依頼11件目「開戦」
はい皆さん!
zeillightだよ!
もうね、第一志望受かったよ。
やったね。そんな中で書いた小説だよー。
前書きもやる気ないよー。
楽しんでねー。
博麗神社にて魔理沙達が紅い目の零狐と対話している頃。
いつもの青い目をした零狐は迷いの竹林にいた。そこにはいつもの様に静けさがあり、落ち着いた雰囲気があった。
「憎悪、悲哀、絶望…人も妖怪もそういうのを溜め込んでる奴は、もう一人の負の感情を持った自分と離れるか発散しなければ精神的につらくなる…。」
永遠亭では二人の妖怪が話していた。
片方はもちろん幻想郷一の医者。
「八意 永琳」だった。
「あぁ。だから俺はお前に言われた方法を試してみたんだが…これ違和感凄くないか。」
「いや…むしろ前よりこっちの方が格好はいい気がするわよ?」
一週間前、紅魔館の依頼をこなしてからと言うもの頻繁に現れる零狐のもう一つの人格。
永琳は零狐の過去を調べ、負の感情だけを集約したもう一人の零狐。
これまでの事例から仲間が危機に陥った時や怒り等の負の感情が一定に達した時に現れる事がわかっていた。
しかし紅魔館の依頼でタガが外れたように頻繁にもう一つの人格が現れる様になっていた。ここ一週間、零狐は容姿を一変させて永琳の場所で心を落ち着かせていた。
『変わった零狐の容姿はTwitterにて紹介しますのでよろしくお願いします。』
「そろそろ万事屋の方に戻るよ。…もう一人の俺は全然出てこないしな…ありがとな永琳。」
「えぇ。でも恐らく…分離しただけだからもしかしたら貴女と離れて幻想郷の何処かにいる可能性もあるから…。」
零狐はそれを聞いて神妙な面持ちで振り返る。その口は重く開かれる。
「あぁ…いずれは幻想郷から追い出す。俺も奴には十分気を付ける。」
何かを思い出し零狐は足を止める。
「文って妖怪の山にいるんだっけか?」
「そうだけど…それがどうしたの?」
それだけ言葉を残し、竹林を出て行く。
同時刻の博麗神社。
紅い目。
むき出しの妖気と殺気。
霊夢と魔理沙にそれが向けられる。
「ど、どうした零狐。ちょっと怖いぜ…。」
魔理沙がゆっくりと立ち上がり、身構える。
紅い目の零狐は刀を横に振る。
付着していた血液が床に飛ぶ。
飛んだ血液が氷の様に凍り始める。
霊夢は何かに気づき、紅い目の零狐に静かに問う。
「それは…一体誰の…?」
「外で最強とかほざいてやる奴がいたからな。中々抵抗するから…殺っちまった。」
霊夢の表情は険しくなり手に力が加わる。
魔理沙は紅い目の零狐に畏怖の念を.抱き、魔女の箒を掴む。
紅い目が魔理沙の隠れた右手に向けられる。
次の瞬間。
魔理沙の右手に掴まれた八卦炉は紅い目の零狐に向けられ、瞬間的に発揮する。
「喰らえっ!!!スペルッ!!」
ーーー恋符『マスタースパーク』ーーー
凄まじい音が鳴り響く。
室内では眩しすぎる程の光が炸裂する。
八卦炉から魔法弾が集結した魔砲が解き放たれ、神社の外にまで魔砲は進んでいく。
やがて勢いは弱まり凄まじい粉塵と木々の枝が折れ落ちる音。
そして破壊された神社の室内が残る。
「ゲホッ…やったか?」
「あのままだったら殺られてたからね…。ありがとう魔理沙…。」
霊夢と魔理沙が咳をしながら神社の外に歩き出す。木が軋む音が鳴る。
音が鳴ったのは霊夢達の背後だった。
霊夢達が振り返った時。
何かに胴体を蹴られ鳥居まで吹っ飛ばされる霊夢。鳥居に体を打ち付け激しく咳き込む。
その後、前方に倒れ込み気を失う。
「霊夢ッ!!…くっ…。おい!何がしたいんだよ!私達がお前になんかしたのか!?」
紅い目の零狐に指を指し激しく攻めたてる魔理沙に気味の悪い笑みを浮かべ、ゆっくりと歩みを進める。
「そうだな。俺は何もされてない。ただ俺はあいつの溜め込んで来た憎悪やら絶望、殺意を受け止めていただけだ。」
紅い目の零狐から笑みが消え去る。
「だがな…。俺が負の感情の捌け口にされて、危機の時に呼び出されて力を使われる。そんな風な扱いを受けて…更には容姿を変えて俺を引き離しやがった。」
