第26話 サーチ&デストロイを夢見て
「『グリーン・スライム。風属性。lv3。ランクD』か。EやFじゃないだけ、運がいいのかな……」
「最初の戦闘で、CもBも飛ばしてAを取った人のセリフとは思えませんですね」
コラムダさんの突っ込みはスルーしておく。
俺だって、Aのカードが出ていきなり風のコアをゲット! ……と言うのも夢見ていたが、やはり現実……いや、仮想も甘くなかったということで。
あの後、二人のいつも通りかつ元気な態度に胸の興奮は割とあっさり消え去り、落ち着きを取り戻した俺は、グリーン・スライムのカードを手に入れた。
手に入れたカードのランクはD。薬草のカードもランクDだったので、このエリアで手に入るカードのランクはDが平均なのか……それとも何かしらのスキルレベルが上がれば、もっと上のランクのカードが出やすいのか。
定位置――俺の頭の上に戻ったアイリスにスライムのカードを渡して、辺りを見回す。近くに薬草の反応とモンスターの反応がいくつか。
「アイリスちゃんのサーチで探れる範囲っていまのところ、どのくらいなんです? 一番遠くのモンスターの位置を教えてください」
コラムダさんがいきなりそんなことを言ってきたので、剣を地面に突き刺して、片手にアイリスを乗せて二人で一斉に一番遠くの煙を指さす。
「ふむ。やはり風属性の魔法を覚えていないと、狭い範囲になってしまいますね」
「? 魔法のスキルレベルがサーチの能力に関係があるんですか?」
「はい。アイリスちゃん、説明できます?」
コラムダさんに聞かれた俺の手に乗っているアイリスは、俺に向き直り一回うなずいて説明を開始した。
「火属性のサーチは熱源を探るので精霊AI――私の経験が上がれば、敵の強さだけでは無く、どのモンスターが潜んでいるのかもある程度分かるようになります。範囲はあまり広くありません」
ふむふむ。火属性はモンスターの識別がしやすい。
「風属性のサーチは音や匂いなどでサーチするので、範囲は他の属性よりはるかに広いですが、正確性――つまりどんなモンスターやアイテムが落ちているかなどはわかりづらくなっています」
風属性は範囲が広い分、正確性に欠ける。
「地属性のサーチは大地の震動などから探るもので、大地を駆けるモンスターに対しては有効ですが、ほとんど動かなかったり地面を揺らさない移動――例えば先ほどのスライムに対してはほとんど効果がありません……が、採取できる草花、伐採できる木、採掘出来る場所……アイテム関連に対して凄く強いサーチです」
おお……鉱石とか欲しい俺にとって、一番良い感じじゃないか。
「水属性のサーチは、水の中に居るモンスターや魚などを探るのに最適ですが、他にも生命力を探知するので、生きているモンスターに対してはかなり有効です。ただし、生命力探知の範囲は狭いです」
……なるほど。結局のところは、
「全ての属性の魔法を手に入れて強化すれば、サーチの能力はどんどん高まるわけですね」
「もちろん、アイリスちゃん自身のレベルが上がれば、サーチそのものの能力が底上げされるわけですから必須と言うわけじゃないですけど、一つか二つは上げるのが良いと思います」
コラムダさんの言葉に頷きを返し、説明してくれたアイリスの頭を人差し指で撫でてやる。
俺が持っているのは火属性と、地属性。敵の識別がしやすい火と、素材集めがしやすい地を持っているわけだ。風が無い分、範囲はそこまで広くないし、水に潜んでいるモンスターに対してはほとんど無力……と言った所か。
確かに魔法は大事だな。その魔法を覚えるのに必要で、ハイ・ゴーレムにも絶対必要な素材……コア。高騰する予感がビンビンする。
そのためにもスライムの乱獲をしたい所だが、倒すのにアイリスの攻撃を入れて合計三回もの攻撃が必要だった。しかもそのどれもが弱点たるコアにヒットしてだ。
今の装備じゃ、効率が悪いな……一度もダメージを喰らわなかったが、スライムをサーチで見ると出す煙は黄色――今の俺たちと同ランクの相手と言うことだ。と言うことは、当たり所が悪ければ三回の攻撃でこちらも死ぬと考えた方が良い。
もちろん、一番の雑魚モンスターだろうから、攻撃の予備動作などはわかりやすいので避けやすくはある。一度縮むようになる、あの予備動作を見逃さなければダメージを受けることは無いだろう。無論、それは相手が一匹限定の話だが。
やっぱりあそこに見える大きな岩の所へ行って見るか。幸い、地属性のサーチが出来るので鉱石を手に入れることができるはずだ。
剣、鎧、籠手、具足……一通りの武器と防具が造れれば、敵との戦いが楽になる。敵との戦いが楽になれば、モンスターの素材を手に入れやすいし、薬草などの素材も安全に採取できるようになる。
生産者の俺はまず武器防具を強くするべきだな……と目標を決めた俺は、アイリスの頭を撫でるのをやめて、アイリスを定位置に戻す。
「二人とも、鉱石が欲しいからあの巨大な岩のある所まで行きたいんだけど、良い?」
「はい、マスター」
「了解です」
雲に届くほどではないが、ここからでもその大きさを視認出来る事から、かなり遠くにある岩まで俺たちは行くことにした。
基本、道中のスライムは倒し、野良ウルフは避けて行く方向で。
まだ……戦闘で試していないモノがあるしな。
俺は少しだけ期待しながら歩きだした。
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