鳴き声を上げる間も無く息絶えたのを確認する。


首筋に切れ目を入れ逆さまに吊るす。


まだ動いている心臓のお陰で間もなく血がほぼ流れ落ちたのを確認すると

枝に縛り付けて持ち帰る。


「ただいま戻りました。」


「おい、坊主それはなんだ?」


「えっと、散歩してたら見つけたもので・・・・。」


「おいおい、それはレイジングボアじゃねぇか・・・。

しかも眉間に一撃とは・・・。坊主只者じゃないな?」


「いえ、誠に情けない話、木に登って逃げようとしたんですが

突進された衝撃で木から滑り落ちてたまたま腰に下げていたナイフが刺さったというオチが・・・。」


「がーはっはっは!

そうかそうか、ボアの餌になら無くてよかった!

坊主が居なくなったら泉まで水の節約をしなければいけないところだったんだぞ?」


「以後気をつけます・・・・。」


そうか、泉はまだあるんだな・・・。


「そう言えば、泉の近くになにやら怪しげな建物があると言う噂を聞いたのですが・・・。」


ここでおっさんにカマをかけてみる。


「ほう。坊主何処でその噂を聞いたんだ?」


「えぇ、冒険者ギルドの酒場で年配の冒険者の方に絡まれたときに・・・。」


「そうかそうか、興味本位じゃ絶対に近づくんじゃないぞ?」


「え!?なにか恐ろしい魔物でもいるんですか?」


「魔物が居るから近づかないんじゃ無いんだ。魔物所か動物すら近寄らないんだ。」


「でも、そんな危険な所に行くのは危ないのでは・・・。」


「泉と言っても向こう側が薄っすら見える位のでっかい湖だ。

どれだけ干ばつが続いても水が枯れない不思議な泉さ。

王都もその泉から流れ出る川の下流にあるしな。」


「へー凄いんですね。」


「そういう事だから坊主も早く寝るんだぞ?」


「えぇ、コイツを解体したら休みますよ。」


「その年で解体までこなすとは将来はいい冒険者になりそうだな。」


「親が居ないので、学生をやりながら学費は自分で稼ぐしかないので・・・。」


「おっと、悪い事を聞いたな。すまんすまん。」


「いえ、もうなれましたよ。」


馬車の横でボアの解体を始める。


内臓は水で洗い塩漬けにしておく。

レバーは腐ると食べれなくなる為、塩を振って避けておく。

毛皮をはいで木の棒で伸ばした状態にして馬車の内側に吊るしておく。


肉は適当な大きさに切り分けて塩を揉み込んでそのままバックに保存する。


さて、解体を終えたところで内臓とレバーを持って焚き火に戻る。


「坊主どうしたんだ?早く休まないと明日からが大変だぞ?」


「えぇ、寝る前にもう少しだけ・・・。」


そう言うと、バックから街で買った野菜を取り出し先程のレバーと内臓を取り出す。


「おいおい、何が始まるんだ?」


「ナイショです。」


野菜と内臓を軽く炒めた後鍋に移して水を注ぐ。

そしてそれを焚き火にかけ煮込んでいくと旨そうな匂いがしてくる。


「よし、完成です。」


「坊主それはなんだ?」


「なんだと言われても名前なんて無いですよ?

内臓はすぐに食べないと、痛んで食べれなくなるので

本当は猟師や冒険者だけのご馳走なんですよ。


見張りの方達の夜食に少しと明日の朝御飯にも残して置いて下さいね。」


そう言いながら、器に自分の分をよそうと馬車へ戻る。

新鮮なモツの煮込みは旨いな・・・。


腹も膨れ眠気に襲われるまま意識を手放すのであった。

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