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「まじか」

2月、もう一度更新できてうれしいです。昼夜逆転しているので、夜寝れない。小説のネタがポイポイ浮かぶ。今回は割と長い気もする。あ、そうでもないや。



 龍巫とは不思議なもので、俺の龍巫はもっと不思議なものだ。俺は龍巫をとりあえずエネルギーっぽいもの、と認識している。

 物陰に隠れている間、ひたすら自分の龍巫を意識していたが、それも飽きてきたので、手のひらに龍巫をひたすら集めていた。


 暫くすると微かに光る、小さな光体ができる。これでもかなりの龍巫を空気中に放出しているため、普通の人間がやったらここで爆発しているだろう。しかし俺の龍巫は空気中の龍巫を同一化するため、何ら問題ない。

100㏄の空気の立方体の中に45㏄以上自己の龍巫を混ぜると爆発するらしい。これは最近母さんが研究した結果の元の数字である。しかし空気中の龍巫は流動的で、そんな繊細な動きができるのは化け物みたいな人である。

もちろん俺はそんなこと無理っす。でも、俺の龍巫なら可能というわけだ。


光体の光が大きくなり過ぎないように調節しながら、岸辺で悶える子供たちと非道な男三人を見つめる。この時点で助けないなんて俺こそ非道な人間だな……と自嘲しながらも、仕事と割り切る。

現世では優先順位をつけ、割り切ることがうまくなったと思う。父さんの修行と、規格外な周囲のおかげ。そして溺愛する弟妹たちのおかげである。弱肉強食。いきたければ強くならなくてはいけない。守りたいというエゴを貫き通すなら、敵よりも強くなければいけない。

 俺は復讐と家族と、自分のために生きると決めている。この仕事が家族のため、バーデのためならばどんな冷酷漢にだってなってやる。


が、生きようと足掻く人を見捨てるようなグズではない。

情けは人の為ならず。前世の父・善仁に言われたことがあった。「助けを求められ、そして助けられるなら助けてやりなさい。それが巡りに廻って自分に帰ってくるもんだ。ただし、初めから見返りは求めるな。気長に生きてみろ」と。

前世の俺はそう教えられて生きて、死んだ。気長には生きられなかったけれど、父の教えは胸にある。そう教えられて生きたのなら、そう生きなければ俺の存在価値がない。


子供たちの対応から考えようとリョクとは話がついているけれど、蹴り飛ばしているし、そろそろいいだろう。腰を上げようとしたとき、最年長の子供が棒きれのような体を酷使して、回し蹴りをした。

思わず口から出たのは感嘆の吐息だったが、口笛を鳴らしてやりたい気分だった。

このままあいつらを倒せるとも思っていなかったが、反撃はすぐに終わってしまった。身体から見れば栄養失調になってもおかしくない。一瞬崩れた体勢を大人の、まして男が二人掛かりで抑え込む姿は滑稽である。

聞き耳を立てていると、耳をすっと刺すような声と、下種な発言。

そろそろいいだろう。


手元の光体をふわりと泳がせてみる。空気中の龍巫と連動し、俺もきちんと操れる。いやぁ成長したもんだ。うん。


ふわりふわりと男たちに近づけ、子供をとらえている背後の男の腕から溶け込ませてみた。

俺の龍巫は他人の身体に入っても拒絶反応を起こさない。しかし俺が意識的にわずかな龍巫を操ることで、同一化されるのは相手の身体の中の一部の龍巫。

そして最近自分で実験していた龍巫の性質で、龍巫の密度を高めると結晶化する、ということ。光体化もそれを応用したに過ぎないのだが。

同一化された一部分の龍巫を結晶化する。結晶化された龍巫はほかの龍巫をはじくので拒絶反応を起こすのだ。つまり背後の男の身体の中では突然の龍巫の拒絶反応―――爆発が起きている。


遠距離操作がうまくいったようで、拒絶反応を起こした男はばったりと倒れた。ざまぁ!

ガーダンには仲間意識はあまりないのか、それとも恐怖が勝ったか、自己保身が勝ったのか。もう一人の男が逃げ出そうとするので、すかさず身体を低くかがめながら突進し、そいつの懐に入る。手のひらを平行に、そして垂直に手首を素早く上げて、男の顎に衝撃を与えた。鈍く唸った巨体は白目をむいて背後に倒れた。脳震盪になっているはず。


倒れた男を観察して思う。こいつでけぇな。ガーダンの人大きすぎなんですけど。やっぱ乳製品か、乳製品がいいのか身長を伸ばすには。

ミコトに身長抜かれたらどうしよう。自分の従妹にあたる、ジャンとマリアの娘・セシリアに身長低い~なんて将来言われたら生きていけない。


 悶々と考えていると目の前の子供が身じろぎをした。ちょっと忘れていたよ、そーりー。

 最年長の子供は。エメラルドの瞳をしていた。宝石をはめ込んだような瞳ってこうゆうことを言うのか。右目に泣きぼくろが小さく二つついている。泣き虫には見えない。むしろ気丈にこちらを警戒しているが、力が抜けたように座り込んでしまった。この子も顔が赤い。もしかしたら熱が出始めているのかも。蹴り飛ばされた子供はいまだに顔をゆがめているし、ほかの子供たちは白っぽい顔をしている。


 リョクにこれからどうする?と意思を求めると、そのまま一致したので子供たちの意思を求めた。ここで拒絶されたら気絶させてでも連れていくけれど。

 なんて思っていたら、案外素直に手を取ったので、俺はエメラルドの子と、蹴り飛ばされた子供をひょいと抱きかかえた。

 身長が縮むかもしれないと心配になるほど重くなく、というより軽すぎて心配になる。抱きかかえた子供たちの身体はやはり熱っぽい。

 子供たちの顔を見るとぎょっとしているが、抵抗はしないのでスルーしよう。


「リョク、熱がなさそうなら歩かせてもいいけど」

「いや、持つ。…ちょっと待て」


 リョクは男どもをどこからともなく取り出して紐で巻き付け、ずるずると先ほどいた木に登る。木に細工をする。するとするすると紐が落ちてくる。リョクも降りてくるとその紐を引く。同時に野郎三人がずるずると上に引っ張られていった。「ぐぇ」とか「っう」とか聞こえる。

 リョクは再び木に登り、野郎の位置を直して、口に布を詰め込み、皮ベルトで固定すると降りてきた。


 子供たちが乗ってきた船がきっと帰国には耐えられないだろう。荷物を卸すと、船に薬品をかけ、マッチをする。すると弱めの火力で船が燃えた。


 動揺する子供たちにイゼアはとりあえず言った。

「帰国ではもっと安全な船にのせるから、我慢してくれる?」

 こちらを信じたかどうかはわからないが、よほどこちらに来るまでの荒波に答えたのだろう、こくりと首を振った。


脆く黒こげの隅とかした船を踏みつぶし、夜の海に攫わせる。証拠品となる密輸品を子供たちの手に持たせる。

 リョクはこれから野郎三人がやってきた建物に潜入し、状況を見てくるといって子供を全員イゼアに押し付けてかけていった。



「まじか」

 イゼアは少し顔を引きつらせていた。





誤字脱字のご指摘お願いします。感想もよかったらお願いします。イゼアが可愛そうという意見が多いです( ´∀` )

イゼア君幸薄系はもともとですが、勘違いされながら脱かわいそうを目指します。ガーダンでは少し強きキャラで。

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