砂の国からの手紙
マールへ
マール、お元気ですか。
こうして誰かに手紙を書くのが初めてなので、どういう風に書いて良いのか分からなくて、もし読みにくかったらごめんなさい。
最初はこんな風に、「元気ですか?」って聞くのが良いと、養母が教えてくれました。
書きたいことが沢山あって、何から書いたら良いのかすごく迷っています。
まずはそう、私は今、西のエルシャハルにいます。
だからマールが最後に、「国境の知り合いに声をかけておく」と言ってくれていたのが、無駄になっていたらごめんなさい。
すごく速い馬であっという間に国境を越えたので、入れ違いになっていたら申し訳ないなと思っています。
ジアードからは、マールには伝えたと聞いたのですが、ちゃんと伝わっていますように。
ジアードというのが、私をここに連れてきてくれた人です。
あの日、最後に店に行った時、一緒にいた背の高い黒髪の騎士です。
彼はなんと、エルシャハルの王子様でした。
それもエルシャハルのお城に着いてから知ったので、本当にびっくりしました。
変な人じゃなくて良かったけど、でもまさか、王子様だとは全然思ってもみませんでした。
旅にも慣れていて、色んな国のことを沢山知っていて、ずっと従者みたいに私のことを世話してくれました。
このことは、マールへの手紙に書いていいと、許可をもらっています。
でも、マールはもう知っているとジアードが言っていました。
二人は知り合いだったのかな?
ジアードから、マールはすごく有名な冒険者だったと教えてもらいました。
もっと沢山、色んな国の話とか聞けば良かったなって思っています。
そう、近いうちに、エルシャハルは新しい王様が即位されます。
ジアードのお兄さんが次の王様で、彼は王弟殿下になるそうです。
そう呼ぶとすごく嫌そうなので、恐れ多いことに名前で呼ぶことを許してもらっています。
でもこの国は、王子様だけじゃなくて貴族達も、ラヴィリエとは全然違っています。
皆、使用人達と一緒の時間に起きて、同じように働きながら暮らしています。
昼間はすごく暑いので、昼寝をしたり(使用人達もです)、起きている時はずっとしゃべっています。
マールみたいに、しゃべりながら働いていて、皆すごく楽しそうです。
実は今、私はカフェで働いています。
雲雀亭ではマールも、リンさんやトマスも、皆楽しそうだったので、実はずっと憧れていました。
マールみたいにはまだまだ全然働けていないけれど、それでもすごく楽しいです。
こっちのご飯はスパイスが沢山使われていて、ラヴィリエとは全然違います。
ご飯だけじゃなくて、街中にスパイスの香りがするのが、エルシャハルの特徴かもしれません。
こっちのパンは、しっかり焼いてあって炭火の味がします。
時々ちょっとだけ、雲雀亭のサンドイッチが懐かしいです。
面白そうなスパイスをいくつか同封します。
きっとマールなら、使い方が分かるんじゃないかなと思います。
聖女の力はまだあるみたいだけど、ジアードは使わなくてもいいと言ってくれています。
でも実はね、祈るのはずっと、ラヴィリエでは毎日の習慣だったから、祈らないと落ち着かなくて。
今でも、朝起きてからと夜寝る前にお祈りをしています。
新しい家族と、エルシャハルの街と、マールの店が幸福であるようにって祈っています。
それくらいなら、この力を授けてくれたラヴィリエの神様も、守ってくれるんじゃないかなって思います。
新しい家族のことは、まだ書いていないと思うんだけど、もう書く場所がなくなりそうです。
本当はもっと、料理のこととか、カフェのこととか、街のことも書きたかったんだけど、また次の手紙で書くことにします。
ジアードが、直接マールの手に渡すと言ってくれているので、次もきっと送れると思います。
読みにくかったらごめんなさい。
でもこうして誰かに手紙を書けるのが、すごく嬉しいです。
また手紙を書きます。
どうぞお元気で、マール様。
アステラ
これを書くの忘れていました。
私、エルシャハルに来て良かったです。




