少年が
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船が岸についたと同時に子供たちが転がり落ちてきた。地面に手を付き、四つん這いになって荒く息をする。海水でぬれた手はすでに泥まみれになっていた。
「みんな、振り落とされていないか!?5人ちゃんといるか?!」
変声期前の少年の声が夜の海をさく。荒波で酔ったのだろう、足物は覚束ず、顔面は蒼さを通り越して白かった。
シェンカの下っ端か、アービャンの褐色の肌ではないところ、ミヤの子供かもしれない。ミヤでは比較的治安が安定しているが、どうなっているのか。リョクは視線を鋭くしながら観察する。
少年より小さい子供たちは無事五人いたが、一人呼吸が荒い。まともに立つことができないようだった。栄養失調になってもおかしくない体つきに、この酷海を渡ってきたのだ、熱を出してもおかしくはない。
少年は暗い街のほうから黒ずくめの大人が数人やってくるのを見つけた。きっと自分たちが運んできた商品を受け取りに来たのだろう。この商品をここに運ぶよう指示された時、帰国はどうするのかと訊ねたら、相手側に聞けといわれた。つまり自分たちは捨て駒の可能性がある。そうならないことを願うばかりだ――――。
「おい!今回は沈没しなかったようだぜ」
「しかしこの荒波だ。貴重な商品が壊れていたら元も子もない」
「ガキどもはどうする。今回はやたらと貧相なガキばかりだぜ」
女もいなけりゃ慰み者にもなりゃしねぇ、ただの食い扶持が増えただけだ!と倒れ伏している子供を踏みつけながら、小舟をあさっていく。
そんな大人たちの様子に子供はか細い悲鳴を上げるが、腹を蹴り飛ばされ、軽い身体はいともたやすく吹っ飛び、地に伏した。
大人の様子に怒りをあらわにした少年は怒りをあらわにしていたが、蹴り飛ばされた子供のほうへ駆け寄っていった。
――――ふりをして、どこにそんな力があるのか、細い足で跳躍し男の後頭部を回し蹴りした。
「っが!!」
男は白目をむいて気絶したが、残りの二人が驚き、そして少年を睨みつけた。
「このクソガキ!!」
すばしっこく自分に追い迫る手から逃れるが、栄養の足りない体は俊敏さを奪っていた。ふらりとよろめいたところを羽交い絞めされる。
「こんの………ん?お前よく見ると整った顔しているな」
「はは!いいか、男だって穴さえあれば売り飛ばせるんだからな!」
それとも相手してもらおうか?といやらしく舌なめずりをした男に、少年は嫌悪感から反射的に叫んでいた。
「誰が!!お前らみたいなやつ、男に飢えた女でも相手になんてしてもらえねぇだろうよ!」
「…!」
もともと忍耐のない男たちなのだろう、何の躊躇もなく腕を振り上げた。背後の男はより強く締め付ける。
ああ、くそ。
少年は我が身を呪った。
目をきつくつぶるが、目蓋越しに明るい光が差した。
なんだ?と思うと同時に男たちの動揺した声が聞こえる。ぱっと目を見開くとふわふわと光る球体が自分たちの周りを飛んでいた。
「つ!?」
「な、なんだこれ!?」
「おい、触れ…っぐ!!!?」
少年の背後にいた男の腕に光る球体がふわりと触れ、身体に溶け込んだように見えた。すると男は急にくるし気な声を上げ、少年を戒めていた腕を緩め、どさりと膝をつき、嘔吐くように地に腕を立てる。少年はすぐさま逃げ出し、その様子を恐ろしげに見つめたが、はっと周りを見回し、子供たちを自分のそばに寄せた。
体調が急変した男を見て、少年を殴ろうとしていた男は上ずった声で少し距離を置き、慌てた声音でどうした!?と問いかけた。
うめき声を上げながら何かを言おうとするが、白目をむいて崩れた。
「なんだ、どうなってんだ!?」
気絶したのか、それとも死んでしまったのかわからないが、ここにいたらヤバい。男の本能が警鐘を鳴らし、じりじりと距離を置くと、ばっと身をひるがえして街に戻ろうと駆けだした。
「いや、逃げられると困る」
そんな声が聞こえた気がした。体に何かが起こり、視界が揺れ、男の意識はプツリととだえた。




