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勇者の俺より幼馴染が強すぎた件  作者: 丸いドーナツ


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1/13

村から出発できない。

私は転生者。ゼルファの魂をずっと追い続けている。

最初の人生で、私は取り返しのつかない過ちを犯した。

だから、今度こそ同じ過ちは繰り返さない。

そう、心に誓った。


*


俺の名はアルク。勇者に選ばれた男だ。


十六年前、ある予言が告げられた。


『この日に生まれた子供の中から、十六歳の誕生日に勇者の印を宿す者が現れる』


そして今日、十六歳の誕生日を迎えた俺の右手が、突然眩い光を放った。


光が収まると、右手の甲には予言にあった勇者の印が浮かび上がっていた。


ずっと夢見ていた勇者に、俺はなれたのだ。


幼い頃から、剣士だった父に憧れていた。


父は村を守るため、毎日のように剣を振り、周辺に現れる魔物を退治していた。


そんな父も、数年前に病で亡くなった。


それからは俺が父の剣を受け継ぎ、村の周辺を見回っては魔物を倒してきた。


そして、ついに勇者に選ばれた。


俺は亡き父に、心の中で誓った。


――父さん、俺が世界を救ってみせる。


村の人たちも、俺が勇者に選ばれたことを大いに喜んでくれた。

「村の英雄だ!」

「お前は村の誇りだ!」

皆に囲まれ、次々と祝福の言葉をかけられた。


勇者の印を持つ者は、王都へ赴き、国王に謁見しなければならない。そのため、王都から迎えの馬車が来る手筈になっていた。


だが、王都へ向かう前に、不可解な出来事が起きた。


迎えに来たはずの三人の兵士が、縄でぐるぐる巻きにされ、村の入口に転がされていたのだ。


俺は慌てて兵士たちに駆け寄り、縄を解こうとした。しかし、結び目は石のように硬く締まっていて、びくともしない。


「……どうして縛られてるんだ? 今助けるから、待ってろ」


もう一度、力いっぱい縄を引っ張ってみる。


「何だこれ、硬すぎるだろ。誰がこんなことを……」


兵士たちは顔を真っ青にして、ガタガタと震えている。


何があったのか尋ねても、誰一人として答えようとしない。


ようやく一人が口を開いたかと思えば、震える声で懇願してきた。


「お、お願いです、勇者様……! どうか、我々を王都へ帰してください……!」


そのときだった。


「アルク! 勇者に選ばれたんだ! すごいじゃない! おめでとう! さすが私の勇者!」


背後から、聞き慣れた声がした。


振り返ると、そこには同い年の幼馴染、エリザが立っていた。赤い髪の綺麗な子だ。


いつもと変わらない、とびきり明るい笑顔を浮かべている。


「おう、ありがとな、エリザ。お前だけの勇者じゃないけどな」


俺が答えた、その直後だった。


背後から、歯をガチガチと鳴らす音が聞こえてきた。


振り返ると、兵士たちが先ほどにも増して激しく震えている。


「大丈夫ですか?」


エリザが可憐な笑みを浮かべ、兵士たちに近寄っていった。


すると、兵士たちはまるで死神でも目撃したかのように目を見開き、次々と気を失ってしまった。


……長旅で疲れているのかな?


*


アルクが村のみんなから祝福されていた頃、本当は私も一緒にお祝いしたかったんだけど、先にやっておきたいことがあった。


だって、アルクが王都へ行くんだもん。


王都までの道には魔物がいるって聞いたし、危ない目になんて遭わせられない。


だから、先に全部追い払っておかなくちゃね。


……でも、魔物って怖いのよね。


できれば戦いたくないし、怪我だってしたくない。


だけど、アルクのためなら大丈夫!


よし、頑張ろう!


そんなことを考えながら森を進んでいると、木々の向こうに大きな影が見えた。


……あれ? こんなところに、でかい鳥がいる。


近づいてみると、十メートルはあろうかという、翼の生えた巨大なドラゴンだった。


ドラゴンが尾を振り回すと、数本の木々が薙ぎ倒された。


『ここはガイヤドラゴンが治める地。早々に立ち去るがよい、小娘が』


うわぁ……大きい。


でも、こんなのがアルクの前に現れたら大変だよね。


「アンタ、ここのボスね。今からここのボスは私だから。いいわね?」


ドラゴンは体に蒼白い光をまとわせた。周囲の空気がバチバチと震え始める。


『黙って聞いておれば、好き勝手言いおって! 死ぬがよい、小娘が!』


ドラゴンは口から蒼い炎を吐き出した。


炎は地面を削りながら、こちらへ迫ってくる。


その瞬間、私の両手の甲が輝き出した。


地面の土が浮き上がり、木々が激しく揺れ始める。


迫り来る蒼炎を、私は片手で弾き飛ばした。


弾かれた炎は周囲の木々を焼き払い、岩さえも溶かしていく。


ガイヤドラゴンが驚愕したように目を見開いた。


「仕方ないわね。死んでも知らないわよ。ギガストーム!」


私の周囲に、凄まじい風が巻き起こった。


風は瞬く間に巨大な竜巻となり、土や岩、樹木を巻き上げながらガイヤドラゴンへと迫る。


『なっ……!?』


逃げる間もなく、ガイヤドラゴンの巨体は竜巻に飲み込まれた。


巨体が岩や樹木とともに天高く吹き飛ばされ、轟音を響かせながら地面に叩きつけられる。


私は倒れたガイヤドラゴンの前に立ち、その顔を見下ろした。


「ここのボスは私だから。分かった?」


『……ひぃ! そ、その紋章……あなたは……!』


「この周辺の魔物に、ここから立ち去るように伝えなさい。いいわね? じゃないと、ここ一帯を更地にするから」


『……仰せの通りに』


よかったぁ。ちゃんと言うことを聞いてくれた。


これでアルクも安心して王都へ行けるね。


あとは馬車だけ。


いつ来るのか、見張っておかなくちゃ。


だって、あの馬車にアルクが一人で乗っていっちゃったら、私が一緒に付いていけなくなっちゃうじゃない。


アルクと離れ離れになるなんて、絶対に嫌だもんね。

読んでいただき、ありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、ブックマークや評価をしていただけると励みになります。


今後ともよろしくお願いします。

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