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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
4章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、初めてのダンジョン。

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魔王ちゃん、改めてやりたいことを決意する

「リョカちゃんにミーシャちゃん、お疲れ様」



「お疲れ様です~」



「骨折り損とはまさにこのことね、製作者(・・・)は今度ブッ飛ばすわ」



「まあまあ、それなりにストレス発散にはなったでしょう。それでよしとしようよ」



 あの後、金色の紋章に乗って辿り着いたのは貴族が好むような豪華な部屋で、その部屋の中央にはあからさまな宝箱が置かれていた。



 最初はこの宝箱がダンジョンクリア報酬かと思い、みんなで宝箱を開けたところ、そこには卒業論文でも書いたのかと言うほどたくさんの言葉が綴られた手紙が入っており、その手紙には要約すると、ここまで来られたその思い出こそが宝だ的なことが書いてあり、発狂したミーシャによって手紙と宝箱が粉々にされ、何の成果もなく湧いて出た紋章に乗って出口まで戻った。



 そして紋章によって入り口があったららしき場所に戻されたのだけれど、最初在った遺跡は影も形もなく、広いだけの森の中にみんなして取り残された。

 僕たちは釈然としないまま呆けていたのだけれど、このダンジョンの製作者を知っていたルナちゃんの話によると、この遺跡を作った人は世界的に力のある人物らしく、あちこちに自我を持って移動する遺跡を生成しながら世界中を回っているとのことだった。



 あまりにもはた迷惑なその製作者にミーシャがまた吼えたけれど、すでに八つ当たりする物もなにもなく、ルナちゃんと別れた後、僕たちはギルドに戻ってきた。



「自走する遺跡ね~。そういえば以前ギルドマスターから聞いたことあるかも。なんでも力を持ち始めた人物のもとに現れてその実力を試すらしいよ」



「……ギルマスにしてやられたっところだね。カナデもプリマもセルネくんもお疲れ様、みんなよく頑張ったね」



「当然ですわ! わたくし、リョカとミーシャのお友だちですもの! このくらい余裕ですわ」



「よく言うよ。カナデちゃんが一番役に立ってなかったって自覚してるぅ? もっとプリマの力を引き出せるように頑張ってよぅ」



 プリマが呆れた声でカナデの頭をガジガジと甘噛みしながら言った。

 狐の精霊はそう言うけれど、ああいう場面でカナデがマイペースを保っていられるのは素直にすごいことではないだろうか。

 まだまだスキルに関しては粗が目立つけれど、まだまだ伸びしろがある彼女に僕は期待せずにはいられなかった。



「頑張っていたと見えていたのなら良かった。正直いっぱいいっぱいで、自分が何をしていたのか、何をできていたのかまだ実感がないから、リョカにそうやって褒められるのなら自信になるよ。第2スキルも解放できたし、今回のことは本当に身になった」



「あんたはとにかくもう少し格上との戦いに慣れなさい。もういっそのことカナデとソフィアを連れて片っ端から依頼を受けて、戦闘の空気に楽しみなさい」



「いや、依頼は戦闘だけじゃない気がするけれど」



「一緒よ一緒。あんたはあたしたちと一緒だととにかく後手に回っちゃうんだから、ソフィア辺りを守りながら戦う癖をつけなさい。あの子ならあんた以上に慎重だし、頭も良いから変なことにはならないはずよ」



「……確かに。今度先生に相談して、ソフィアさんとも依頼を受けられるか聞いてみるよ」



 ミーシャもセルネくんに大分慣れたのか、一丁前に冒険者としての手引きを始めていた。ダンジョンでは2人とも新しい力だったり、相性のいいチームワークを発揮したりと大活躍だったし、これから先もこういう風に出来たらと、僕は頬を綻ばせる。



「なに保護者みたいな面してるのよ」



「うんにゃ。やっぱり冒険者してる時も楽しいなって思ってね。そろそろ僕の可愛い強化週間を始めようとも思っていたし、なんだか勢いが付いたような気がしてね」



「一体何を始める気よあんたは」



「そのままの意味だけれど? ああそうだマナさん、それでカナデとセルネくんの冒険者の登録証は?」



「うん、聞いた感じ問題なしだよ。2人ともおめでとうございます、これからも冒険者として活躍してくださいね」



 マナさんがそう言ってカナデとセルネくんに登録証を手渡した。

 2人はそれを受け取ると感極まったように登録証を抱きしめており、どれだけ嬉しいのか表情だけで察することができる。



「2人ともおめでとう。これから先もこのギルドで活動すると思うけれど、わからないことがあったらそこいらにいる人たちにちゃんと聞くんだよ。みんな意外に優しいし、真面目にやっていれば評価してくれる」



 僕は辺りを見渡してウインクをして先輩冒険者たちに目をやると、彼ら彼女らは任せておけと大きく頷いた。



「と、いうわけで、ようこそ冒険者ギルドへ。今日は僕が奢ってあげるから好きなだけ飲み食いしな」



 カナデとセルネくんに言った言葉だけれど、ギルドの冒険者どもが何を思ったのか、大声ではしゃぎだし、大量に注文を始めた。



「……とまあ、隙を見せると破産するかもだから2人はほどほどに大口を叩きなよ」



「あ、ああありがとうリョカ。それじゃあお言葉に甘えさせてもらうよ」



「とりあえずわたくしはプリマを自慢したいですわ! さあ冒険者の皆々様方! わたくしとたくさんお話ししましょう。ですわ!」



 他の冒険者たちに引っ張られる2人を見ながら、僕はミーシャの向かいに座って注文をし、先生から貰った煙草の形をした薬に火を点す。



「もうリョカちゃんったら、お姉さんが言わなきゃならないこと全部言っちゃうんだもん。やることなくなったので、お姉さんにも奢ってくださいな」



「はいはい、好きなだけ頼んでください」



「やった――」



「マナ、あんたまた太るわよ。座り仕事ばかりだし、しかも肉は年取ると落ちにくいってリョカが言っていたし、大丈夫なの?」



「……ミーシャちゃんは本当に攻撃力高いよね」



「ええ、それが自慢よ」



「ミーシャはもう少し手心を加えることを覚えようね」



 首を傾げるミーシャに僕はつい声を漏らして笑ってしまう。



 どうにも変わった依頼だったけれど、こんな風に最後に笑っていられるのであれば、これ以上のことはないだろう。



 楽しいは可愛いに通じるものがある。

 こうやって冒険者としてやっているけれど、可愛くなることを忘れたことは一時だってなく、毎日しっかり努力している。

 ただ最近は誰も反応してくれないだけで、やはりもう少し大々的に自分を宣伝することを目標しようと僕は決意する。



「けどまぁ、宴の時は可愛さを推しつつ、バカ騒ぎが正解かな」



 僕は愛嬌を振り撒きながら宴の中心へと駆け出すのだった。

マナ=ルーデッヒ

     

ゼプテンの冒険者ギルド受付嬢。最近リョカたちとも仲良くなり、それに伴ってお腹も出てきた。



カナデ=シラヌイ


リョカたちの友人で、なんちゃってお嬢様。最近は精霊を使ってミーシャのようなパンチが繰り出せないかを試行錯誤している。



セルネ=ルーデル


リョカたち世代の勇者の1人。リョカに褒められることが喜びになっており、彼女を見かけるとないはずの尻尾を振りながら今日の出来事を話す。子犬系勇者。



プリマ


カナデの使い魔で、彼女の出身国の精霊。青い炎を操り、威力はそこそこにある。カナデの雑さにほとほと呆れている。

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