ソルティドッグ (1990年代作品)
深夜2時過ぎ……。都内・某ラブホテルの一室。
体重98kg・身長174cmの相撲取りのような体型の男は、知り合いのキャバクラ嬢の上で、軽やかなテンポで腰を振っていた。
その右耳には、スマートフォンにブルートゥース接続されたイヤホンマイク。左耳には、壁に取り付けられたコンクリートマイクからのイヤホンが付いている。
彼の名は、荒木慧伍。いまこんなことをしてはいるが、これでも警視庁・新宿西警察署の生活安全課の刑事である。
年齢は29歳で、階級は警部だ。この年齢で警部だということは分かりやすくいうと、大学での警察官僚。現在はその、落ちこぼれである。
父親も警察官僚の一人で、階級は警視監という超エリートだ。
その父親の敷いたレールのまま、警察官になったまでは良かったが、元々、父親に対する反発心もあり、警察官僚とは思えない体型だけではない自堕落な生活を送っている。
だが、それでも強い正義感はある。特に管内の水商売に関わる女性たちには顔が広いし人気もある。
これでも検挙率は、東京23区の中ではトップクラスだ。
もちろん、それには訳もある。
「どぉーだぁー、荒木?」
スマートフォンに着信があったので出ると、案の定待ちくたびれた相棒からの電話だった。
「なんだよ、ヤス!? せっかくイイトコだったんだから、邪魔すんなよな!」
そのラブホテルの外で覆面パトカーで待機していた相棒の名前は、花井庸久。元自衛官という経歴で、階級は巡査長。
二人は3年前からコンビを組んでいる。
自衛隊時代の階級は3等陸曹で、千葉県習志野駐屯地の普通科部隊に所属していたが、駐屯地外の酒の席でのトラブルにより除隊した。
体型は元自衛官とあってか鍛えられた肉体をしているが、身長は168cmと高くはない。
偶々《たまたま》同い年でもあった二人は、何故か最初から馬が合った。
「そりゃー、悪ぅーござんした。んで、隣の部屋の動きはどーなんだよ?」
体型は隠しようがないが、捜査対象が女とラブホテルに入ったとなれば、この役回りは自ずと決まる。
そして、隣の部屋が空室だったのはラッキーだった。
これで、男がクスリを使うところに踏み込める。
そのタイミングを見計らいながら、ついでに性行為も楽しんでいたというわけだ。
「ヤス。いいぞ。上がって来いよ」
その待っていたタイミングが訪れた。
花井庸久は、車から出てホテルのフロントに行くと、警察手帳を提示して、これから踏み込む部屋の鍵を借りる。
そして足音もさせずに、その部屋の前に到着した。
そのドアの前には、着替えを済ませて臨戦態勢を整えている荒木慧伍が立っている。
鍵を開けて、一気に踏み込んだ!
そこからわずか3分。違法薬物を押収して、容疑者2人の身柄を確保した。
この逮捕は、違法捜査ギリギリと言われれば、それまでのやり方だ。
こちらの作品は、まだマンガ原作の持ち込みを出版社にしていたときに、見てもらった編集者の方に、「面白いけど、マンガにはならない」と言われた、シナリオ形式で書いたものを、思い出して小説に書き直したものになります。




