第14話 約束
いつも読んでいただきありがとうございます。
悠磨
「いつの間にか寝てたな⋯⋯」
悠磨の、いつも通りの平日が始まる。
だが、ゲームのことだけは頭から離れなかった。
朝のルーティンを済ませ、朝食を終えると、インターホンが鳴った。
悠磨
「おはよー! 今出るよ」
悠磨が玄関のドアを開ける。
流空
「おぅ、おはよ」
樹梨
「おはよ⋯⋯」
悠磨
「どうしたの? 元気ないね」
流空
「いや⋯⋯悠磨こそどうした? いつもなら『寝不足で学校なんて行けるか』って感じなのに」
樹梨
「⋯⋯変なもの食べた? 頭打った?」
悠磨
「俺をどんだけ変人扱いだよ!」
流空・樹梨
「⋯⋯⋯⋯」
悠磨
「⋯⋯まぁ、ゲームにしか興味を持たない変人だけどさ⋯⋯。いいから学校行くぞ!」
3人は学校へ向かった。
午前中の授業が終わると、いつものように3人で集まった。しかし、悠磨はすぐにクラスメートのもとへ向かった。
流空
「悠磨?」
悠磨
「ちょっとだけ話してくる」
樹梨
「今日の悠磨、おかしいね⋯⋯」
流空
「あぁ。ゲーム絡みなのは間違いないと思うけど⋯⋯でも、自分から学校に来たからな」
悠磨
「土曜日は悪かったな」
クラスメート
「おぅ! 問題ないよ。それより、変なクエストに入ったみたいだな」
悠磨
「そうなんだよ。プレイヤーが俺だけみたいなんだけど、ヴォルのサイトで調べても、そんなクエストは載ってなくて」
クラスメート
「シークレットクエストなのか?」
悠磨
「分からない。多分、NPCの2人を守るクエストだと思うんだけど⋯⋯」
クラスメート
「かなりの難易度だな⋯⋯」
悠磨
「何か分かったら教えてもらえないか?」
クラスメート
「OK! そうだ、黒須! ヴォルで変な噂が流れてるぞ。ゲーム中に泥棒に入られて、殺された人がいるって。黒須は一人暮らしみたいなものだから、戸締まりはしっかりしろよ!」
悠磨
「マジか⋯⋯分かった! ありがとな!」
クラスメート
「おぅ! またヴォルでな!」
悠磨は流空と樹梨のもとへ戻った。
悠磨
「樹梨、お弁当は?」
樹梨
「あるよ! 食べたいの?」
悠磨
「もちろん! 樹梨の唐揚げ、美味いからな!」
樹梨
「⋯⋯どうぞ」
悠磨
「ありがと!」
流空
「コイツ⋯⋯ホストとかもいけるか⋯⋯?」
悠磨
「何?」
流空
「なんでもない! それより⋯⋯何を悩んでる?」
悠磨
「ッ! な、なんで?」
樹梨
「何年付き合ってると思ってるの!?」
悠磨
「⋯⋯実は⋯⋯でも⋯⋯」
流空
「言え! 言わなきゃ分からん!」
悠磨
「⋯⋯俺、もしかしたら異世界に行ってる⋯⋯かも⋯⋯」
流空
「⋯⋯アハハッ!」
樹梨は顔を背け、肩を揺らした。
流空
「悠磨、ゲームやり過ぎ! アハハッ!」
悠磨
「そうだよな⋯⋯そうなるよな⋯⋯。流空、これなんだよ」
悠磨は左腕の袖をまくり、流空に傷を見せた。
流空
「悠磨⋯⋯この傷、どうした? 病院行ったのか? ⋯⋯って、前からの傷? いや⋯⋯こんな所に、そんなデカい傷はなかったよな?」
樹梨
「私も見たことない⋯⋯。こんな傷があったら、体育の授業とかで分かるもん。それに、最近できた傷じゃないよね?」
