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黒龍のヴェンデッタ・ルード  作者: 陽下城三太
第五章 魔王の城
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第一話 天よりの来訪者

姉の存在、そして生存の情報を手に入れたアディン達が向かった先はカノプスの森。それまでの道中での思いがけない拾い者と共に見つけたのは、異次元に通じる歪んだ渦のある洞窟であった。半ば確信で求めるものがあると飛び込んだ彼らがそこで目にしたものとは………。

 これは、数奇な運命を生きる彼彼女らの物語である。


────────────


五話分余裕ができました。投稿を再開します。まず最初はプロローグらしきものをどうぞ。まだまだ拙い文章や構成ですが、楽しんでもらえたら幸いです。


 リンカの名前はリンカ・ヴァルト。

 

 『メルリーズ』という村でお母さんとお姉ちゃん、妹の四人で暮らしていた。

 

 とっても仲良しで、不満なんて何もなかった。

 

 失敗もする。

 

 成功もする。

 

 叱られることもよくあったけれど、それが愛情だとわかっていた。

 

 お母さんは厳しいけれど優しい人だった。

 

 お父さんが天国に行ってしまっても、悲しむリンカ達姉妹を慰め、元気付けてくれた。

 

 自分だって辛いはずなのに。

 

 一番痛いのはお母さんのはずなのに。

 

 だから大好きだ。

 

 お母さんが大好きだ。

 

 

 

 お姉ちゃんはよくリンカに意地悪をしてきた。

 

 好きなおかずを盗ったり、お菓子を盗ったり、服を盗ったり。

 

 お姉ちゃんはよく物を盗る人だった。

 

 でもそれが愛情だと知っていた。

 

 お姉ちゃんは親しい人からしか物を盗らなかった。

 

 本当に大事なものを盗ったりすることはなかったな。

 

 

 

 妹は本当に可愛い可愛い妹だった。

 

 姉二人の後ろをトコトコとついてきてお姉ちゃんお姉ちゃんと言う姿には何度にやけさせられたことか。

 

 妹はお母さんによく似て優しい子だった。

 

 辛いことがあれば一緒にその痛みを分かち合ってくれた。

 

 悲しいことがあれば背中を擦ってくれた。

 

 

 

 みんなみんなリンカの大切な家族。

 

 優しくて、暖かくて、楽しくて、心安らぐ大切な家族。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな家族が、血を流してリンカの前に横たわっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イヤアアアアアアァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァアアアアアアアアア──────!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 耳鳴りがする。

 

 ここはどこだろうか。

 

 どれほど歩いただろうか。

 

 私の名前はリンカ・ヴァルト。

 

 うん、名前はわかる。

 

 でも、自分が今どこにいるのかがわからない。

 

 バラバラになった友人。

 

 グチャグチャになった美味しいケーキ。

 

 四肢と頭蓋を砕かれている先生。

 

 粉々になっている良く行く服屋の看板。

 

 臓腑を腹から溢しているおじさん。

 

 瓦礫から伸びる手。

 

 身体を無くした首。

 

 一本のみの脚。

 

 血溜まりに浮かぶ指の破片。

 

 見たことのない風景が広がっている。

 

 

「───ぁ…………」

 

 

 声が出ない。

 

 掠れていて自分の耳でもはっきりと聞き取れない。

 

 耳鳴りで音など何もないが。

 

 視界だってぼやけている。

 

 素肌の感覚だってない。

 

 私は今、ただただ歩き続けている。

 

 外を目指して。

 

 どこかにある外縁を目指して。

 

 私は今どこにいるのだろうか。

 

 

「───お゛お゛え゛え゛え゛…………」

 

 

 脳裏に焼き付いた光景。

 

 もう一生忘れることはないだろう。

 

 家族の無惨な姿を。

 

 私だけが逃がされたという事実を。

 

 ああ、何で一緒に死ななかったのだろうか。

 

 何で私は死ねないのだろうか。

 

 ガラスの破片で喉笛を描き切ろうとした。

 

 できなかった。

 

 どうやら意思とは違い身体は生きたがっているみたいだった。

 

 だから意志で死ぬのではなく結果的に死のうと考えた。

 

 ここは空に浮かぶ村だ。

 

 下に落ちれば死ねるだろう。

 

 お母さんがバレないからとステイタスを封印してくれたことが幸いし、私が死ねる要因になる。

 

 ああ、辿り着いた。

 

 いつの間にか着いていた。

 

 眼下に広がる雲海。

 

 背後に平がる光景とは裏腹に雲は白く、太陽は私を照らしていた。

 

 処刑台に上がる囚人の気分だ。

 

 でも囚人はいい。

 

 殺して貰えるのだから。

 

 だが私は今から自分で死ぬのだ。

 

 あと一歩。

 

 あと一歩踏み出せば私は地面に墜落し藻屑となるだろう。

 

 せめて一瞬で死ねればいいな。

 

 お母さんごめんなさい。

 

 折角逃がしてもらったのに。

 

 お姉ちゃんごめんなさい。

 

 私を守ってくれたのに。

 

 妹ごめんなさい。

 

 私に大丈夫と言ってくれたのに。

 

 ごめんなさい。

 

 今から私は死にます。

 

 

 

 すぐにそっちに行くから。

 

 

 

 

 そうして、私は雲海へと身を投げた。

途中で人称が変わったのは人格の変化です。

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