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これが僕らの伝えたいこと

しかしながらキャッチコピーを何にするか話し合いが始まってからはそもそもキャッチフレーズ自体に重点を置くべきかどうかという倒錯した議論に持ち掛けられていた。


直中のイラストに持つ純粋に性欲だけを露わにした性格をキャッチフレーズ自体活かせるかどうかという話なのだ。


間島は佐々木にとにかくエロさを強調させることで気になってクリックする男が多いだろうということで説得し、対して佐々木はそれでは広告詐欺になる。実際にどんなゲームなのかを示すものがキャッチフレーズではないのかと、はたしてお互い至極真っ当なことを言う。


直中に関してはエッチな広告をつい興味本位でプレイし、遊ぶうちにそのゲームの面白さが段々と体感していき不純な動機だがこのゲームに出会えてよかったといった経験あることもさながら、ファンとしては企業を誰にでも紹介することが出来る健全な物であってほしいと言った願いもあってどちらの意見も半分半分に受け止める中途半端な体勢を取ることしかできなかった。


そんなわけで直中は話し合いからは離脱してせこせことイラストを描いていくことにした。


下僕に靴下を脱がせる女王気取りのJKのイラスト、ドブに落ちるへっぽこJKのイラストなどなどを無心になる為に次々と書いていく。


そうして書いているところを見た間島はやはりイラストに合わせたキャッチフレーズの方がいいだろう、要するにそのキャラの台詞っぽいものをただ入れただけのイラストにしてしまおうと提案した。


佐々木は経過した時間を意識せずにはいられなかったからそれを承諾し、代わりにこの乙女ゲームの中に一貫するキャッチコピーも付け加えようと条件を出した。


「結局それじゃあ問題は解消しないじゃないですか…」


隣のダンスクラブは今お昼の時間なのか和気あいあいと互いに互いを褒め合っているのが聞こえてくる。


そしてこちらも互いを認めつつ歩み寄ろうと始めていた。


「僕、キャッチコピーとか言っても、セールスの売る文句が一番効果的なんじゃないかなって思うんですよ。結局他と比べてどこがいいのかが購入の動機でしょ」


「他と比べて…ですか」


佐々木は思案した。己の作っているゲームを再び客観視し他者とのアイデンティティを確立するための作業に等しい。


佐々木は部屋の中をぐるぐると回ってどこで差別化されるのかをひたすらに出そうとした挙句結局疲れてしまったのかその場にへ垂れ込む。


直中は何となくその様子を見ながら「めんどくさいな…」とかこの時間の不毛さ窮屈さに辟易しつい漏らしてしまった。


すると佐々木は何か閃いたように勢いよく身を起こしてこう放った。


「面倒臭さです」


直中が彼女の作る乙女ゲーのキャラクターが悉くひねくれていて葛藤ばっかりしている人間らしすぎるさまを思い出している中、間島が佐々木の答えに少し感心した響きを持たさて繰り返した。


「『面倒くささ』ですか」


いともたやすく出てしまった答えが、作品の根幹もキャッチコピーをも示してしまったのだった。


「じゃあ、このゲームのキャッチコピーは」


間島は手元にあったペンをとって紙に記した。


『悩むから好きになる』


こうしてキャッチコピーはできたのだった。


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