三途の川 じゃないところ
赤鬼と鍋で茹でられていた。
これ、何地獄っていうんだっけ? 男どおしの風呂っていうのもいいものだ。
赤鬼は額にタオルを乗せて、ゆったりしている。
おれも、赤鬼並みに真っ赤だった。
鍋の湯は大きな気泡があがってくるくらいボコボコいってる。
おれが無事(?)なのは、ひとえに死んでいるからに他ならない。
「これはいったいどういう状況なんですか?」
おれは問うた。
「石積みで壊れたやつは、のんびり釜茹ででリフレッシュするのさ。
生きてるときも、風呂、入っただろ?」
さすが鬼。こんな場所でも平気な様子。
歯ブラシを持ち出し、鍋のなかで歯を磨き始める。
ギラリと光る犬歯が立派。
俺は無心になった。熱い。熱い。熱い。熱い。--------
気が付けば鍋の外で、赤鬼に腹を踏まれていた。
口から大量の水が吐き出される。
「おお、気が付いたか。
お前はあと何日か入ってこいよ。おれは河原へもどる」
赤鬼は去ろうとする。
そうか、ここは釜茹で地獄なのだ。
もし待っていたら、イケイケなねーちゃんも送られてくるかもしれない。
しかし、俺は、石を、石を積まねばならないのだ。
「どおりゃあああああ」
赤鬼へドロップキック。
難なく弾き返される。
「まだキレが戻ってないな。まぁ、何日か浸かっていけ、な?」
赤鬼は肩をボン、と叩いてにっこり笑ってきた。犬歯がキラリ。
俺は無心になった。熱い。熱い。熱い。熱い。
石積みに戻るために。




