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第九話「秘密小屋」
散々歩き、やっと僕たちはマツの探していた場所に着いた、らしい。らしいというのも、辺りの暗さはなぜか増すばかりで、もう誰がどこにいるのか、何がどこにあるのかなどはさっぱり分からなかった。そもそもマツはもう小竹の事など忘れているように見え、僕は少しがっかりした。しかし、確かにマツが着きたかった場所に着いたようだった。
「……しょっと」
マツのかけ声に合わせて、小さな蝋燭の明かりが灯った。そこには、小さな緑色の民族風のテントがかけてあり、マツの愛書であろう一冊の本と、小さなクマのぬいぐるみ、他少しの雑貨が置いてあった。それらはとても古く見えた。きっと、短くて3年は経っているんじゃないかと思えるほど薄汚れていた。
「これがマツのおうち。ごめんね、今食糧切らしているところなんだ」
「食糧?」
「うん。倉庫へ取りに行こうと思ったんだけど、丁度その時ににーちゃんを見つけたんだ」
「ふうん。ねえ、見たところ君は長いこと一人で暮らしているようだけど、一体全体どうしてこういうことになったの?」
「それは……おととしのこと、なんだけどね」