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黒龍のヴェンデッタ・ルード  作者: 陽下城三太
第六章 賢者の洞窟
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第六話 再会


 アミエラの商隊を襲う盗賊を殲滅するため、《蒼の双星》は三つに別れた。

 一つは足の速いジャスミンとルナに先回りさせ挟み討ちするもの。

 二つはアディンが眠る馬車を守りながら着実に倒していくもの。

 三つは頭格を討ち取るためにジャックに単独で盗賊の拠点に攻め込むさせるもの。

 そしてこれが盗賊の討伐を迅速にした。

 掃討が終わり、天幕で休む隊員達の回復にアンナが参加し、カイトを付き添いとして回っていたときだった。

 その天幕に入った二人は言葉を失い、奥に座る麗人に目が釘付けになった。

 そのときだった。

 タイミング悪くアンナとカイトの気配を嗅ぎ付けたジャスミンが天幕に入ってきたのは。

 感動的再会にはならないとどこか悟っていたからこそ、二人は不味いと咄嗟に思ったのだろう。

 そして案の定、気色悪い笑みで手を広げ地を蹴った麗人に、ジャスミンのビンタが放たれたのだった。

 

 

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 

 

「本当に……お兄なわけ?」

 

 怪訝な表情のジャスミン。

 対して対面する麗人の相貌には満面の笑みが張り付けられている。

 

「だから俺の名前はリア・ユグド!、正真正銘ジャスミンのお姉ちゃんだって言ってるだろぉ~?」

 

 恐らく、相手が姉であるかどうかより本当にこんなに気色悪いのが姉なのかという戸惑いだろう。

 ジャスミンはずっと家族というものに憧れてきた。

 幼少の頃の薄い記憶を大切に胸に保管してきた。

 《蒼の双星》に家族としての拠り所さえ見つけてきた。

 だというのに、こんなに残念なものが相手だというのは、流石のジャスミンにも堪えてしまったのだ。

 

「ほらっ、愛しのお姉ちゃんだよ!、おいでジャスミン!」

「近寄んな!」

「ブベラッ!?」

 

 もはやビンタではない。

 グーパンである。

 

「証明できるのは?」

「一五歳!」

「…どこに住んでた?」

「エルフの森の北西部!」

「……お母さんの名前は?」

「ローズ・ユグド!」

「………私の大切なものは?」

「俺!」

「…………私の好きなものは?」

「俺!」

「……………私の嫌いなものは?」

「トゲトゲの葉っぱ!」

「うっ……」

「ジャスミン、貴女そんなもの嫌いだったの?」

「いや、ちょっとだけで……」

「小さい頃にやんちゃして転けたんだよな!それで全身に葉っぱの傷が出来て痛い痛いって泣い───痛い痛い痛い!?」

「………………はぁ、みんな……どうやら本当にお兄みたい……」

 

 気持ちは分かるよ、という同情の眼差しがジャスミンを更に羞恥に苛ませる。

 

「ならジャスミン、やることがあるんじゃないかしら?」

「…………わかったわよ」

「ん?ん?、なんだなん───っ!?」

 

 驚愕に染まるリアの相貌。

 それもそうだろう。

 剣呑な態度を崩さなかったあのジャスミンが抱きついてきたのだから。

 

「───た」

「───?」

「──った」

「────」

「本当に……よかった…」

「…………」

「いきててくれて、ありがとうっ……」

「…………っ」

「お兄………」

「ジャスミン………」

 

 引き裂かれていた姉妹が、やっと再会できた瞬間だった。

 

 

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 

 

 それから色々あり、リアがこちらに合流した。

 

「それで、話は済ませてきたかしら?」

「はい!」

 

 青髪の美女──アンナは俯くリアの額をパチンと弾き、その能天気な顔をする彼女に言った。

 

「吹っ切れたみたいね。あと、堅苦しいのは無し、ここは仲間───家族として共に過ごすギルドよ」

「は───ああ、わかったさ」

 

 晴々しい表情。

 それを見ただけでアンナは満足したのか、笑みを作ってから指を一つ立てた。

 

「じゃ、まずは一つ連絡」

「?」

「私とアミエラは知り合いだし貴方より長い付き合いだから、もう会えないなんてことはないわ。帝都に寄ったときに普通に話してきなさい」

「─────え?」

「馬車に戻るわよ。貴女が何を出来るのかは道中に教えてもらうし、私達が何をするのかは一緒に教えるわ。さっさと来なさい」

「ちょ、え?、待って──おい!どういうことだよ!」

「ついてきなさ~い」

「おい待てって!………はぁ、しゃあない」

 

 困惑を隠せなかったリアだったが、すぐに口端を吊り上げていった。

 

「《蒼の双星》………愉快な奴が多そうだ」

 

 

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 

 

「結局、貴女は守りに強いってわけね?」

「ああ、隊ちょ──アミエラから神器(アイギス)も貰ったしな」

「神器………譲渡できるのかい?」

「知らん、実際に渡されたからできるんだろうが……」

「ちょっと出してみてくれないかしら?」

「ああ、やってみる」

 

 リアは手を前方に伸ばし、そして唱えた。

 

「アイギス……無理みたいだな」

「そうね、神器の名前を言うときに魔力が篭ってなかったもの」

「だよね、アンナのみたいにゾクッてくるのなかったもん」

「ああ、感覚的な同じ格を持つ者どうしでわかるが、リアからは少しも───いや、ほんの少しなら気配を感じるが」

 

 神器持ちであるアンナとルナ、そしてリンカがリアの神器を扱う器が足りてないと証明する。

 

「まあ、そのうち慣れるだろうよ。今まで『アイギス』はアミエラの魔力の波長に合わせていただろうからな、リアの魔力に順応すればあいつとはまた違う力を発揮するぜ」

 

 神器の特性、それは順応。

 本来の性質も持ちながら、所有者に最適化する『器』だ。

 

「魔力は『土』、スキルは[予知]。どこまでそれは視れるんだ?」

 

 カイトが必要なことだと尋ねる。

 

「自分や仲間の命の危機ならノーリスクでその場面が写し出されるし、任意発動なら膨大なマナとマインドを持っていかれて映像だな」

「なるほど、アビリティはやはり?」

「〈防御〉がB、〈魔導〉がD、〈盾士〉がC、〈打撃〉がF、〈破砕〉がG、〈精力治癒〉がCだ」

「ん?、お前武器は?」

 

 〈打撃〉と〈破砕〉なら斧や槌のはずだが、リアはそんなものを持っているようには見えない。神器が譲渡できたのなら『器』を持っているわけでもない。ならどこにあるのか、というレオの問いにリアは首を傾げながら答えた。

 

「殴る蹴るの暴行だけど?」

「……まあ盾で防いでんならそっちの方がいいか」

「これで大体は把握できたわね。それじゃ、今度は私達の目的を話しましょうか」

 

 一段落ついたと、アンナがそう切り出した。

 

「ああ、俺もそれは気になっていた。《蒼の双星》の拠点って帝都にあんだろ?、なんで何も無いこっちにきてんだ?」

「『賢者』よ」

「は?」

「『賢者』だ」

「え、どういう──」

「お兄、『賢者』ってわかる?」

「いや、当たり前だろ。だが……」

「あのね、私達アディンを助けるために『賢者』のとこに行くの」

「あ、アディンってのはこいつだな」

 

 親指でレオが示す先を見れば、そこには一人の少年が寝かされていた。

 紺の髪の自分より二つ下ほどの少年だ。

 

「説明するわね───」

 

 

 

 そして、アンナは一から全てを説明するのだった。

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