段々と妖気と殺気が黒い風の様に具現化し、紅い目の零狐を取り巻き始める。
その光景に魔理沙は息を呑む。
「自由になったからな…あいつの大切なもの全部壊してやる。あいつの憎しみを俺が幻想郷中の奴らにぶつけてやるんだよ。」
紅い目は正気を失った様に見開かれる。
刀を構え狂った様に笑う紅い目の零狐に、魔理沙は激しく反論しながら箒を握り締める。
「私達はあいつに憎まれる様な事した覚えはないが…あったとしてもこんな事!幻想郷中が許す訳ないぜ!」
「あぁ…そうだろうなぁ。だから何だ!?」
紅い目の零狐が叫んだと思えばその姿は一瞬にして消え、気配だけが残される。
ざわざわと、周りの木々が揺れ風も間髪なく吹き込み始める。
魔理沙は霊夢を抱き上げ、周りにせわしなく気を配る。
「霊夢!起きろ!さっさと逃げるぜ!」
その時、風に乗る様に紅い目の零狐の声が響き渡る。
「許される訳がない…。ならば許さない奴を…」
その場の木々も風も、全てが張り詰めた様な空気になった。
時間が止まったかと勘違いするくらいに静かすぎる状況が霊夢達を包む。
「殺してしまえばいい」
その声は魔理沙の背後から聞こえた。
一瞬だが、魔理沙の首に金属の冷たい感触が伝わる。
抱き上げられていた霊夢の意識が少しはっきりした時、紅い眼光が視界に入る。
「スペル…」
ーーー龍符『ドラゴンズグロウル』ーーー
その時、紅い眼光を消す程の青い光がけたたましく魔理沙の背後に出現する。
龍の
紅い目の零狐は青い光に巻き込まれ既に破壊された神社まで弾き飛ばされる。
神社の破片を更にへし折りながら本殿に突っ込み粉塵が巻き上がる。
「…ッ!?」
魔理沙は霊夢を抱き抱えたまま鳥居の方を振り返る。そこには。
見慣れた包帯を巻いた右手。
左手についた鎖の一部。
桃色の髪。
「…何だかよく分からないが私の友人達に手を出すな。」
「歌仙!なんで此処に…!?」
紅い目の零狐を見つめたまま、息巻く魔理沙に答える。
まだ紅い目の零狐は起き上がらない。
「いつもの様に来ただけよ。それがこんな事になってるなんてね…。」
歌仙は霊夢達を一瞥して腕の骨を鳴らす。
「貴方達は先に逃げなさい。」
霊夢は歌仙の声に起き、立ち上がる。
魔理沙と共に歌仙の言葉を聞き驚きを見せる。歌仙は言葉を続ける。
「幻想郷中の動物からアイツじゃない方の零狐が妖怪の山に向かってるらしいから。妖怪の山に行って本物の零狐を連れてきて。」
瓦礫をかき分け紅い零狐が起き上がる。
「…!早く、行って!」
それに気づいた歌仙は二人に早く行くことを促す。そこにはいつもとは違う謎の緊迫感が漂っていた。
魔理沙達は何も言わず飛んでいく。
「ええ。当たり前よ。」
歌仙は小さく呟く。
それは魔理沙が飛び立つ寸前に放った言葉に対するものだった。
歌仙の心にはその言葉が良く響いていた。
『死ぬなよ。』
「さて…お話は終わったか?」
刀を地面に刺し片腕を抑えている紅い零狐の姿が煙の中から現れる。
片腕から血が滴り落ちている。
「これくらいじゃ死なないねぇ…。」
紅い目が歌仙を捉える。
歌仙の身体中に悪寒が走る。
「あー…痛ッ…。」
左腕の刺さった木片を引き抜き投げ捨てる。
次の瞬間。
紅い零狐が刀を振り抜く。
咄嗟に歌仙は体を左に移動させる。
歌仙の右の横腹が浅く斬られる。
傷は浅いが勢い良く刀で斬られた為、摩擦に寄る熱が傷口に残る。
「あっ…がっ…!?」
斬られた箇所を抑えて紅い零狐に向き直る。
紅い零狐は、刀に付着した歌仙の血液を舐めとっている。
「やっぱり仙人の血は早く傷が治るからいつ飲んでもいいもんだ。」
気づけば零狐の手足の傷が治っている。
しかし少し深い傷は治りきっていない。
「くっ…!」
刀を歌仙に向け薄ら笑いを浮かべる紅い零狐。その目はさながら獣の目だった。
「さぁ…覚悟は出来たか?」
博麗神社に新たな惨劇が刻まれる瞬間が始まる時間が訪れた。
続く。




