ep1 きみと青いそらを永遠に見られますように
二〇三〇年十二月三十一日、世間はあるニュースで話題が持ち切りだった。
『一月一日の午前七時頃、直径約十キロメートルの隕石が日本に落下』
「このニュースばっかり。というか本当に落ちるのかなあ。ほんとに落ちたら、死んじゃうのかな」
「うーん、専門家の人たちも防ぐのは困難だって言ってるし、なるようになるんじゃない? 私たちは無力ね」
お母さんは洗い物をしながら、いつもと同じ声色で言った。
私はテレビを消して、隕石の様子を見ようと椅子から立ち上がり、窓のカーテンを開ける。
夜闇に、いつもとは違う光が一つあった。
「なんか、夕方見た時より光が近く見え……」
私が最後まで言う前に、お母さんが声を上げた。
「麻衣、今日は夜の外出を許可するから、悔いが残らないようにしてきなさい」
振り返ると、お母さんは洗い物の手を止めて、真剣な顔で私を見ていた。
「……わかった、友達の所行ってくる。ありがとう、お母さん」
私は急いでメッセージアプリを起動し、グループチャットを開いた。
『皆で最後会わない?』
◇
二〇三一年一月一日。目が覚めると、いつもと違う空間にいた。
「あれ、私……生きてるの?」
私は仰向けで寝ていた。上を見上げても、そこにあるのは暗い空間だけだった。
「朝のはずなのに、空が暗い?」
体を起こして、周りを確認するために手を伸ばした。
あれ、昨日の夜は、友人と私三人で、一つの布団で眠ったはずなんだけど……。
「誰か、助けて」
小さく、声が聞こえた。声が聞こえたってことは、私の近くにいるのかな?
私はゆっくりと立ち上がり、声の主を探した。
「痛っ!」
「ご、ごめんなさっ」
「ひ、人! やっと人に会えた」
私は知らない女性に抱き付かれた。
「ちょっ!?」
「あ、ごめん! つい人に会えたことが嬉しくて」
「い、いえ……あ、貴方の名前は……」
名前を聞いたら、彼女は首を振り、答える。
「名前はね、言えないの。ダメ」
「え? なんで?」
「絶対、言っちゃダメ」
さっきまでいきなり抱きついてきた人とは思えないくらい、真剣さが伝わってくる声だった。
「……ねえ、それより変なもの見つけちゃって。ちょっとついてきてほしいんだけど、いいかな?」
「う、うん、わかった」
ここにずっといても何も変わらないし、着いていこうかな、一人も寂しいし。
数分歩くと、広い空間へ繋がった。空間の中央には、魔法陣に見えるなにかが床にあった。
魔法陣、としか言えないよね、これもはや。
「なにここ」
「私もわからない。でも、普通じゃないのはわかる」
私は魔法陣に近づく。
「ちょっと、危ないよ」
「流石に、触れはしないよ」
私はどんどんと近づいていき、一歩前に進めば触れるところまでやってきた。
「触れちゃ、だめだよ?」
無意識に、足が動いた。
「ダメ!」
触れたら、私の目の前に文字が浮かび上がった。
『能力を付与します、スキルを付与します。ステータスを表示しますか? はい、いいえ』
「なにこれ」
「どうしたの?」
「いや、なんかゲームみたいな文字が見えてて……ステータス表示とか書いてあるよ」
「ステータス表示してみる?」
「でも、どうやって?」
「心の中で唱える、とか?」
「と、とりあえずやってみる」
私は心の中で『ステータス表示』と唱えた。
【本名を言わないでください。この前には絶対に戻れません。清水麻衣。コードネーム、ルミナスエリーゼ。年齢十八歳】
なにこれ、本名を言うな、この前には戻れない? なにをいってるんだろうか。
待って、さっきあの子が本名は言っちゃダメっていってたよね?
「どうしたの? そんなに悩んだ顔して」
「いや、なんでもないよ」
聞けばいいだけなのに、なぜか聞いてはいけないと思った。
「そっか」
私はまた、浮かんでいる文字に目を移す。
『この前には絶対に戻れません』
この前? いつのことを指しているんだろうか。
隕石が落ちる前とか、だろうか?
私は考えても意味がないと思い、考えることを一旦やめた。
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