悠磨
「それが、昨日できた傷っぽいんだ」
流空
「は? だって、傷は塞がって、もう完全に傷跡になってるじゃん!」
悠磨
「昨日、ゲームで斬られた場所なんだよ⋯⋯」
流空
「⋯⋯マジかよ⋯⋯。でも、昨日斬られたのに、なんで塞がってるんだ?」
悠磨
「回復魔法を掛けたら、出血も止まって、傷も塞がったんだよ」
樹梨
「⋯⋯ねぇ⋯⋯もうゲーム辞めなよ! こんな傷ができるゲーム、ヤバいよ!」
悠磨
「樹梨! 声が大きいよ」
樹梨
「⋯⋯ごめん⋯⋯でも、もうゲームしないでよ⋯⋯」
悠磨
「まだ確定はしてないんだ⋯⋯。今日、改めて確かめる」
流空
「確かめるって⋯⋯辞めとけ! どうせ、どっかを斬ってゲームを終わらせて、どうなるか見るつもりだろ?」
悠磨
「⋯⋯よく分かったな!」
流空
「それが一番早いからな⋯⋯。でも、辞めとけ! ゲームで怪我なんて、シャレにならない!」
悠磨
「でも⋯⋯もし異世界とかなら、あの2人は本当に生きてることになる⋯⋯」
樹梨
「2人?」
悠磨
「ミシャとノア⋯⋯。ログアウトする前に、ノアがモンスターの角で怪我をしたんだ。すぐに回復魔法を掛けたんだが、次の瞬間にはログアウトさせられてて⋯⋯。回復魔法が掛かってなかったら⋯⋯ノアは⋯⋯」
流空
「悠磨! 気持ちは分かる。でも、悠磨に何かあってからじゃ遅いんだぞ!」
樹梨
「⋯⋯そうだね⋯⋯」
流空
「ほら、樹梨も止めてる!」
樹梨
「行って助けた方がいいよ!」
流空
「は? なんで?」
樹梨
「悠磨が、人を助けたいと思うほどの人なんでしょ? なら、行くしかないよ!」
流空
「でも⋯⋯悠磨に何かあったら!」
樹梨
「流空⋯⋯逆に考えて。悠磨が向こうから来てる人だとして、流空が怪我をしてたら、悠磨はどうする?」
流空
「⋯⋯必ず来る⋯⋯」
樹梨
「でしょ? 私たちが止めても、悠磨は行くよ。悠磨はそういう人なのよ」
流空
「⋯⋯絶対帰ってこいよ!」
悠磨
「おぅ! 必ず! 流空と樹梨の所に帰るよ!」
流空
「約束だからな! ヤバかったら、すぐ戻れよ!」
悠磨
「あぁ! ありがと、流空、樹梨」
昼休みが終わった。
午後の授業が始まる。
悠磨の気持ちは、すでにゲームへと向かっていた。それはいつものことだったが、今日はいつも以上に授業に身が入らなかった。
そして、午後の授業が終わる。
悠磨
「流空、樹梨、行ってくる!」
流空
「悠磨! 絶対戻ってこいよ!」
樹梨
「悠磨⋯⋯」
悠磨
「必ず! 戻る! 明日、玄関で待ってる」
悠磨はそう言うと、家へ向かった。
残された樹梨は、今にも泣き出しそうな顔をしていた。
流空
「樹梨⋯⋯頑張ったな⋯⋯」
流空は樹梨の頭をそっと撫でた。
樹梨
「⋯⋯うん⋯⋯」
悠磨は家に帰ると、まずトイレだけを済ませた。
腹は減っている。この状態でログインすれば、強制ログアウトはすぐに来るはずだ。
ただ、トイレだけは試したくなかった。高校生にもなって、漏らすなんて絶対に嫌だったからだ。
悠磨
「よし! トイレは行った。腹は減ってる。行くぞ! ヴォル!」
悠磨はVRを装着した。
今後もよろしくお願いします。




