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第63話 思えば遠くに……

 三時間は変身不能になりそうなレベルの嵐が過ぎ去った後、二人はガッチリと握手を交わして仲良くなった。

 ……女子のこういう急展開なところについていけないのは俺だけだろうか……と思ったのだが、先ほどの会話からして二人は……


「えーと、二人は前からの知り合いだったのか?」


 そう。初めて会ったとは思えないほどにお互いのことを良く知っていた。まあ、むしろ出会って直ぐに仲が悪くなるようなことも珍しいけど。

 二人はテーブルを挟んでお互いソファーに座り、俺はその横のベットに座って二人に話を聞く。


「まあ、そうね。一応、会社の一大プロジェクトであるロボオンの、その中でのイベントの中心人物になる歌姫が、ロボオンの会社に技術提携している会社にお披露目会みたいのが開かれた時に、ちょっと」


 あー、桜子は香坂が言うとおり、社長令嬢だったっけ。その時に知り合っていたと。


「朱音さんとはその時、私の方から声をかけさせていただいたんです。私と歳が近いのに、お仕事をなさって、しかも一人暮らし……憧れの人でしたわ」

「え? いやあ、それほどでも……」


 尊敬の視線を受けててれる香坂。

 ……料理から始まる家事全般が不得意で、風呂掃除をしたくないから近くの銭湯に通い、朝昼晩の食事がほぼ外食(そのうち何回が我が家の食事)と言う女を憧れの女性?


「セーイーチーくーん? 何か言いたいことがあるのかなぁ?」

「いや、特には……」


 笑顔に殺気を乗せた、質問に見えて実質「何も言うなよ?」と言う脅しに全面降伏して、二人にも出した品質があまり良くなくて500ミリペットボトルになった『ポーション。メロンソーダ味』でのどを潤す。スキルlv上げで、かなりの数が余っているものだ。


「それで桜子は何で香坂の正体を見破れたんだ? 姿かたちは変わっても隠し通せぬ邪悪な気配を感じ取ったのか?」

「もしもーし? 邪悪って何かなー?」


 笑顔のままこっちのほっぺたをつねってくる香坂。そう言う所が邪悪だと言うんだ。痛覚が現実より少ないから遠慮なく引っ張ってくるし。


「朱音さんが言ってました通り、私は自宅からVRシステムを通してこの世界に入っているわけなのですが、そのVRシステムは母が用意してくれたものですので、上級ID……すなわちこの世界にとってある程度の身内と思われるのです」


 別にチート級な能力を持っているわけではないが、香坂の様なイベント使用のキャラの正体くらいは見破れるのだと言う。

 俺はてっきり、香坂がまたうっかり八兵衛をやったのかと呆れていたんだが……


「それよりセイチ! ギルド申請私も!」

「あー……そのことなんだけど、良いのか? 歌姫の仕事の関係で止められたりはしていないのか?」


 香坂はうっかり大失敗の実績があるので、俺も慎重になり過ぎなくらいに聞いておく。


「大丈夫、大丈夫。幸いなことに、桜子も関係者みたいなもんだし。ただ……」


 気まずそうに人差し指同士をくっつけもじもじして、


「私が入ると、その、気軽にギルドメンバーを増やせなくなると言うか、増やしてほしくないと言うか……私が辞めればいいだけなんだけど」


 いくら、他人には別の姿に見えるとはいえ、うっかり俺や桜子に声優の話をしないとも限らないわけである。

 まあ、その点で言えば問題は無いわけである。


「言った通り、ハイ・ゴーレムの名前に俺の名前を入れたくないから創っただけのギルドだしな。ただ……いないとは思うけど、入りたいって言う奴がいた時の断る理由を考えておかないとなー……」


 そう言った二人の断る理由。香坂編。


「ごめんごめん。言い忘れてたけどこれ三人用なんだ―」

「却下」


 ス○ちゃまキャラを二十歳でやれと言うのか?

 桜子編。


「俺のハーレムだからと断ればよろしいのでは? 男子はこれで断れますし、女子も嫌われることはあれど、メンバーに入れてくれと言う人はいないと思いますけど?」

「大却下だよっ!? 君は穏やかな顔のままとてつもないことを言うね!?」

「あらあら?」


 男子にも女子にも嫌われるような断り方をするつもりが断じてない俺は、首をかしげる桜子を睨み、自分で考えることにした。と言うかこの子、一般常識に良識を持っているんだから、今のはボケたのか? ボケた……んだよね?


 まあ、完璧な断り方など望むべくものでもないし。普通にメンバー募集はしていないと言うだけで良いか。

 部屋の広い場所で小さな子どもと小さなチビ白虎のじゃれあっているのを見て、三人とも一度ホッと心を穏やかにリセットした。


 それから女子同士の中学生活と高校生活の話し合いを聞きながらのんびりと一時間くらい過ごした。姉たちの会話を聞きながら過ごすと言うのは小さい頃からの慣れっこだったので、別だんつまらなくは無かった。


 聞き流せなかったのは二人の会話がロボオンのものになってからだった。


「そう言えば、今日は木曜の夜だけどさ。三日後のイベント戦って桜子はどうするの? 初心者でも楽しめる措置にはなってるけど、活躍したいんならハイ・ゴーレム手に入れていた方がいいかもよ?」

「そうですね……私も活躍するつもりは無かったのですが、セイチさんにギルドに入れてもらったことですし、お役に立ちたいとは思っているのですが……」


 ……あれ? み、三日後?




 ほかの三ギルドがハイ・ゴーレムを欲しがっていた理由の一つでもあります。あえてお互いが話題に上らせなかったのは、足元を見られたくなかったと言う……まあ、足元を見られるどころか逆に大幅値下げをしてもらったという良心が痛む展開に。生真面目な龍角さんが積極的に情報をくれたのはそういう理由もあったり……


 お気に入り登録、感想、評価ありがとうございます。またお待ちしております。


 初めての大規模イベントへの準備が開始されます次回で。

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