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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
3章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、学園でエキサイトする。

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魔王ちゃん、クラスメートに褒められる。

「さて、ではこれで授業を終える。ここのクラスはみな真面目でとても助かるよ。先日ある勇者に認められた生徒たちが目を光らせてくれているおかげだと思っておこう」



 そう言ってヘリオス先生が時計に目をやると、チャイムが鳴り、彼は教室から出て行った。

 何故あんな余計なことを言っていくのかと、先生が出て行った先を軽く睨みつけたが、クラスメートから羨望の眼差しを向けられていることに気が付き、僕は肩を竦ませる。



「良い勇者様だっただけだよ。それに僕よりもミーシャの方に驚いていたからね」



「こっちに投げつけないでくれない? こういうのはあんたの役目でしょう」



 冒険者ギルドから帰ってきて数日が経った今日、僕たちは相変わらず学問にはげんでいた。

 特に問題らしい問題もなく、僕とミーシャはのんびりと学園生活を謳歌していた。

 しかしこれだけ平和だとやはり多少の刺激は欲しくなる。また依頼でも受けに行こうかとミーシャと話し合っているが、その日取りをまだ決められないでいた。



 すると、この間最初に化粧をしてあげた中学の時からのクラスメートの3人の中の1人が顔を伏せて心配気な表情をしていた。



「どうかした?」



「あ、ううん……えっとねリョカさん、最近その、あの人が大分リョカさんを目の敵にしてるからちょっと心配で。しかも依頼で勇者の人と一緒だったんですわよね? だから尚更」



 彼女の言うあの人にはすぐにピンと来た。

 同級生のひよっこ勇者だろう。あれに発見されるたびに、彼から豆鉄砲のような殺気を向けられる。ガイルと対峙しただけで気絶してしまうのではないだろうか。



「ああ、だから最近あたしたちの同世代で魔王討伐部隊って言うのが組まれているのね」



「え、なにそれ初耳だけど」



「このクラス以外の子たちがあんたを倒すために徒党を組んでいるのよ。ソフィアから聞いたわ」



「ええ、その中心にいるのが勇者・セルネ=ルーデルですわ」



 行動力の高さは称賛に値するほどだけれど、一体何を考えているのだろうと、僕はげんなりする。

 クラスメートもどこか呆れたような顔をしているのだけれど、1つ疑問が生まれた。



「あれ、というかみんなはセルネくんに賛同しないの?」



「するわけありませんわ。だってリョカさん、わたくしが思うにこの学校で一番親切ですもの」



「え、僕魔王だけれど」



 けれどもみんなが首を横に振った。

 ある者は一緒に落とし物を探したことに礼を言ってくれ。ある者は勉強を教えたことに礼を言い、ある者は化粧をしてくれたことに。ある者は――可愛くなることができた。と。



 教室内に感謝の声が溢れて、僕の顔に熱が帯びるのがわかる。

 でも僕はそれを悟られたくなく、そっぽを向くのだけれどミーシャにはバレバレなのか、ニヤニヤと見られている。



 するとクラスメートである3人が音も立てずに近寄ってきた。



「ありゃ、オタク3連星。スキルの練習は放課後ね」



 眼鏡のやせっちょふとっちょ普通の子。といかにもなステレオタイプのオタクスタイルの男子生徒がいたために、僕は、私だった時に流行っていたオタクに優しいギャルというのを実践したところひどくなつかれた。放課後スキルの特訓もしている。



「我らリョカ様から承ったっ!」



「オタク3連星っ!」



「貴方様に仇なす敵を討つ!」



「はいはいありがとね」



 オタク3連星と呼んでいる通り、彼らは結構なオタク気質である。もちろんこの世界にそんな言葉はないけれど、宝石オタクのオルタリヴァ=ヴァイス、魔物オタクのタクト=ヤッファ、健康オタクのクレイン=デルマ、3人合わせてもオタクになるから、僕はそう呼ぶことに決めた。



「あんたいつの間に家来なんて出来たのよ」



「思ってたんと違った」



 最初はこういうのめり込みやすい子たちからファンになってもらおうと思っていたけれど、いざ接していく内にリョカ様のために~と、従順な家来が出来てしまっていた。

 普通に友だちになってほしかったんだけれどなぁ。



「まあ、みんな僕のことを案じてくれているのは嬉しいけれど、危ないことはしないようにね。僕のために怪我なんてされたら嫌だし、そういうのはミーシャで間に合ってるから」



 クラス中から、でも。などの声が聞こえることが嬉しかったけれど、ここにいる人たちはクラスメートであって魔王の家来ではない。危ないことをする必要なんてまったくない。



「大丈夫だよ。このくらい1人でなんとでもなるから、みんなは目を付けられないようにしなよ」



「……あんた、本当あれよね」



「あれとは?」



「良いわよ別に。あんたがどう思おうがあんまり関係ないし」



 ミーシャが心底呆れているけれどその真意が測れない。僕は周りを見渡すと彼女に賛成しているのか、力強く頷いていた。



 どうにも旗色の悪い空気に、僕は窓から覗く曇り空を見上げるのだった。

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