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黒龍のヴェンデッタ・ルード  作者: 陽下城三太
第六章 賢者の洞窟
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第九話 賢者

少し短くなっております。


 機械型(マシンタイプ)の放電により誰もが肉体の麻痺に侵される中、動くことができたのは何もリアだけではなかった。

 ジャックはスキルの性質上麻痺を含む状態異常を無効にし、リンカには状態異常無効とグレード一段階上昇を持つスキル──[加護]があった。

 その二人が静観を保っていたのは、一重にリアの雄叫びによるものだった。

 花を持たせる、まで言うのは彼女に失礼だが、事実二人ともいつでも行動を起こせるようにしていた。リンカの場合は機械型(マシンタイプ)の障壁に邪魔されただろうが、ジャックは『タナトス』の力である〔異空間〕により即座に移動できる。加えて攻撃は物理だ。

 一目惚れと言うのは流石に痛いためそこまでの自覚は無かったが、ルナが危機に陥って最も揺さぶられたのは彼である。

 リアが覚醒せずとも、助けに入る余地はいくらでもあった。

 思惑通りリアは神器を使いこなせるようになったが。

 仲間になったばかりとはいえ嬉しいものは嬉しいもので、期待に応えてくれたというのもジャックの心象を良くした。

 もう大丈夫だと判断した彼の意識はもう一方の竜型(ドラゴンタイプ)へと向く。

 こちらにも障壁は搭載されていて、リンカは殆ど役に立っていない。

 はっきり言って、立ち位置を交代した方がいいだろう。仲間の回復に努めてるとは言え、純粋にアタッカーが増えた方があの『魔導兵(ゴーレム)』は攻略しやすい。

 ジャックは〔異空間〕を発動しリンカの側へと転移した。

 

「ジャック!?」

「僕と場所を交代しよう。魔力由来の君の封器では攻撃できない、僕の鎌は物理だしね」

「───うん、わかった!ここに入ればいいんだよね?」

「助かるよ」

「頑張ってね!」

 

 本当に良い娘だ。

 

「さて、二人ともさっきと同じ様に頼むよ!」

「「了解!」」

「ちゃっちゃと片付けようか───【開け(オープン)】」

 

 二対で渦を呼び出し、二人を最適な位置に移動させる。

 ここからは───僕の独壇場だ。

 こちらも攻勢に出るとしよう。

 

 

 

 

 それから十数分後、『魔導兵(ゴーレム)』は両方とも沈黙したのであった。

 

 

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 

 

「よく来たのお、《蒼の双星》よ」

 

 現れた扉を抜ければ、平原が存在していた。

 そしてその先、そこには一人の老人が杖を手にこちらを見据えている。

 

「じじい───」

「その前に、その者をこちらへ寄越さぬか」

 

 老人──『賢者』の視線が貫く先はカイトが背負うアディン。

 

「後に説明する。一刻も早く処置せねばならん。これから起きることに口を出さず、邪魔をするでないぞ」

 

 彼は少年を受け取ると地面に寝かせ、徐に懐へ手を入れれば突如として短刀をアディンの胸に突き刺した(・・・・・)

 これには《蒼の双星》は平静を保てなかった。。

 だが、それを止めたのは他ならない青と赤の男女だ。鋭く放たれた静止に、それぞれの得物を手にした面々がピタッと足を止める。

 熱く煮えたぎる怒りの中、彼らはやはり強かった。

 何とか絞り出した理性で目の前の光景を見れば、短刀が刺さった胸から一滴の血も漏れだしていないことに気づく。

 そして、『賢者』が何事かを唱えると短刀はアディンに吸い込まれ、頭上へと翳した手の平の先に現れたのは薄いガラスのような半透明の板だった。大きさは縦に一人、横に一人人が入るくらいだろうか。

 

「これより、アディン・ネルヴァ──及びアディーテス・ピレモアの過去をここに映し出すぞ。それと平行して眠っているアディンにも同じものを見させるが、これについて話しておくかの」

 

 過去を映す。

 荒唐無稽なことだが、相手が『賢者』となれば話は別だ。

 何せ、世界で二番目(・・・)の魔法使いなのだから。

 

「過去はこやつの場合魔力が記憶しておる、そう誰にでも出来ることではあらん」

 

 それは、アディンの存在が『黒龍』の生まれ変わり、もしくはその子孫ということだろうか。

 

「お主達に知る権利があるため見せるが、本来はアディンのみに限定したものじゃ」

 

 プライバシーな抵触する、がしかし家族同然の関係である彼らにはその必要がある、と。

 

「加えて、この【記憶の回廊(メモリーオブヴィアス)】が終わればアディンは『黒龍』以前に戻る、そこからは死闘となるがの」

 

 死闘、聞き逃せない単語だ。

 彼らが問い詰めると『賢者』は余すことなく概要を話した。

 

「記憶を戻す───それは感情や力も呼び起こすということじゃ。あやつが魔人になった動機は『復讐』、憎悪も酷いものじゃった。目が覚めたアディンはそのときと同じになるじゃろう。見させるのは丁度、魔人になる瞬間までじゃからな。低い確率じゃが、アディンがもし『記憶の奔流』に耐え抜けばそんなこともないじゃろうが……これについてはこやつに期待する他ありえん」

 

 何が彼に起きたのか。

 何が彼に起こっているのか。

 何が彼に起こされているのか。

 それを今垣間見る。

 アディン・ネルヴァ──曰くアディーテス・ピレモアという人物の生涯が今明かされる。

 

「────心して見よ、お主達の中にも関係がある者は居る。一時も目を離すでないぞ。よいか?」

 

 その問いかけに応える者はいない。

 

「では始める──【映し出させ昔日が夢】」

 

 短刀が吸い込まれた箇所から光が立ち上ぼり、板に接続される。

 

 

 そして激しい嵐が次第に晴れ映し出されたのは、長閑な田園の風景だった。

 

 

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